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【3】(生きるために必要なもの)

近嵐隣〆 ♦ 2021/01/18(Mon) 23:59[48]

へっ?(始終気を張って生きているタイプの人間ではないが、第一声がひどく間の抜けた音になったのは理由があった。このタイミングで話があるとの呼び出しならば、いよいよもってXへ乗り込む時が来たのだろうと勘違いしたのも致し方あるまい。次なる任務もきっとXに、乙無白亜にまつわるものだろうという思い込みは、昇級試験の結果云々よりも余程衝撃を生んで、中途半端に開いた口は暫時そのまま固まった。昼下がりの青い青い天球の下、ちょうど陽の差す外壁に色濃く影が描かれる。)は!?違うって!!実感あるかないかっつったらぶっちゃけねえけど、嬉しくない訳ないっつの!……けどさあ、(冗談めかした風采で、昇級を取り上げられそうになって初めて我に返ったようにして一瞬声量増すも、直後勢いと共にボリュームだって弱まった。)な~んかスッキリはしねえよな。つつくだけつついただけで、別に殲滅した訳じゃねえし。最後までやりてえなと思うよ。俺は。やたらぶっ潰しに行きてえとかじゃないけどさ。(破壊衝動は持ち合わせていないし、任務でストレス発散をするタイプでも無い。それでも中途半端に手放さざるを得ない状況は、言わずもがな気持ち良くなかった。「喜びてえのに喜ばねえニュースと一緒に持ってくるからじゃん」、不服そうな唇を尖らせながら、あらゆる呼び名で呼ぶ教師を敢えて気軽に呼んだ。)五条サン、俺さ、……いや、つかこれ勘違いだったらすっげえ恥ずいんだけど、たぶん白亜、俺が傍につかなくなったらXに帰るっつーと思う。あいつは、逃げたくて来たんじゃなくて、俺が騙してつれて来たようなもんだから。――ん?ハハハッ!!俺が五条サン脅そうとする訳ないじゃん。そういうんじゃなくてさ。(笑い混じりに首振る補足がなくたって、この男にはきっと伝わっていただろう。思い返さずともまなうらを過る白い少女が、此処へ来てから己以外とも交友を持ったと知っている。それでも、少女が此処へ留まる理由は己だという自負があった。直ぐ側の数段の階段を上がれば、身長差分の高さを超えて目線が逆転する。)俺がついてりゃさ、あいつに行くなって言えると思うけど、離れんじゃんか。だから俺がいない時は、ちゃんと見ててやってほしい。(いざその現場に立った訳でもないのに、言えると言い切らない及び腰は無意識の範疇だった。次いで一言翻したならば、珍しくも神妙にお願いしますと頭を下げたくせ、上げた顔ばせはくしゃり気の抜けたいつも通りの笑みだった。――して、新しい任務へ出るまでの僅かな時間に、少女の部屋のドアノブに鶴と同じ要領で貼り付けた赤い紙飛行機には、端的に数日帰宅しない旨だけ書き添えた。次に繋がる約束のひとつも記さなかったのは、一体どちらの為だっただろう。)

でも、あいつが本当にあっちに帰りたいって思うなら、それは許してやんなきゃいけねえのかなって。だから、その時は止めないでやってほしい。俺が言えたことじゃねえけどさ、白亜が自分で決めたならたぶんしょうがねえんだよな。俺は嫌だけど、あいつに駄目だって言うのもやなんだよ。だから、(それは昇級を伝えに来た教師へ最後に言い添えた一言。きっとこれまで、自由を知らなかった少女を否定したくない。強く手を引けない理由を、そんな風に釈明させた。)

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