阿閉託夢〆 ♦ 2021/01/03(Sun) 07:26[16]
……テレビもマンガもゲームも、おもしろいのいっぱいある、おれの部屋に。貸してあげる。出かけるのは――おれは、映画館とか、本屋とか、服買いにいったりだけど――……(年頃の女の子が喜ぶような所は思いつかない。けれど、どこがいいかと悩む前に、ぽんぽんと彼女の口から紡がれたものだから。頼もしい、というように目を細めた。)……UFOキャッチャーはしばらくやってないし、タピオカに並んだことはないし、プリクラは撮ったことないし、遊園地も行ったことないけど。……一緒にやろ。ぜんぶ。UFOキャッチャー以外、おれも初めてだ。学校も、行ける。同じ学校ってわけにはいかないけど、そよぎちゃんが通う学校のこと、聞かせて。――ぜんぶ、一緒に、ひとつずつやってこう。(おぼろげだった未来のビジョンが、彼女の言葉によって輪郭を確かなものにしてゆく。遠い未来の約束をできる力は、いまの自分にはない。けれど、近い未来なら。「……大丈夫」と、小さく添えた。)…………14歳の子に……「わるい子」って……おれ18歳……いや、そう、大人。18歳はもう大人です。煙草と酒はほんとはまだだめだけど、もうだいたい大人のようなもん。(見た目からもう少し近いと思っていた彼女との歳の差を知れば、なんだかショックを受けたふう。14歳は、自分から見ればまだまだ子供だった。彼女にも自分にも言い聞かせるよう、大人、と繰り返すのだった。――彼女を易々と抱き上げてしまえば、)……軽い。ほら、おれのほうが大人だった。(なんて呑気に言いながら、「右ね」と頷いて、しかし向かったのは右ではなく、一度屈んで、大きく跳ねて、右上の屋根の上へ。彼女には見えない角度で、地面に向けて中指を立てて舌を出しておこう。「ナビゲートして」と彼女に頼んだならば、広い敷地内、屋根の上を次々に跳び移りながら――高い壁の外へ。)……任務かんりょ……いや、まだか。(高専に帰るまで、いや、彼女に“普通”の幸せを知ってもらうまでが任務だ、きっと。そっと彼女の体を下ろそうとした、その時。ささやかれた言葉には少し考えて、)…………気が向いたら。……まずは、ケーキ屋。(手をつないで、もう片方の手で、「行こう」と道の先を指さした。そして、一歩を歩き出そう。この任務を、最後まで遂行するために。)