乙無白亜〆 ♦ 2021/01/30(Sat) 01:01[67]
……うん。 わたし、あの時気づく、できた、から。話すがだいじ、わかる、思う。(むすめ自身が自らに起こった変化を自覚をしているゆえに彼が言わんとしている自由の端っこを掴んだなら、眉間に触れる指先が皺を綺麗に取り払ってくれるのだろう。そんなわけでさっそく思ったままを我慢なく自由に言葉にし、二度目の信じるを勝ち取ったなら満足そうに眸を細めた。呆気に取られたような彼の様相に気付けば可笑しなことを言っただろうかと彼を見上げた瞬、気付けばもう彼のかいなの中にいた。なにが起こったのかわかっていないきょとん顔で紅玉をぱちくりさせて、身動きが取れないから視線だけを彼の茶髪へ向ける。)となり……?(これだと顔が見えないと不思議そうに言葉を落とそうとしたけれど、震えた聲を聞けば終ぞ音になることはなかった。与えられるぬくもりが、全身から伝わってくる想いが、とても心地よくって甘えるように紅玉をそっと伏せる。)ずっと?(復唱する。ずっと近くで。一緒に、しあわせに。以前、彼に求めたもの。)わたし、(一緒にいていいの? そう唇を動かしかけて、けれどそうじゃないって冷静な頭が急ブレーキを掛けたから、音になる前に飲みこんだ。最初は違うとわかっていたのに、彼と一緒にいてその優しさに触れるたび、いつの間にか彼をてんしさまみたいだって思ってしまっていた。大好きという気持ちは今までてんしさまにしか向けたことがなかったから、彼のことを優しくて好きだなって感じてしまった瞬間には既にもう混同してしまっていたんだろうと振り返る。けれどはっきりと「違う」と認識させられたあの日に、気付いたんだ。てんしさまに懐く好きと、彼を想う好きは違うものだって。ただ愛情だって彼からもらったものがはじめてなれば、この違いを認識できるようになるのはもうちょっと先の話しになるのだろうけれど。ずっと笑っていてほしいと願うこの感情は、しあわせになってほしいと祈るこの想いは、てんしさまにすら懐いたことがないものだということくらいはわかるから。震える聲にふと四つ葉の憶い出が脳裡を巡ったなら、あの時出来なかったことを為さんと小さな腕をめいっぱい伸ばして。星にかけた願いを紡いだ。)──…生きたい。 生きて、ずっと、となりと一緒、いたい。(彼の心に応えたくって見よう見真似で拙い抱擁を返す。心も身体もぽかぽかしている。「あったかい」しあわせだった。)