乙無白亜〆 ♦ 2021/01/13(Wed) 22:33[38]
(自分の纏う色や容貌について考えたことはそんなにない。誰かに指摘された時だけ淡い御髪と鮮烈な眸子を気に掛けて、ほかのひとたちと比べてみることをした。そのなかでおんなじを見つけられなかったから、変なのかもしれない、と感じたことはこれまでにもきっとあったけれど、むすめも彼とおんなじでそういったことはあまり気にしない性質ゆえに「さとるの髪、おひさまあたる、きらきらするね」と話題はすぐに別のほうに流れていく。されど「見つかる」の一言が鼓膜を打った瞬、怯えるようにむすめの肩がぴくりと揺れた。自分で言った癖、そこまで考えが及んでいなかったというように。)……うん、かぶる、する。 もっと、となりといっしょ、いたい。(あと少しを強請るように彼の影に隠れるように身を寄せて、縋る指先がアウターの裾を掴む。大きな手が髪に触れたなら、掬い上げる動きに吊られるように彼を見上げた。困ったように下がる眉をみとめて、じっと考え込むような間を挟んだのち、ちいさな唇を薄く開く。じゃあ、)──となりは、みつける、できるの?(まっすぐな言葉で問う。無垢な眸が問う。そんなこと出来っこないって知っているといわんばかりに、温度のない音がまろび出た。この身がてんしさまにとってその他大勢であるように、彼もまたおんなじだと思っている。誰の特別にもなれるはずがない。でも、それでよかった。いいんだと思う。このしあわせな時間が続くなら、それで。)おこられる、したら、おしおき、ある?(怒られることよりもその後のお仕置きを恐れるように、そろそろと彼を見上げていた。されど欲しいものをちゃっかりを指差すあたりにむすめの神経の図太さが見て取れよう。次を問う音には「となり、の、ほしいもの。行く?」なんて首を傾げて伺いつつ、彼の好きを知りたいと思う心のままに頷いて。)うん。行く、したい。こんど。(今度の意がまだ理解が出来なかったから、彼の言葉をなぞるよう繰り返しては意思を示そう。店を出て再び歩き始めれば当たり前のように彼の大きな手に甘えつきたがって、輝く眸で彼を見上げた。)となり。 買いもの、たのしいね。(またひとつ、しあわせが増えた音がする。生活必需品を買い揃える為の外出は、あれはこれはとむすめが目移りしたこともあって中々スムーズにはいかなかっただろう。前途多難な買い物という名の冒険は、日が暮れ始める頃まで続いたはず。)