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【2B】(思い立ったが吉日)

梵一期 ♦ 2021/01/13(Wed) 18:44[37]

アトジくん! 東京ドームいこ!(雪だるま作りに誘い出しそうなノック音と共に浮足立つ声が響いた。鍵に阻まれなければ断りなしに侵入を試みるだろう。――よく晴れた朝。天気予報は冬晴れを告げていた。ここへやって来てからというもの、しっちゃかめっちゃかになった生活リズムは徐々に落ち着きを取り戻しつつある。好きなことをして、好きなものを食べて、好きな時間に眠る。自堕落とも呼べる一日の中には、必ず彼と過ごす時間もあったはずだ。時には言葉を交わすことなく、ただ傍にいることだって。一期の日々に当たり前に存在し続ける彼相手に、要件などは必要なかった。とはいえ、のんびりとした毎日ばかりでないことは、朝の襲撃が本日初陣でないことを以て証明としよう。今日も今日とて、一期は“アトジくん”を振り回す。)東京ドームってジェットコースターあるんだって。行ったことある?(彼がまだ眠りこけているようなら、ベッドへ乗り上げて一期曰く“朝這い”を実行するだろう。そうでなければ、ずずいと距離を詰めてきらめく眼差しが向けられたはず。――斯くして、騒がしい一日が始まった。過日ショッピングモールで着替えたものとは別の、彼に選んでもらった服の中から動きやすいパンツスタイルで後楽園に降り立つ。)ジェットコースターがいちばんの目的だけど、野球観戦もしてみたいな。野球のルールよく分かんないけど、あの中入ってみたいし。(指差すドームよりも大きな建物を一期は知らない。敷地という意味では、Xは確かに広かったけれど、抜け出した今比べるほど野暮な頭もしていない。)

阿閉託夢 ♦ 2021/01/14(Thu) 19:02[39]

(普段から夜型で朝にめっぽう弱い男は、ノックの音でも、鍵などかけていない自室の扉が開いても、目を覚まさなかった。普段は朝までマンガを読んだりゲームをしたりして過ごす事もあったけれど、彼女と過ごす日々の中では「成長期には睡眠も大事」と自制――はせず、彼女を自室に帰して、ひとりで起きている事がほとんどだった。布団にくるまって動く気配すらなかったけれど、“朝這い”の襲撃を受ければ、「うう……」と呻いて。)……上京してきたばっかのとき、行った……巨人戦みてみたくて……ジェットコースターは乗ってない……ひとりだったし……(のそのそと布団から顔を出して、「……おはよう」と、寝ぼけまなこで朝の挨拶を。普段ならば二度寝に入る所だったけれど、彼女のお誘いならばすぐに動かなければなるまい。顔を洗って歯を磨いて、着替えて。自前の紺のセーターに、ボトムは彼女に選んでもらった“ロック”なデニム。コートを着たら、楽器のようなケースも忘れずに持って外に出て、電車に乗って、いざ、東京ドームへ。道中からもよく見えるジェットコースターを見上げながら、懐かしげに目を細めた。)……東京ドームって、あこがれるよね。おれ、田舎の出身だからさ。初めて生で見たとき、すげー感動した。スカイツリーも上野動物園も行ったな……ひとりで……(入学当初は人見知りで、同級生を誘う事もできなくて。しかしいい思い出になっているらしく、「今度一緒に行こう」と、次のプランも提案する。彼女の言葉には、もちろん、と言うように頷いて。)ジェットコースター乗って、遊園地まわって、野球みてこう。ルールはみながらおれが解説してあげる。……あと、ここ温泉もあるよ。おれも行ったことないけど。(「あのジェットコースターがぶち抜いてるとこ」と、建物を指さした。)

梵一期 ♦ 2021/01/14(Thu) 21:13[40]

(元気いっぱいの「おはよ!」は朝日に引けを取らない輝きを湛えていただろうし、それは道中も衰えることなく、むしろ徐々に増していったかもしれない。ルンと跳ねる足を止めて、ジェットコースターを見上げるとくちびるが半開く。想像より激しそうなコースもドキドキを胸を高鳴らせるけれど、それ以上に)街のど真ん中にある感、おもしろ~。(建物の上や合間、そして穴まで通る景観が可笑しくて堪らなかった。けらけらと笑って首を戻したら、再び爪先を搭乗口へ定めよう。)アトジくんひとりばっかじゃん! 別にひとりが寂しいとは思わないけど、そうやって最後にくっつけるとなんか……あいしゅう? かわいそうな感じしてくるよ。(出発前の「ひとりで」は気にも留めなかったけれど、二度目となれば条件反射のツッコミがまろび出る。「うん、絶対の約束」と首肯する口吻はどこか力強く、しかし楽しげな雰囲気は感じ取っていたから、眦はやわく下がっていた。)温泉もいきたいけど、中でひとりじゃない? 水着オーケーなのかな。(思えば温泉も未体験だ。男女混合エリアの存在なんて思いつきもせず、ううんとかぶりを振るう。それから、)ね、田舎ってどこ出身なの? あたし逆に東京出たことないから、いつか行ってみたいな。アトジくんの地元も、他のとこも。――そういえば、あたしぜんぜんアトジくんのこと知らなくない? 野球のルールとアトジくんのことをたくさん覚えるのが今日の目標、今きめた。(思いつきと決定は短い道中を越えた先、ジェットコースターの安全バーを下ろしている最中のことだったろうか。)

阿閉託夢 ♦ 2021/01/15(Fri) 02:09[41]

(夜ふかしの後でも、朝に弱くても、彼女と一緒にいれば自然と目も覚めて、気分もしゃっきりしてくるから不思議だ。午前の授業をまるまるサボる事もあるのに、と、自分でもしみじみ感じ入ってしまう。エネルギーを分けてもらっているのかもしれない――と向けた視線は、何を思っているか伝わってしまうだろうか。)……だって、人見知りだし、上京してくるまで友達なんかいなかったし……いまも、友達……知り合い……って呼べるのは高専のやつらだけだし……(高専の同級生や先輩や後輩を“友人”と言っていいのかわからなくて、言い直した。拗ねたような声色はなく、ただ淡々と。ふと思いついたように、)でも、哀愁あるのってカッコよくない?(と、彼女の顔を見て首を傾げた。)温泉、一緒に入れるゾーンもあるけど、18歳未満入場不可だった。(来る途中にスマホで調べていたらしい。ふたたび彼女に視線を向ければ、「……そよぎちゃんならいける」と無根拠な自信に満ちた言葉を。)……おれは、富山の田舎出身、だけど、いい思い出なんかいっこもない。二度と戻りたくない。誰にも会いたくない。金輪際、関わりたくない。知ってもなんも楽しくない。(出身。その言葉がトリガーとなって、勝手に動く口がネガティブな言葉ばかりを紡ぎ出す。安全バーを下ろせば、スタッフの「行ってらっしゃーい!」という声と共にコースターが動き出した。45度の急勾配を高さ80メートルまで上ってゆく、カタカタという音を聞きながら、)……ごめん。えーと、……米と、海産物は美味しい……(斜度74度の落下を目前に、無理やりにフォローのような言葉を呟いた。)

梵一期 ♦ 2021/01/15(Fri) 12:59[42]

あたしも友だちっていえるのXの子たちだけだったけど……、今はアトジくんがいるし、アトジくんにもあたしがいるじゃん。哀愁がかっこよくてももうひとりになれないね。(頓着なさそうな口吻でありながらも、眼差しは欲しでいるものだと勘違いをした。いたずらっぽく笑って、これからも変わらぬ日々を願う。Xのことも、己自身のことも、まだ何ひとつ解決出来てもいないのに。そうして、得意げに「大人っぽい?」なんて腰に手を当ててふんぞり返ったなごやかさから一転。鋭利さを孕む言葉が刺さるようだった。そうさせてしまったのは、他でもない一期だ。後悔こそすれ、尾首にも出すわけにはいかない。スタッフには元気よく「いってきまーす!」と返したけれど、それからは。言葉を探す間の沈黙はひどく長いものに思えた。彼から口を開かれてしまえばもう、下がる眉を抑えるのは無理だ。だから、)ううん。……こわくなってきちゃったから、手を繋いでて欲しいな。(嘘に逃げてしまおう。向けた手のひらに重ねてくれるのなら、そっと握り返して、親指が擦るよう動くだろう。ごめんねって、告げるみたいに。風を切って、真横になったビルの脇を抜け、大きな穴をくぐる。空の先にはスカイツリーも見えて、頭の天辺から響く悲鳴は楽しげな色で染まる。そしてゆるやかにスピードが落ちてゆき、降車を待つ間。横へ向けた顔ばせは興奮を滲ませながらも、落ち着た声が告げる。)いやなこと思い出させてごめんね。でもやっぱ、あたしアトジくんのこといろいろ知りたいんだ。ちゃんと、楽しいこと。好きな食べ物とか、動物とか、簡単なことでも。

阿閉託夢 ♦ 2021/01/15(Fri) 21:48[43]

……たしかに。東京ドームは今日でクリアしたから、あと、スカイツリーと、上野動物園と、品川水族館と、浅草と、お台場と……ぜんぶ一緒に回ったら、おれから哀愁はなくなるわけか。(ひとりで出向いた所は、ほかにも色々とあるらしい。「……そもそも18で哀愁は早いな」と独り言ちて、頷く。こんな平穏な日々が、少しでも長く続けばいいと願いながら。――彼女の下がった眉を見て、嘘でもいいから楽しい思い出を話せばよかったと後悔しても遅かった。手をつないだなら、強すぎない程度に力を込めて。)……家族がクソだからさ。東京に出てこれて、高専に入れて、――こんなふうに、そよぎちゃんと遊べて。いまは楽しい。すごく。(降下を始める寸前、ぽつりと呟いた。そこから先は、スピードと共に風を切って走るコースターに、口を引き結んで微動だにできず。知らず知らず、つないだ手に力がこもってしまって。スタート地点に戻り安全バーが上がれば、平静に言葉を紡ぐ彼女に、信じられないものを見るような目を向けた。)……なんでそんな落ち着いてんの……こわ、こわ……! 死ぬかと思った……こ、こわかった……(降車する足はふらふらで、覚束ない。格好悪い所を見せるわけには、と、ぐっと力を込めながら階段を下るも、気を抜くとふらついてしまって。)……いや、そよぎちゃんが謝ることない。高専のやつらはみんな好き。変わり者ばっかでおもしろい。あとは……甘いもの、好き。いちばんはチーズケーキ。肉も好き。焼肉行きたいな。ねこ好き。いつか飼いたい。(ひとつひとつ答えながら、地上に降り立てば、彼女の方を見て。「こわかったけど楽しかった」と表情を和らげた。)

梵一期 ♦ 2021/01/16(Sat) 01:05[44]

(あんな降下寸前で言わなくても。じんわり胸に広がった熱は喜びに震えていた。ぎゅっと握った手は単に恐怖によるものだったもしれない。それでも、その力強さが一期に勇気を与えたのは確かだった。ひよこか子鹿か、覚束ない足取りに眦が下がる。子どもみたいで、可愛かった。引いてやりたくなる庇護欲のまま差し伸べた手は、たとえ彼のプライドが許さずとも、繋ごうとねだるのだろう。)あたし、こういうのぜんぜん平気みたい! 楽しいばっかでこわくなかったよ。もっかい乗りたいけど、あの船のブランコみたいに揺れるのも楽しそ! ……でも、それより先に一旦休憩? アトジくん屋根の上はぴょんぴょん出来るのにジェットコースターはこわいんだ?(タタタン。ふらつく彼とは反対に、軽やかな足が階段を降りてゆく。)さっき上からクレープのワゴンみえたよ。チーズケーキの、あるかな。今日は焼肉も食べて、ねこカフェに今度いこ。アトジくんって、ちょっとねこっぽいね。似てるからすき?(続けて階段を降りて、イベントステージとメリーゴーランドを横切った先、甘い香りに包まれたフードワゴンまで歩みを進めようか。メニューへ視線を投げながらも、知りたいことはまだまだ。)野球は? やるのもすき? 部活とかやりそうなイメージはないけど。(くすりと笑声を含ませて、いたずらな声と共に弧を描く瞳が違う? と問うているようだった。知らないことは多いけれど、知ってることだってきっと少なくはない。)

阿閉託夢 ♦ 2021/01/16(Sat) 07:16[45]

(年下の女の子に手を引かれるのはなんとも情けなかったけれど、ここは甘える事にしよう。階段を踏み外して転げ落ちたりしたら、もっと悲惨だ。元気な彼女に向けるまなざしは、まぶしいものを見るような。)……いや、だって急降下とか一回転とか、人間がふつうに生きてたらする動きではないでしょ……遊園地もジェットコースターも初めてだったし……何回も乗れば、慣れる、かも……しれない……(なんて、意地を張る。フードワゴンを目指して歩きながら、彼女の言葉に「ねこ、似てる……?」と、自分の髪を触っていた。)ほっとくとすぐ寝るとこは似てるかも……親近感……? そよぎちゃんは犬っぽいな。元気いっぱいな小型犬。ポメラニアンみたいな……(なんとなく口にした例えだけれど、それがしっくり来てしまったようで。笑いを堪えるような咳払いを、ごほん、と。)あ、チーズケーキのあった。あとコーラと……そよぎちゃんはどれにする?(と、フードワゴンで注文を。今日は高専からではなく、自分の財布からだ。自分以外のひとのためにお金を使うというのは、なんだかくすぐったく、嬉しかった。)ご名答、野球は観る専。高専は部活ないし……中学は全員どこか入らなくちゃだったから、映画研究部入ってた。完全幽霊部員。(できあがったクレープと飲み物のカップを受け取り、彼女の分を「どうぞ」と差し出して。近くのベンチに腰を下ろして、コーラを飲めばジェットコースター酔いも少し落ち着いたよう。彼女に視線を向けると、)そよぎちゃんは? どんな部活入りたい?(と尋ねた。彼女の未来を一緒に描きたくて。)

梵一期 ♦ 2021/01/16(Sat) 19:07[46]

あたし、アトジくんに担がれたときのほうが落ちちゃうかもってドキドキしてたよ。あのときジェットコースターみたいって思ったけど、本物のがぜんぜん速かったなあ。よっし、アトジくんが慣れるまで何回もループだー! ふふ、暗くなるまで慣れなくてもいいよ。(そしたら何度だって風を切れる。ホップステップジャンプ、弾んだ声に合わせて軽やかに足まで跳ねた。)うん、毛が長いもふもふの黒ねこ。お布団で丸まってるし、夜のほうが元気そうだし……ってぇ、あたしポメラニアンなのぉ? ハスキーとかゴールデンレトリバーみたいなかっこいいのがいい!(ねこらしさを探す最中、犬にたとえられるのは悪くなかったけれど、小型犬とくれば不満をあらわにする。咳払いを訝しむように向けた視線はじっとりと湿り気を帯びて、けれどクレープの話となればころりと笑みに変わる。「いちごチョコスペシャルとコーラ!」と声高に告げて、生地を焼く様を見ていた。)ありがとう。あたしがバイト出来るようになったらいちばんにアトジくんにごちそうするからね。(そうして腰掛けたベンチでクレープを一口含めば酸味を伴った甘い香りが鼻を抜けてゆく。とろりと眦がやわんで「おいし~」と声を震わせてから、今度はくちびるが悩むように低い音を鳴らす。)映画研究部って撮ったりするなら面白そうなのに。やってみたいのはいろいろあるけど、ゆるい感じのとこがいいな。……放課後とか休みの日はアトジくんとも遊びたいし。(ぼんやりと空を見つめながら、ぽつりと素朴な声が落ちた。)

阿閉託夢〆 ♦ 2021/01/18(Mon) 05:44[47]

……ゲロ吐かないように……がんばる……(さて、このあと何回乗る事になるのか。本当に吐くような事になる前に正直にギブアップをするべきだろうかと、跳ねる彼女を見ながら考えていた。)ああ、ねこって夜行性なんだよね。生まれ変わったらおれはねこになるべきかな。…………っ、(顔を逸らしてぶふ、と吹き出したのは、ハスキーもレトリバーも彼女のイメージとは程遠かったから。そして、余計にポメラニアンのように見えてしまったから。「ごめん、なんでもない……」とごまかすけれど、あからさまに目をそらしていた。「十年後には大型犬、かも」と呟いたのは、フォローのつもり。)……おれも、……任務の給料はもらってるけど、……学生じゃなくなって……呪術師として一人前になったら……なれるかわかんないけど……なれたら、そしたらおれも、そよぎちゃんになんかプレゼントさせて。(クレープよりも、もっときちんとした、何か記念に残るようなものを。具体的にはまだ思い浮かばないけれど、何かを。頭の中でその未来を思い描こうとしてもぼんやりとしか想像できなかったけれど、決意表明のように言って、クレープをひとくち。「うん、美味い」と頷いた。)そう。おれは映画もみる専門なのにさ、撮る側だったから幽霊部員化しました。…………、(ぼんやりした表情で、ふいに動きが止まる。クレープを手にしたまま、宙を見つめていて。)……ごめん、そよぎちゃんにはどんな制服が似合うかとか考えてた。いや、その、いやらしい意味とかじゃなくて……セーラー服とブレザーどっちかな、とか……(言い訳のように言葉を連ねるけれど、気持ち悪かったかもしれないという自覚はあって。この話はやめ、というようにかぶりを振ってから、彼女の言葉には迷うこともなく頷いた。)――もちろん。東京以外でも、まだまだ遊びにいきたいとこいっぱいあるし。ディズニーに、富士急も。夏は海とかプールも行きたい。……でも、そよぎちゃんには青春をめいっぱい謳歌してもらいたいから――部活もバイトもして、さらにおれとも遊んでよ。(「若いからなんとかなる」なんて戯れめかして言う表情は柔らかく、口角はわずかに上がって。彼女と同じように空を見つめる心中では、今を楽しむのと同時に、未来を思い描いていた。「次はどうしよっか」という言葉は、クレープを食べ終わった後と、そして明日や明後日、それ以降の未来の事も。今まで、こうして未来を思い描く事なんてなかった。彼女からは、たくさんのものをもらっている。そのぶん以上のものを返したい――そして。未来も、一緒にいたかった。クレープを食べ終わったなら、ベンチから立ち上がって。「行こ」と手を差し出そう。――さあ、次はどうしようか。)

梵一期〆 ♦ 2021/01/19(Tue) 01:51[49]

あたしはポメラニアンなんかならないからアトジくんを飼ってあげる! 鈴付きの赤い首輪つけて、コタツがベッド!(意気揚々と紡ぐifの話は彼の声で腰を折られた。「あっ、」まろび出た気づきはきっと正しい。そんな分かりやすく視線を逸らされて、遠い未来を示されれば膨れっ面も大目に見てもらえないだろうか。「十年後はライオン!」と意地を張った声はきっと駄目押しだ。)もう、それじゃあお返しにならないじゃ……でも、それいいかも。プレゼントされて、お返しされて、次はなにあげようかなって考えるの絶対楽しいもん! 今からリストつくろっと。(尖らせたくちびるは見る見る弧を描いた。彼の部屋を飾りつけるような気分であれやこれやと巡らせる思考はどれほど実現されるだろう。早くても一期が働けるまであと一年と少し、リストアップされるものはもう一生を掛けても揃えきれない膨大な数を連ねるには十分な時間だ。だから、)なれる、なってよ。アトジくんがなりたいんなら。分かんなくなんてないよ。(濁らせた言葉を勝手に明確にしてしまおう。無理くり押した背にどれほど効果があるかは、それこそ分からないけれど。)じゃあ撮られる側は? もっといや? 映画じゃなくても、こうやって遊びにきたときの動画に残しといたら見返すの楽しそうだよ。今からカメラ欲しいって言ったら、またお金だしてもらえるかな?(彼の横顔を見つめて、視線の先を追って、また戻る。聞いてる? なんて首傾ぐ前に、上の空の正体を知れば吹き出す笑いを止めるなんて到底無理な話だ。)あははっ、なにそれ、ぜんぜんいやらしい意味だよ。Xに行く前はね、近所の中学校はセーラー服だったの。紺色で、赤いスカーフ。似合いそう?(いたずら心に火がついて、やめるのをやめにしようと強行突破。「想像した?」との問いに是が返るなら待ってましたとばかりに「やらし~」と声を震わせただろう。)いいよ、ぜんぶやろ! やりたい! 部活とかバイトの日でもアトジくんとは夜中遊べばいいもんね。今みたいに。(今夜もまた明け方までゲームやなんやで、矯正されつつあった生活は乱れてゆくのだろう。若さが今しかないなら、いつかに持ち越すのはもったいない。じゅ、と音を鳴らしてコーラが空になる。クレープの最後の一口も放り込んで、ごちそうさま。一期の世界はもう“アトジくん”なしでは成り立たない。それほど当たり前に日常に溶け込んでしまった彼が居ない未来なんて、当然のように取るこの手のひらのない未来なんて、描けない、描きたくない。――まずはアトラクション制覇から、次なる方位を示す顔ばせは、空の底が突き抜けた天気よりまばゆい笑みが光る。)

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