穿月 桐静

うがつ とうせい

自分は特別だと思う?やめた方がいいよ。
後でえっぐい角度で心抉ってくるから……


男|174cm

19歳|3年|三級

color : 常磐色

pair : 卯木 祈織

♦ Character ♦

ずるをしてでも目立ちたかった。術を使って運動が出来るふりをしていた。そんな悪ガキは代々呪術師の家系を誇りに思う親父殿にしこたま怒られて修行寺に入れられましたとさ。――現在は立派に根性を叩きなおされ、真面目にコツコツ実家を継ぐために高専にて勉学に励んでいる。過去の失態から基本自分を過小評価する、よく言えば奥ゆかしい性格となり、必要以上の暴力は嫌いだ。本当は目立つのも嫌いになったが、縛りの関係で格好だけはだいぶ尖っている。心優しいというには皮肉屋で冷たいというには面倒見がいい。恐らくは昔から悪い人間ではなかったんだろう。呪いという“絶対悪”と比較すれば、という話ではあるけれど。

♦ 術式:倒錯×芹演法(とうさく・きんえんほう)

周囲にある物質や生き物の「斜度」を自らのものとする術式。穿月が地面と認識したものを基準として自分の正面が0度、真上が90度、真後ろが180度。正の軸の「石楠花」、負の軸の「百日紅」、平行垂直に特化した「水仙」が基本的な術式。坂道の斜度を利用すれば空を駆けることもでき、地面の斜度を利用すれば水の上に立つことも可能。継続時間と継続範囲は伸びれば伸びるほど呪力の消費が多いため、普段から不必要に目立つことを縛りとして体中につけた呪具に呪力を貯めている。見てのとおり主に補助を目的とした術式であり、攻撃方法は両手にメリケンサックと鉄板の仕込まれた靴、そして術式を組み合わせたトリッキーな肉弾戦。

Ugatsu Tousei
♦ Past days

(一日に一つはサンドバッグをズタボロにしろという師匠の教えを律儀に守り続けて十数年。今日も運動場の片隅に新品のサンドバッグを用意して、鉄板入りの靴の紐を締め、メリケンサックを握りしめる。派手な見た目と裏腹に、これをやっているときの男の声はひどく静かだ。)倒錯×芹演法――「水仙」(術の精度を上げるために、確かめるようなぞった式。垂直に飛び上がった男の踵落としから毎回この儀式めいた訓練は始まる。呪具である両手両足の装備に呪力はわずかしか込めることを許されず、それもまた律儀に守っていれば、サンドバッグは大きくへしゃげる程度で。)「石楠花」(空中に斜めの足場を作ってそれを踏み、勢いよくサンドバッグに一閃。)「水仙」「百日紅」(二発目で大体支えから外れてしまう獲物を、回り込むように追いかけて今度は真横から蹴りつける。「石楠花」「百日紅」そして「水仙」。三つの術式をさながらコマンド入力するように淡々と、集中して叩き込んでいけば、何も見えないものからすればサンドバッグが全方向から謎の衝撃をうけぐたぐたになっていくという怪奇現象の完成だ。最後に真上から地面に対象を埋没させるように拳を振り下ろせば、さっきまで新品だったサンドバッグの屍骸の完成だ。)……ふ~……あっつ、疲れたぁ。(その無残な姿を見下ろして、ようやく呼吸が出来る。そんな大きな大きなため息を一つ吐いて、男は身にまとっていた殺気を解いた。同時に高専の中だからと金髪のウィッグもむしり取ってしまえば、短い黒の地毛に空気が通る感覚が気持ちいい。本当はもう学内の連中は自分の容姿に慣れてしまっているだろうから、学校の中で位この身の丈に合わないごてごての縛りを解いていいのかもしれないけれど。それはそれで落ち着かないから男は今日も皮肉に笑って、屍骸の処理にいそしもう。)――……おー、今日もこれだよ。まだまだ修行中……。そっちはどう?順調?遊んでばっかじゃないで真面目に勉強しろよー、まじで。でも遊べるときに遊んどこうな。(ずるずるとゴミ袋を引きずりながら、途中すれ違った友人とそんな何でもない言葉を交わす。それがどんなに幸福なことか知りながら、今日も当たり前とどこかで思って。金のウィッグを揺らしてへらりと笑う。自分が特別でも何でもないこの場所で。)