卯木祈織〆 ♦ 2021/01/03(Sun) 04:31[19]
(最期を迎えたとして何の不都合があるのか。身寄りがいるわけでも仕事をしているわけでもない、迷惑は掛からないのに。)…駄目なの?(瞳にまじりけのない疑問が浮かび質問を。この辺りの理解、常識アップデートにはしばらく時間が掛かりそうだった。Xの中と外、隔てるのは外壁一枚。されど世界観は随分違うらしい。呪いの可視不可視によって、見えている景色が違うように。今も自分に牙を剥く可能性があるモノが祓われているのだろう。)そんなこと、(状況だけでも助けられているのだからと言い募ろうとして、しかし安っぽい否定しか浮かばない。食傷しそうな語彙に、結局口は閉ざされた。)そう……勉強になります。にしても、セイは物事をあえて難しく見ようとするのが得意ね…。偽善も独善も善のうちだと居直っちゃえばいいのに。(無遠慮な物言いを後悔するにはまだ心のパーツが足りていない。「あ、許可取らなくてもついていってよかったんだ」と続けたことから滲み出るように、行間を読む能力も欠けているものの一つだ。)それなら…、って、わ。お荷物カッコ物理展開再び。(もう一度抱えられたことに異論はない。が、)安全運転でよろしくお願いします、おにーさん。(敬礼の真似事をして宣えば、落ちないように腕を回しておこう。二度目でも科学的法則を無視した眺めは面白い。術式の存在さえ知らないものだから、ジェットコースターとはこんな感じかとお気楽に想像を馳せてみたり。――Xの敷地を後にして、ある程度の安全が確認できた頃。よくできましたと言わんばかりに金色のウィッグごと「いいこ」と彼の頭を撫でた。この暴挙、たまにXの信徒たちが小さい子供にやっているのを見たことに起因する。何か達成したら撫でる、単純な回路の行動原理は定着しやすい。こんな益体もないことに限って。まあ、気が済んだら再び荷物から同行者に戻り歩き出すだろう。「そういえばどこに向かってるの?これ」と、何度目かの今更な質問をする未来はすぐそこだけれど。彼の胃に多大なる負担を掛けることになりそうな日々は、こうして幕を開けた。)