bbs topadmin

【1】(クリスマスの奇跡を待ってる。)

治葛静音 ♦ 2020/12/28(Mon) 02:40[1]

(今日も、食卓に並ぶ食事は変わり映えがしないし面白味もない。不味くもないけど美味くもない。そのことにいつも以上に不満を抱いてしまうのは、今日がクリスマスだからというシンプルな理由に尽きる。一歩壁の外に出れば、輝く御馳走に世界は溢れているのだろう。煌めく世界の記憶は壁の中で過ごすうちに次第に輪郭を失っていくのに、反して願望だけは強くなるから不思議だった。)ゴチソウサマデース。ていうかえっ、何、侵入者?……はあい分かりました!隠れておけばいいんですねっ!(従順な返事は所詮形だけのもの。丸い双眸に、隠しきれない期待が滲む。当然外の世界を渇望する女が素直に従う筈もなく、慌ただしい空気にこれ幸いと言わんばかりに平素は立ち入り禁止とされている平屋の奥へと走って行く。どうやら侵入者とやらは事実らしく、いつも居る筈の見張りはいない。昔から、厳重に閉ざされた立ち入り禁止区域の先が出口だと目星をつけていたのだ。このチャンスを逃してなるものかと、緩く編んだ亜麻色の三つ編みを揺らして奥へ奥へと進んで、―――)いやここどこ!?(広い敷地をナメきっていた女は、己の計画性のなさを呪って薄暗い廊下のど真ん中て立ち竦む。迷子の出来上がりだ。)

立花蓮 ♦ 2020/12/28(Mon) 03:48[2]

うわ気色ワル。よくこんなとこに居られるな。(犇めく呪いはたとい呪術師であったとて好ましいものではない。共に突入したメンツもさっさとバラけてしまいやる気なんて既にマイナスだが、五条悟からの指示であれば返す踵もない。――黒を基調とした風貌は闇によく融ける。ところどころが跳ねた襟足長めのショートカットも、日頃着ている高専の制服だって真っ黒だ。唯一闇間に揺れる赤い瞳も、額の上に構えた遮光ゴーグルも『浄玻璃』で完全に見えぬものとなろう。すれ違う呪霊や見張りと思しき人間に眉を顰めながら足を動かせど、特に目ぼしい場所もない。姫と揶揄されるような存在なのだから深部に匿われているのだろうと思ってはいるが、まさかその道すがらにぽつんと少女が突っ立っているなどと誰が想像しよう。相貌を更に歪めて怪訝を滲ませながら『浄玻璃』を解除する。)なにやってんの、こんなとこで。(五歩ほど後ろから声を掛けた。別に間近で姿を現したって良かったけれど、一応、彼女の心臓を慮って。言いながら距離を縮めようと試みる。)……僕さ。此処にいる”囚われのお姫様”の居場所が知りたいんだ。教えてくれる?(亜麻色の髪から、足の爪先までを確認するように眺めた。拘束のたぐいが施されていた様子はない。ならばと安易に対象ではないと思い込んだ男は、己こそが先入観に囚われたまま首を傾げるだろう。屈強そうにも見えなかったもので。)

治葛静音 ♦ 2020/12/28(Mon) 18:08[3]

(最早両手両足では数えきれない程の回数に上る脱走劇は、此度も失敗の兆しを見せ始める。進むべき道も分からないままその場で二の足を踏む女は当たり前みたいに無力で、当然背後から近づく気配にだって気がつける筈もなかった。何の前触れもなく突如背後から投げかけられた声に大きく肩をびくつかせ、勢いよく振り返る。暗闇に溶けるようなその姿は、記憶違いでなければ初めて見る人間だ。Xの信徒の中にこんな異色の雰囲気を纏う者はいなかったから、彼が件の侵入者と見て間違いないだろう。想像もしていなかった邂逅に一瞬呆けたように髪と同じ色をした双眸をまあるく見開くけれど、ハッと気が付き近づいた分だけ後ずさる。彼が味方と判断するにはまだ早い、そう考える程度の知恵はあった。)ちょっと待った!それ以上近づかないでくれる!?まっくろくろすけとか怪しさマックスだし……。(彼とまるで正反対の真っ白いシャツワンピースは、教団からの支給品だ。それ以外に余計な装飾は一切なく、持っているただ一つの武器である自身を交渉の材料に出来ないかと必死に考えを巡らせる。けれど彼の零す言葉に心当たりなどなく、脳裏にはシンプルな疑問符が浮かぶのみ。)お、お姫様…? …………あーハイハイ、あれね。あの子ね!知ってるわ、勿論!知ってるから、……あたしと取引をしましょう。あたしの言うことを聞いてくれるなら、“お姫様”のこと教えてあげてもいーわよ!(びしっと人差し指を突き付けて言い放つのは、何とか導き出したこの場における最善の策。後の展開など何ひとつ思い浮かばないけれど、今この瞬間目の前に落っこちてきた奇跡の尻尾を放したくて必死だった。)

立花蓮 ♦ 2020/12/28(Mon) 23:03[4]

まっしろしろ子に言われたくないんだけど……。(言われて素直に足を止めたまっくろくろすけは、改めて自分の身なりを見下ろした。これでも一応思春期の男子高校生ゆえに、多少傷付く胸はある。多少。けれどまあ、驚かせたのも確かであるし、彼女のいうことも尤もだ。わざとらしく大げさな溜息を吐いて耳の裏を掻きながら、唯一今回の任務で与えられた情報を思い出す。13から18の少女。該当する。まさかな、という思考が値踏みするような視線に乗るだろう。彼女が最初に上げた語尾を聞き逃す男ではなかったけれど、こちらとて無闇に”人間”を傷付けるつもりはない。)取引……内容によるけど、聞くだけなら聞いてあげる。そのかわり……。(突きつけられた人差し指にも動じず、むしろ先の「まっくろくろすけ」より平坦に応じる。騙す方の心境はよくよく知っているつもりだった。『浄玻璃』を発動させる。)嘘ついた時は、見えない相手から逃げられると思わないでよ。(またすぐ解除した。真っ黒なだけでは説明出来ない消失と出現を目の当たりにするだろう。術式の開示をする気はないが――今日この場合、【陽炎】は手段を攻撃に限ると頗る相性が悪い。『火輪』も『摩利支天』も光を発するからだ。敵の多くに居場所を知らせてしまう。即ち、どんな状況下になっても彼女の口を割らせる手段は、『拳』しかない――あくまで自分が圧倒的優位だと言わんばかりの口振りは淡々と、慣れているかのように。)……で、僕に何してほしいの?(まっすぐ、けれど据わった視線が彼女の答えを待った。)

治葛静音 ♦ 2020/12/29(Tue) 03:08[5]

まっしろ    、ってハア!?ネーミングセンス皆無!?もっといいの考えなさいよこらっ、あたしには静音ちゃんっていうとびきり可愛い名前があるんだから!(己の発言を棚に上げ、向けられた正論にきぃっと拳を軽く握ってみせる。予想外の展開に正直なところ心臓はばくばく煩いし感じたことのない緊張感が頭のてっぺんから爪先までを浸潤していくけれど、目の前の相手にそれを気取られたくなくて必死だった。溜息を零して余裕ぶっこいてる奴に負けてたまるか、なんていう必死の抵抗である。虚勢を張ることには、とうの昔に慣れていた。けれどそれはあくまで相手が“人間”に限った話。ゆらり、瞬きの間のに輪郭を失った姿に思わずぽかんと口を開いた。理解の範疇を越えた光景に、ただでさえ煩い心臓が一層拍動を増して過重労働を訴える。強がりの仮面が剥がれぬようにきゅ、と握った掌に力を込めて、)……それ、脅し? どいつもこいつも嫌になっちゃう、力に訴えてばっかり。(吐き捨てるように口にした言葉は、あくまで独り言の範疇だ。曰く囚われのお姫様が自分である可能性など欠片も気づいてはいないから、彼の言葉に答えることに躊躇いがなかったといえば嘘になる。未知の存在相手を騙し通せるような自信だってないけれど、それでも今は、0から0.1に切り替わった奇跡に縋りたかった。)……あたしを、壁の外に連れて行って。入って来たんだもん、外に出るのだって余裕でしょ?

立花蓮 ♦ 2020/12/29(Tue) 05:55[6]

(思わず両の耳を手で塞いでしまった。そのあと彼女が落ち着いてから、しぃ、と人差し指を立てて。)しずねなら静かにして。(いま聞いたばかりの名にかこつけた台詞は、さすがに少し焦ったふうだった。彼女に『浄玻璃』を見せた手前、「姿を眩ませられる奴がいる」と吹聴されてはたまらない。彼女の虚勢に気づく様子もない男から、今度は呆れたような溜息が零れるだろう。幸せなんてクリスマスに任務を入れられた時点で無いようなものだから構わなかった。“力”も今の男には縁遠い話で、しかし彼女がそのような印象抱いたのなら上々。それより男が気になったのは、)――脅されてるの?(流石に自分が脅したことが分からぬ馬鹿ではないが、あまりに言葉足らずか。訝しげに目を眇めて彼女を見たあと、ふむと何かを考え込むようにして顎に手を添えた。彼女の言う通り、『浄玻璃』ならば人二人分の姿を消すことなど容易。見破りそうな人間も、呪霊もいない。暫時の逡巡の間に短く唸っていた男が、得心したようにポンと手を叩く。)分かった。じゃあ君が“お姫様”ってことにしよう。(今日此処へ侵入したのは何も立花だけではないから、本物のお姫様は誰かしら連れ帰るだろう。今から彼女を連れて奥へ進み、姫を含めた三人で戻るのも術式の多用という意味で疲れる。彼女は此処から出られる。自分は任務失敗で昇級なし。でもやることはやった。お役御免というわけだ。)行こう、しろ子。(そんな説明を一切せぬまま、善は急げとばかりに手を差し出そう。さっさとこんな薄気味悪い場所からオサラバしたいあまりに、突飛な話を彼女がどう受け止めるかなんて考えちゃなかった。)

治葛静音 ♦ 2020/12/30(Wed) 02:57[7]

(命令されると抗いたくなる悪癖持ちだが、今ばかりは彼の言葉に素直に従うのが吉だろう。ここでうっかり大声で騒いで、信徒の誰かに見つかってしまっては堪らない。一先ずきゅっと結んだ唇は、けれど続く問に一瞬で沈黙を手放した。)…そういう奴らもいるかもね。ちょーっと逃げ出そうとしたくらいで折檻だ何だって、あいつら絶対良い死に方しないわよ。(零れた言葉は脚色なしの事実だ。されど語る口調に悲壮の色はない。同情を買いたいわけでも、ここで過ごした日々のことを知って欲しいわけでもなく、女が掲げる願望は外の世界に出ること。ひいては母にもう一度会うこと、ただそのひとつのみ。現今その願望を叶える可能性である存在が考える素振りを見せる最中、うるさく拍動する心臓の音を聞きながら判決を待っていたけれど――、)え?(答えは、存外簡単に下される。お姫様。突拍子もないその言葉に、ぱちぱちと間の抜けた瞬きを零した。当然自分が彼の探すお姫様である事など未だ一切気づいていないままであるし、彼が描く未来予想図など知る由もない。それゆえあまりにも簡単に運ぶ事に突然不安が胸裏を過ぎり、差し出された手に指を伸ばそうとして、躊躇。)あたしをお姫様にしてどうすんのよ、それでくろ太郎はいいわけ?(向けた呼称はしろ子に対するちょっとした抵抗だ。“お姫様”とやらを探しに来たのに、それが自分でもいいのだと言う。どうして?何で? 困惑、動揺、不安、――様々な感情が胸裏を蠢く。同時にそれら人間の感情に引き寄せられる呪霊が引き寄せられ始めたことに、女は気づけない。)

立花蓮 ♦ 2020/12/30(Wed) 04:55[8]

(折檻。当たり前のように語る彼女に少しだけ目を細めた。)そっか。ごめんね。(淡白ながらも紡ぎ出した、まるで自分が折檻した本人のような台詞は、しかし実際彼女を脅したという事実のみに基づいて。囚われているのは“姫”のみではないのかも、とは未だ対象が目の前にいると気付かぬままの知見だった。差し出した手に驚かれれば、男も大きく瞬き。躊躇うように揺れた小さな手と尤もな言い分に困惑を知れば、呼称に対して僅かにムッとしたものの「あー……」何処から説明したものか迷うように間延びした声を漏らし。)僕には他にも仲間がいて、僕一人お姫様に辿り着けなくてもたぶん大丈夫。なら、確実に助けられる人を助けた方がいいかなって――、……ッ!(サボりたい欲は隠しながら、彼女の説得に必要そうな情報だけを浚って――思考の間に右上へ投げられていた視線が、近付く呪霊の気配を感じた瞬時に鋭いものになろう。咄嗟に彼女の手を掴めば背後に回って抱きすくめ、『浄玻璃』を発動させながら壁際に寄った。三つ目の下級呪霊が、二人が元いた場所をのっそり歩いてゆく。そのまま彼女の口元へそっと人差し指を添えて。)――僕の術は“見えなくなる”だけで、触れられる。声も聞こえる。ごめんね、静かに。(彼女にしか聞こえぬ程度の声量で囁いた。これは脅しに聞こえぬといいが、さて――そう遠くない場所で、侵入者を探す信徒の声も聞こえ始める。少し首を伸ばしてそちらの様子を窺いつつ、)……ちゃんと説明したいから、どっか隠れられる場所ない?(と問う男もまた、彼女が迷子だったことを知らない。)

治葛静音 ♦ 2020/12/30(Wed) 16:37[9]

……別に、貴方が謝ることじゃないでしょ。(向けられた謝罪に凡そ偽りの色は見えず、ほんの少しの罪悪感が心臓の端で顔を覗かせた。彼は力で相手を黙らせるような類の人間とは違うのだろうとぼんやり思うのは未だ殆ど直感のようなもので、だけどそうした感覚こそ治葛の行動原理でもある。それゆえ理由を説明してくれようとする彼に対して先程よりも少しだけ素直に耳を傾け、現在の状況を少しでも理解すべく小さな頷きを数度繰り返す。彼は誰かを探していて、他の仲間がその誰かを見つければよくて、でも。でも。それでもやっぱり、彼が危険を冒してまで自分を助けてくれる程の価値が一体どこにあるのだろう。ぐるぐる思考を巡らせながら、指をぱちんと鳴らして零すのは思いついたひとつの可能性。)も、もしかして、あたしに一目惚れでもしちゃった……!?だから助けてくれようとしてるの!?(それならば無条件の救済だって頷けるけれど、一応のところは冗談である。一応。多分。緊迫した状況にも関わらず危機感を欠いた女は当然瞬時に様相を変えた彼の視線に気づける筈もなく、ましてや引かれた手に反応出来る筈もなく、されるがままにあっという間にその腕の中へ。その口振りから察するに、先程の彼と同じように今の自分も姿が見えなくなっているのだろうか。人間の成せる技だとは思えない。不思議なことばかりだ。未知の恐怖には極力近寄らぬようにするべきというのが賢く生きる処世術だと思えども、やっぱりどうしたって彼は危険な異分子には思えなかったから。聞こえてきた信徒の声から隠れるようにして彼の言葉に頷こうとして、)……………ええと。(頷こうとして、視線をぎこちなく明後日の方向に向けた。)ここ、いまいちどこか分かんなくてー……。奥に出口でもあるんじゃないかしら?ってあたしは踏んでるんだけどー……。……その場所探しも貴方の仕事よ、くろ太郎っ!頑張って!

立花蓮 ♦ 2020/12/31(Thu) 05:26[10]

――そうかもね。(ふいと、流すような口振りだった。彼女がどう思おうが、脅したのが事実なら己がそういう人間であるのも本当。この口はよく嘘も吐くし、行動だけが本質を語ると知っている。とは言え、彼女がいだいた何がしかを否定する気もない。こちらの言い分を聞く姿勢になってくれたのは、男にとって間違いなく僥倖であったから。指の鳴る音にちょっとだけ驚いて、それから。)そうだよって言ったら、まっくろくろすけ……じゃなかった、くろ太郎にもついてくの? 君。(ロマンスに夢見る男でなかったのは幸か不幸か。呆れを如実に乗せた据わった目元は隠す気もない。寄った壁に背を預けて、顎を彼女のつむじに乗せた。少しグリグリしてやる。お察しの通り、今の二人は呪霊にも人間にもその姿を見せていない。ただ、彼女から呪霊を隠したつもりは無い。通り過ぎた呪霊よりも声しか聞こえぬ信徒を気にするということは、そういうことだろう。「どうしよっかな」と、顎にさらに力を込めたらさすがに怒られようか。抱きすくめた腕はそのままだ。)――もしかして、ひとりで脱走しようとしてた?(先の取引のことを考えれば有り得ぬではないだろうと、カマをかける。返答がどうあれ、呆れた溜息がそのまま彼女の頭に落ちるだろう。その後ゆっくり拘束するようだった腕を解きながら、)出口は僕らが入ってきた場所があるから大丈夫として……ねえ。君ここ住んでるんだよね? 部屋じゃダメ? 見覚えあるとこまで連れてくからさ。(何があるか分からんから奥に行くのはぶっちゃけ嫌だ。勿論そんな思考を素直に吐露する男でなく、尤もらしいことを吐きながら彼女に案内を頼もうと。)

治葛静音 ♦ 2021/01/01(Fri) 17:04[11]

だ、誰にでもはついて行かないわよ、ちょっとした冗談だっての! クソ真面目に受け取らないでよくろ太郎絶対童……女の子相手にするの慣れてないでしょ!?(呆れを滲ます視線に思わず羞恥がじわりとこみ上げるから、うっかり慎みの欠如した罵声を浴びせそうになってお口チャック。つむじを襲う攻撃に「痛い痛い」「ハゲるバカやめて!?」とその胸元を押すけれど、実際言う程の痛みは感じないからこれだって照れ隠しの範疇だ。相手を慣れていないだと揶揄しながら、それは自身だって同様だから。呪霊のじゅの字も知らぬ女は当然足元を過ぎていった危機にも気づかず、今の状況を必死に受け止めようとぐるぐる思考を巡らせて――、結局分からず、一度は考えることを放棄した。お頭は賢い方ではない。)当然! こんなところで可愛い美少女が消費されるだけなんて世の中にとっての損失でしょ? あたしは絶対絶対ぜっっっ(溜めた。思いっきり。)っっったい外に出てやるって決めてんの! だから、くろ太郎が助けてくれるって言うならついてくし……教えてくれることがあるなら何でも聞くわ。あたしの部屋はあっち、洗いざらい吐いてもらいましょうか!(彼の思惑など露知らず、この場で最も頼りになる男の言葉に頷き元来た道をこそこそと逆戻り。寝具と箪笥、ローテーブルしか置かれていない簡素な自室に彼を招き入れればくるりと振り返った。スタート地点に舞い戻ることになったけれど、彼がいるなら然程問題ではないだろう――なんて、この短時間で信頼を寄せ始めたのは彼が持つ不思議な力ゆえ。そこでそうだと再び指をぱちんと鳴らし、)……くろ太郎、あんた何者? 変な力使えるみたいだけど、…ま、魔法使いか何か?

立花蓮 ♦ 2021/01/02(Sat) 05:47[12]

ふぅん? じゃあ、僕だからついてくるんだ。(決して女性遍歴を揶揄られたことへの仕返しではないが、返す刃を振るう男は片眉を釣り上げたしたり顔。ついでにつむじ攻撃にもハゲてしまえという怨念が篭ったのは言うに及ばずだろう、最後にゴンといっそう強くぶつけたら自分も少し痛かったので少し涙目だった。理由は違えど、すぐにもここを立ち去りたい気持ちは二人同じに思えた。くすりと口角を少しだけ持ち上げて。)誰が可愛いって?(呼吸を止めているのではという程の溜めっぷりに素直に笑ってしまったのが悔しい。詳しいことは落ち着ける場所で話すとしよう、無論逆戻りの間も術式は解かず、道中誰かや何かとすれ違っても問題なくやり過ごせるはず。やって来たシンプルすぎる部屋に驚かなかったといえば嘘になろうけども、女性のプライベートに深く追及しない程度の甲斐性はあるつもり。話を促されれば、適当に近くの壁にでも凭れかかって腕を組んだ。)僕は蓮。立花蓮。呪術高専2年。呪術ってのは……まあ、君のイメージする魔法に近いよ。なんでもできるわけじゃないけどね。(生まれた時から呪いが見える身としては、見えぬ者から術式や呪いがどう見えるかなど理解の外。確かに魔法かも知れないと、言われて気付いたかのように笑った。)高専ってのはまあ、魔法学校だよ。そこで魔法の勉強しつつ、時々魔法で出来る人助けが任務で舞い込む。此処も魔法だらけだし、警察とかじゃなくて僕らが来たのも多分そのせい。(喋り飽きたようにくありと一度欠伸を零してから、)質問があればドーゾ。あ、僕の術の説明いる?(彼女相手に攻撃することもなかろう、ならば術式の開示は必要ないだろう。ただ誠意のためだけに、首を傾げた。)

治葛静音 ♦ 2021/01/03(Sun) 03:35[13]

(したり顔には無言を貫いた。図星を刺されて返す言葉がなかったがゆえの黙秘権の行使だ。頭頂部へと与えられる攻撃には思いっきり拳で応戦してやれという気持ちがこみ上げてくるが、ここで暴れて信徒に見つかってしまっては元も子もない――ので、思いっきり足の甲を踏んづけるのに止めたのがギリギリのラインである。そうして部屋に戻るその道中、数人の信徒とすれ違えどもこちらを気にする素振りすら見せない様子に謎は深まるばかりだ。先ほど彼は“術”だと説明してくれたけれど、それで簡単に納得出来るような力ではないから、疑問は湯水のように湧き出てきて止まらない。壁に凭れる彼の正面に立ち、その言葉の一言一句すべてを聞き漏らすまいと耳を傾け何とか思考を巡らせる。呪術。高専。知らないことばかりの単語も、魔法と置き換えれば何とかその一端程度は理解出来る気がした。もし彼の言葉が本当に全て真実なら、それってもしかしなくても、)……めっちゃくちゃ凄くない!?くろ太郎、あんたもしかして超デキる男だったりする!?その呪術ってやつ、普通の人には使えないんでしょ?ぼけっとしてるくせにやるじゃん、このこのっ!(あくびを零す彼の脇腹を軽く小突いて、向ける言葉は純然たる称賛のつもり。果たして彼の意欲が如何ほどの物かなど現今知る術を持たないが、力を持たざる者からすれば彼はただしくこの暗闇を照らす一筋の光だった。「術の説明、あたし聞いて理解できるかしら…?」「わかりやす~~~く説明して」なんて甘えたな質問を投げつつ、思い出したように部屋の中を見回した。この部屋に思い出なんてない、私物だって少ないけれど。それでも持って行きたい物はある。先程は殆ど衝動で部屋を飛び出したがゆえに手ぶらだったが、この際少しの身辺整理をする余裕はあるだろう。部屋の隅に放っていた小さなリュックに放り込むのは数少ない服。筆記具。化粧道具、それから母との写真。己を構成する全てをリュックに仕舞えば、くるりと彼に振り返った。)くろ太郎……じゃなくて、蓮。あたしは治葛静音、17歳。……改めて頼むわよ。あたしを、壁の外に連れてって!お願い!

立花蓮 ♦ 2021/01/03(Sun) 05:37[14]

(「ぁいだッ」と情けない苦悶の声をあげるのは本日二度目となろうか。一度目は先に足を容赦無く踏まれた時、そして脇をつつかれた今。もっとも、前者は痛みによるそれだったが今回は急所への不意打ちゆえ。警戒するように組んでいた腕を脇のガードに回して、足先を組んだ。視線には若干の恨みがこもる。)……呪力を持たない人から見たらすごいんだろうけど、おかげで嫌なもん見えるし、あんまいいもんじゃないよ。ここ、普通の人には見えないバケモノだらけだかんね。(怯えさせたいわけではないが、外でもはしゃがれるのは困ると淡々とした口調が現実を突きつけた。呪いのメカニズムについては追追話そう、授業をしに来たわけではない。あくまで目標は“お姫様”――既に男の中では彼女がそれにすり変わっているが、要は人命救助である。彼女が荷物を纏め始めれば、本当に身一つで逃げる算段だったらしい様子に肩を竦めて困ったように笑った。)僕の術式は光を操る。さっきのは『浄玻璃』って言って、屈折点を操作して見えなくしたりする術。お風呂に浸かると水面付近の体が見えなくなったり、短く見えたりするでしょ。あれと一緒。だから触れるし音もする。障害物を通り抜けたりもできない。(わかりやすいかはさておいて、作業中のBGMにでもなれば幸い。詳しい計算などは男も理解してやっていることではないので、説明を求められても鼻歌で誤魔化すつもりだ。彼女がこちらに向き直る。女性のプライベートを追及する気はないが、年頃の女性にしては荷物が少ない。「それだけでいいの?」とリュックを指さしながら前置きしつつ、壁から背を剥がした。)いいよ、しろ子。その話乗ったげる。出た後のことは知らないけど、それでも良ければ。(嫌味なまでに楽しげに口角を持ち上げた男が、ただ親切なだけでないことはそろそろ彼女も察しがついていよう。何せ男は、今なお本物の“お姫様”は別にいると思っている――彼女の願いを叶えるべく扉を開けようとした時、ふと、その“お姫様”のことを思い出した。首だけで彼女を振り返る。)そういえば、“お姫様”のこと知ってんだよね? 僕ら実は何も聞かされてなくてさ。仲間に教えたいから、教えといてくんない?

治葛静音 ♦ 2021/01/04(Mon) 02:59[15]

くろ太郎もくろ太郎で苦労してんのね、嫌な目に遭ったりしたことあるの?ていうかバケモノって、えっ もしかしてさっきもいた……?嘘でしょ馬鹿教えてよ!(己からすれば純粋な称賛を捧ぐ対象である力も、持つ側からすれば色々と事情があるのだろうという推察はぼんやりとしたものだ。なんせ、彼についてはまだまだ知らないことが多過ぎる。纏う雰囲気がゆるりとしたものであること、不思議な力を持っていること、その力を無暗に行使したりはしないこと、――それだけ知っていれば十分かもしれない。ただそれだけの要素が、この壁の中の誰よりも心強く思えたから。比喩表現の巧みさゆえか、紡がれる説明は存外すんなり頭の中に溶け込んでくる。反して返す言葉は「え、凄くない?」「やっぱやるじゃんくろ太郎!」なんてお頭の出来が露呈するような感想だったかもしれないが、少しは理解出来たということが伝われば幸い。そうして纏め終わった荷物を背中に背負えば、投げかけられた問には大きく頷いて肯定を示した。)ばっちりよ、外に出ればこっちのもん!だからさっさと…、…………………。(そこで分かりやすく言葉に詰まったのは、件の“お姫様”のことがすっかり頭から抜け落ちてしまっていたからだった。そういえばお姫様とやらについての情報を交換条件としていた己を思い出し、顔から一瞬にして血の気が引く。蒼白。分かりやすい動揺だった。彼についてはまだ分からないことばかりだけれど、それでもただの善人だと断じてはならないというのはきっと正しい判断だろう。何かそれらしい言葉で誤魔化してしまえればよかったけれど、生憎咄嗟に弁舌を奮う程の能力は持ち合わせていない。結果、背後からガシッと彼の腰当たりにしがみついて、)………ごめん!実は何ッにも知らなくて!あたしが知ってんのは、あたしみたいな贄が何人かいるとかそれくらいで……怒ってる?でもお願い「やっぱ外に連れてくのはなし」だけはやめて!?(吐き出したるは取引云々も全て放り投げた心の底からの懇願だ。みっともなくたって構わない、唯一の希望を手放したくなくて、とにかく必死だった。)

立花蓮 ♦ 2021/01/05(Tue) 01:04[16]

――んー。まあ、そこそこ。(苦労したくないからサボってきたし、嫌な事象からは目を背けてきた男は、言葉を濁す。本当のことを言う気もないが、「全く無い」とは言えなかったから。)見えないならいいんだよ。怖がったら寄ってくるよ、あいつら性格悪いから。(まるでお化け屋敷みたいに、こともなげに言う。B級のゾンビ映画だって、泣き叫ぶヒロインにこそゾンビは群がるものだろうと。意地悪く口角を持ち上げた男は、楽しんでいる風にすら見えるかもしれない。呪力は生まれに左右する。術式も、また。呪いの見える見えないだってそうだ。今更それに何を思うでもない。性差のような、個性のような、“あって然るべきもの”だから。称賛のような響きはそりゃ多少くすぐったくて頬を掻くけど、自分でもそう思うかと言われれば別の話だ。もっと“凄い”人は他にいる。彼女が外に出ればすぐに分かることだから、今は肯定も否定もしないでおこう。背負われたリュックに彼女自身が納得済みなら、こちらとしても否やはない。ただ、部屋を出れば会話は難しい。姿を見えなくしても声で居場所が割れるからだ。だから聞ける情報は今のうちに――と、思ったのだけれど。)――……。(わかりやすい顔面蒼白を見るや否や、もはや言うまでもなく、諦観溢れる半目がじとりと彼女に向くだろう。扉に掛けていた手を離してそのまま襟足を掻いていたら、まさか腰にしがみつかれたものだから。「うわっ」と素直な驚嘆が口からまろび出て、どうどうと嗜めるように、あるいは降伏を示すかのように両の腕を上げた。)わかった、わかったから! 今さら見捨てたりしな――……なんて? にえ?(瞠目。次いで、点と点が線でつながる感覚。外に出たい、13~18歳の女の子。“囚われのお姫様”。一瞬の逡巡。一度だけ、舌を打った。彼女に気づかれないといい、この場に居ない人物への苛立ちだったから。)……わかった。このまま行くよ、“お姫様”。違ったって、押し通す。(三度目の承諾は、前二つに比べて明確に芯の通った音だった。改めて彼女へ向けて手を差し出そう、迷いなく。まっすぐ彼女を見据える視線も伴って。その手を取ってくれたならすぐにも『浄玻璃』を発動させて、自らが侵入した出入り口へ向かうつもりだ。)

治葛静音 ♦ 2021/01/05(Tue) 18:19[17]

(そこそこ。核心に触れることなく暈された言葉が、 気にならなかったといえば嘘になる。けれど純粋な好奇心を理由に無暗に踏み込んで良い領域でもない気がして、暫しの逡巡の後に「そか」と短い相槌を零すに至った。きっと常人には縁のない苦労を重ねてきたのだろうなと思えば、怠惰な風采を漂わすその振舞いだって何だって許せる気が──、)わ、わざと怖がらせようとしてない!?笑うなこらっ !!(──しなかった。なんせ目に見えないバケモノに対してびびりまくりのせいで、意地悪く緩んだロ角に思わず飛び出た声を抑えるように両手ではっと口を覆った。ここで騒いで見つかってしまったら何もかもが終わってしまう。「性格悪いのくろ太郎じゃんね…」なんてぶつぶつ零す言葉は所詮白旗を掲げた負け犬の遠吠えで、その実言葉に重みはない。)え? にえ、うん。あたしとか、あと何人かいるの。それは知らないの? あたしみたいな超絶美少女を生贄にして、教祖サマを復活させるんだ〜〜とかいうくっそ趣味悪い考えらしいんだけど…。(この敷地内に乗り込んでくるのだから、教団の中心であるその考えは疾うに知られているものだと思っていたけれど。どうやらそうではないらしく、瞠目する彼にこちらもぱちりと瞬きを零した。余計なことを言ったかと慌てるが、続く言葉と差し出された手に心臓の奥がきゅっと締め付けられるよう心地を覚えた。緊張、期待、恐怖、希望、あらゆる感情がごちゃまぜになったそれに何と名前をつければ良いか現今知る術はないが、彼に返す言葉は考えるまでもなく知っている。……ありがとう!頼りにしてるわ、くろ太郎っ!(同じ年頃の少年の手だ。大人に比べれば、まだどこか稚い風采をしていたかもしれない。けれど今この瞬間、彼の手は治葛の目にはただしく闇に差す一筋の光だった。そうして出口まで往く道中、嘘みたいに拍動を繰り返す心月蔵を誤魔化すようにきゅっと胸元で両手を握りながら、)……ねえくろ太郎。外に出たら、もうバイバイなの?(小さく、ひとつだけ疑間を投けかけた。)

立花蓮〆 ♦ 2021/01/06(Wed) 06:00[18]

(笑うなとは到底無理な話だ。口元を両手で覆う彼女の一連に、隠す素振りもなく喉の奥で笑う。「否定はしないよ」と、なお楽しげに声音を弾ませたのも、今にして思えば気楽がすぎたか。怠惰な男は、任務だからとてXについて特別調べもしなかった。こちらを指さして笑う性悪教師が目に浮かぶようだ。まるでそれが当たり前のように紡がれるとち狂った背景に、また舌を打つ。)っとに、趣味悪……。まあ、呪霊がウヨウヨいる時点で普通じゃないけどさ……。(己の認識をお化け屋敷から中ボスダンジョンに格上げしつつ、少しだけ彼女から視線を逸らして今度はガシガシと頭を搔いた。差し出した手はそのままに歯噛みする、胸糞が悪い。でも、)……どういたしまして。(光になると決めた。一人では助からなかった状況を知っているから。あの人になりたいわけじゃない、なれると思っている訳でもない。ただ、助けられた命の使い所くらいは知っている男でありたいのだ。己しか知らぬ出入口を先導しながら目指す道すがら、頼りなげな小さな声を拾って振り返るも、し、と人差し指を立ててまた前を見る。近くには蠅頭が飛び交っていて、先に身の安全を確保したかったから。暫くすれば塀に人ひとり通れる程度の縦穴が空いた場所に出るだろう。先に彼女を外へ促してから、周囲を確認しつつ男もそれを追う。)――んじゃ、僕はここまで。お疲れさん。(そう言ってポンと彼女の肩を叩いたあと、)……とでも言うと思った? そこまで薄情じゃないよ、僕。(ふっと、口の端だけを持ち上げて悪戯に笑う。もう一度、改めて手を差し出した。「行こっか」と先を促す男の顔はまだこの先のことを何も知らぬけど、いや、だからこそ。穏やかに、彼女を安心させるかのように微笑むだろう。外に出たなら、次は安全なところまで――今回ならば、ひとまず任務達成の報告も兼ねて高専まで連れ帰ることになろうか。身一つに等しい身軽さで抜け出した彼女が、いつか何にもその命を脅かされずに済む日が来るといい。なるべくなら、――早く。そう願わずにはいられない、聖なる夜の出会いだった。)

治葛静音〆 ♦ 2021/01/06(Wed) 14:33[19]

(どういたしまして。その言葉に己の感謝が届いたのだと思えば、自然と口元には笑みが宿る。ずっと外に出たかった。例えその先に待つものが眩しく優しいだけの未来だけではないとしても、それでも。抱いた希望の中に影を落とす恐怖はきっと完全には消えないけれど、それでも今この足が迷わず一歩を踏み出すことが出来るのは彼のおかげだ。一人で我武者羅に当たって砕けてを繰り返していた時よりも、ずっとずっと心強い。そうして光を頼りに歩みを進め、外に出た瞬間にさざめき押し寄せた感情に何と名前をつけたら良いだろう。目の前に広がる光景は、この場に連れて来られた数年前と何ら変わりはないように思えた。Xの敷地内だって当然現代的なものであるから、視覚的には然程新鮮味はない筈なのに。それでも目に映る誰かにとっての恙無い日常は、治葛の目にはとびきり眩しいもののように見えていた。加えて、肩に軽く触れた温もりに胸の奥が震える。悪戯に向けられた笑みに撫でられた縁が、ゆるりゆるりと融解していく。その瞬間にぼた、と効果音と共に溢れた一粒を皮切りに、今まで必死に閉じ込めていた涙が溢れ出す落涙を止める術は持ち合わせちゃいなかった。)ひぐ、ううう〜……っ、ひ、わあああああん!(可愛げも何もかもかなぐり捨てて子どもみたいにわんわん零した泣き声が、冬の冷たい空気の中によく響く。行こっか、その一言が嬉しい筈なのに、暫く止まる気配のない涙のせいでべしょべしょに濡れた顔で一度大きく頷くので精一杯。)ありがと、くろ太郎。……ありがとお。(そうして差し出された手にてのひらを重ねた瞬間、またぶわりと溢れる涙を止めるのはもうとっくの疾うに諦めてしまった。そうして彼に連れられ進むみちゆきのこと。)…お母さん。(ぽつりと零した声は、彼の耳に届いたかはわからない。もう輪郭すら曖昧になってしまった最後の日の記憶の中で、母も同じようにこの手を引いてくれていた。結果自分は不要な物として棄てられたのだから、あの手の中には今触れている温もりと等しい優しさなどなかったのかもしれないけれど──、)……ねえ。手、離さないでね。もうちょっとだけでいいから。(縋るようにてのひらに力を込めれば、確かに触れられるものがある。それはこの夜に与えられた、たったひとつの祝福のように思えた。)

name
icon
msg
文字
pass