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(静かな音、とは程遠いましろの君へ。)

立花蓮 ♦ 2021/02/08(Mon) 23:47[88]

(――結果として、立花蓮の失明は免れた。しかし、以後ゴーグル未着での技の使用は固く禁じられる。当然といえば当然だし、男としてもアレ以上の無理を今後する予定もないからすぐに頷いて見せただろう。瞳はほとんど色を失って、今は元の赤い色味を再現するかのようなカラーコンタクトに度を入れて過ごしている。家入に「次あんなことしたら眼球にこびりついて取れなくなるよ」と脅されて、従わない人間などいないに違いない。今日は、そんな異物感にも慣れてきた頃だった。季節は徐々に、春の様相を見せ始めている。どこからか、ささやかな梅の香がかおった。)しろ子~。(Xが事実上解体されてから、およそ一週間。面会謝絶の要経過観察が明けて、最初の日。相変わらず制服の上にダウンを羽織っただけの簡素な出で立ち。寮の昇降口へ彼女を呼び出したのは男本人で、彼女が姿を見せてくれたなら手を振って存在を示すだろう。別に何処に行こうと誘ったわけでもないから、彼女に行きたい場所があるなら付き合うつもり。男にとって、場所は重要でなかった。買ってあった缶のカフェオレをひょいと投げ渡す。)なんか、前に言ってたじゃん。言いたいことあるって。暫く任務ないらしいから、聞いておこうと思って。(タピオカじゃなくてごめん、と付け足してから自分のカフェオレのプルタブを開けた。移動が必要なら校門へ向け歩き出すだろうし、そうでないなら休憩室にでも向かう心算。)

治葛静音 ♦ 2021/02/09(Tue) 20:29[96]

(新たな決意を胸に秘めた女は、前より少しだけ強くなったかもしれない──というのは、あくまで本人談。なんせ彼と顔を合わせた瞬間に涙腺がぶっ壊れて無様な落涙は避けられなかったから、説得力の欠片もなかったろう。誰より真っ先に会いたかった彼からの呼び出しに、全力疾走で昇降ロへと向かう姿はそりゃもう必死だった。髪が乱れるのも息が荒くなるのも気にせずに、駆け付けた先に見た彼の姿と間延びした声が何だかやけに懐かしく思える。しろ子の愛称だって、涙を誘引する理由だった。ぼたぼたと涙を零しながら距離を詰める様は、いささか滑稽だったかもしれない。けれど涙を止める術は持ち合わせておらず、すんすん鼻を啜りながら歩調を緩めた。)生きてるう…!よかっだ、くろ太郎のくせに生意気よ、本当に心配したんだから〜…!何よー週間って、アンタあたしがどんな気持ちでいたか知ってる!? うえ、生きててよがっだ、……ねね、 …目は大丈夫?(覗き込んだ目に、小さな違和感。どうやら視力に問題はなさそうだけれど、あの夜の反動はどれ程だったのかと胸裏に心配が影が落ちるのも当たり前。そうしてカフェオレを受け取ったなら、「ありがとう」のお礼を口にするより先に固まった。言いたいこと。今更思い出したようにぴしりと固まり、ブリキの玩具宜しく視線が右へ左へぎこちなく泳ぐ。けれど明日何が起きるか分からないというのはもう嫌という程知っているから、先延ばしにするのだって限界だった。手櫛で乱れた髪を整えて、深呼吸。)あの、       す、     好き。あたし、アンタのこと好き、なんだけど……付き合ってくれない………?(失われ続けていた青い春。遅咲きの初恋を告げるには、手にした武器はあまりに心許なかった。梅を通り越して真っ赤なチューリップ宜しく赤に染まった頬を自覚して、「どこに?とかボケかましたらはっ倒す」と付随させた言葉は、 あまりに攻撃的な照れ隠しの類だった。それからもう一つ。彼が答えるより先にばっと両手を前に突き出して、)イエス以外の返事はいらないの!…いらないから、その時は保留にして!何年かかってもはいって聞けるまで粘るから!!

立花蓮 ♦ 2021/02/10(Wed) 00:07[101]

――マジ?(とは、声に乗せるつもりのなかった驚愕だ。ぎょっとした、とはまさに今の男に使うべきだろう。振っていた手も思わず止まり、狼狽色濃く冷や汗をかく。そりゃ、多少の心配は掛けたと思うけれど、まさか初手で号泣とは思っていなかった。駆け寄ってくれる健気さには確かに胸擽られるものの、申し訳無さが勝る男の眉が八の字を描く。目の前までやってきた彼女に、両の手のひらでどうどうと声を掛けながら。)ご、ごめん……。(一言目に「生きてる」と来た。死ぬ気などこれっぽっちもなかった男は、ようやくそこで彼女との意識の乖離を知るだろう。ただしく圧倒されている男は肩をすくめ、若干上体を後ろに逸らす情けなさだ。目を覗き込まれれば、とっさに視線を逸らす。ましろくなった瞳は、コンタクトの色をきれいに乗せているはずだけど。)見えてるよ。大丈夫。そっちこそ、大丈夫? あととか、残ってない?(嘘は、ついてない。今、全てを教える必要もないだろうと判じた。実際生活に影響はないし、不必要に彼女が自分を責めるほうが嫌だった。いつかあの夜を、「そんなこともあったね」と笑えるようになったら話すつもりだ。春香る時期となっても暦はいまだ二月。袖に覆われている腕をちらと眺めた。)――?(不自然に固まった彼女の様子に小首をかしげれば、カフェオレも一緒に傾いた。珍しいなと思いながらあまったるいそれを嚥下しようとした矢先、)ぶっ(噎せた。思いっきり。)っげほ、けほ、…………本気で言ってる?(気管に入ったカフェオレを追い出しながら眉を顰める男は、それでなくとも訝しんでみせただろう。ゆでダコのように真っ赤な彼女の顔を見て冗談だと思っているわけではないし、決してボケでもない。ただ、はっ倒される覚悟はあった。)呪術師って、独身が多いんだよ。(唐突に話を切り出しながら、突き出された両手を、腕を上からそっと抑えるように優しく降ろさせる。少しなぞって、指先をつまんだ。)――これから先、僕は君だけを守って生きてけないよ。すぐ死ぬ気もないけど、死ぬのはきっと赤の他人を助けてる時。(指先に落としていた視線を、ゆっくり持ち上げる。困ったように笑って、彼女を見据えた。)それでも、いい?(――その声はまるで、”イエス以外の返事はいらない”とでも言うような、懇願を切実に孕んだ音のようで。)

治葛静音 ♦ 2021/02/10(Wed) 16:24[109]

(マジのマジだった。狼狽えるさまは見て取れたけれど、心配しきりだった一週間を思えば感情のままの落涙だって許されてもいいだろう。逸れた視線によって、感じた違和が確信に変わる機会は先延ばし。嘘つきらしい彼の言葉を全部無条件に信じてしまう女は、「ならいいんだけど」と小さく頷き白のニットの腕を捲ってみせた。裂傷の痕ひとつ残っていない腕でふんっとカこぶを作ってみせるのは、大丈夫のアピールだ。)はっ倒すわよ!?(一世一代の告白に、疑問符を返されれば反射的に叫んでいた。これも照れ隠しだ。唐突な自覚はある。けれど好意は正しく届いたらしい。切り出された言葉に羞恥を喉奥へと飲み込めば、指先に触れる温度に嫌でも意識が傾倒してしまうのも仕方のないこと。呪術師。彼がその道を歩み続ける限り、誰かの為に命を懸けることだってあるのだろうというのはこの身を以て知っている。その眩しい姿にだって惹かれたのだから。重なる視線に、未だ薄く膜の張った双眸がくしやりと緩んだ。小さく息を吸って、)   やだ。……って言ったら、どうする?ドキッとした?やだがやだ、って思ってくれたらいいな。(鈴を転がすような声色で紡ぐ言葉には、隠し切れない喜色が滲む。触れていた指先をこちらからも絡めて、何度も助けてくれた彼の手に触れたがる。無気力で掴み所がなくて、されど時折困っちゃうくらいに格好いい。そんな相手に自分ばかりが心臓を揺さぶられているのは悔しくて、ちょっとした仕返しだった。そんな悪戯も、彼の声が孕む熱のせい。同じ気持ちだと言外に告げられているような感覚は、自惚れでないと信じたい。)……いいよ。あたしのこと、一番にしてくれるなら。なんでも許しちゃう。(指先に、少しだけ力が籠る。下心と期待をふんだんに詰め込んだ証だった。)

立花蓮 ♦ 2021/02/11(Thu) 01:35[115]

(どっちにしろはっ倒される――とは言わずにおいた。火に油を注ぐ愚行だと、さすがの男でも察せたからだ。頬に手も伸ばして涙を拭いてもやれない薄情者が、それでも色気のない力こぶに安堵する。ふやけるように笑った顔は、言われた台詞の攻撃性に反して、心安い。指先同士が絡み合えば、少しだけくすぐったそうにしただろう。)しょうがないな、とは思うよ。(嘘だ。やだがいやだし、傷つくのだってわかりきっている。侘しげに瞼を半分下ろして、眉尻を下げた。答えがわかりきっている声色でなければ、この顔で「そっか」と言っていたかもしれない。嫌なことから逃げる悪癖は、どう頑張ったって一生直りはしないだろう。何も持ちたくない、抱えたくない。逃げて隠れて、見えた触れたと思えば全てを焦がすような力で、守れるものなんて高が知れている。誰にも近寄って欲しくなかったのに、日陰のサポーターでよかったのに、たったひとつ手を取っただけて手放し難くなってしまうなんて大誤算。)――一番は、どうかな。よくわかんないや。(これは、本音。だって、他との比べ方がわからない。特別で、初めてで、たった一人の女の子。他に介在出来るものがあれば教えてほしいくらいで、気恥ずかしそうな笑みで首を傾げた。絡み合った手を離して、随分中身の減ったカフェオレを飲み干す。術式でねじり潰したのはちょっとした発散だ。ストレスではないけれど、ちょっと、落ち着かなくて。近くのゴミ箱に投げ捨ててから、ポケットに手を突っ込んだ。)好きとかも、正直よくわかんないけど。”これ”が大切なくらいには、ずっと君と繋がってたいって思ってた。(取り出したのは、ずっと居場所を一定としているパンダだ。口元に寄せて、彼女を見る。)君本人も、一緒にいてくれる? 御存知の通り、僕結構ヤなやつですけど。(ちゅ、と。可愛らしいリップ音も、わざとである。)

治葛静音〆 ♦ 2021/02/12(Fri) 00:03[124]

(しょうがない?よくわかんない?彼の言葉に首をゆるゆる左右に揺らしながら小さく笑った。)あたしのことが一番大好きで大事って顔に書いてある気がするんだけど、勘違い? おかしいな。(図々しく図太い言葉は、彼の中に確かに己の居場所を見出してしまったからだった。面倒なことからは真っ先に逃げ出すだろうというのは今まで共に過ごした時間の中で十分感じ取れたし、彼自身の言葉でも教えてもらった。それゆえ今この瞬間に触れている手が何より特別な証のように思えてしまうから、緩む口の端にはどこか得意気な色だって滲んでいた。)そういうの、好きって言うのよ。覚えときなさ、  うわそれいつも持ち歩いてんの!? 好きどころか超好きじゃん、あたしもベッドのとこに置いてますけど……。似た者同士ね。……勿論よ、ずーっと一緒にいてあげる!(絡まっていた指先の温度に伴うようにじわりじわりと熱を帯びた脳髄が、一瞬で沸き立つ心地に目眩を覚える。ぎょあ!!なんて甚だ滑稽な悲鳴が口端を割って滑り落ちた。優位に立てたと思ったのなんてほんの一瞬、秒で攻守交替の現状を思い知れば地団駄を踏みそうな勢いで、)や、ヤなやつヤなやつヤなやつ~……!!! くろ太郎のくせに、もおおおお!(ジブリ宜しく零した恨み言の、それでも甘ったるいこと。結局は彼のことがどう足掻いたって大好きで、特別で、他の介在など許さぬ程の唯一なのだ。例えどんなにヤなやつだろうと、それだって全部全部が愛おしい。季節外れの温度を宿した頬を冷ますように両手でぱたぱたと仰ぎながら、そういえばと切り出すのは気恥ずかしい空気を誤魔化すためでもある。)詳しいことは今度話すけどー……。あたしね、もっかいお母さんと暮らすことになりそう。高専も出ちゃうけど、寂しがらないでね。……あたしはちょーっとだけ寂しいけど、“大丈夫”よ。(過日、投げかけられた問を思い出す。「此処出ても、大丈夫そう?」あの時は、ちっとも大丈夫じゃなかった。一人ぼっちになるのが寂しくて、心細くて、だけど今は彼がいる。離れたとてずっと繋がっているのだろうと信じさせてくれる存在がいるから、迷わず歩いていけそうだ。はにかむ顔を誤魔化すみたいに、両手を広げてえいと彼に抱き着いてみる。沖融たる温度に身を委ねながら、彼と生きる日々を願った。)

立花蓮〆 ♦ 2021/02/12(Fri) 02:48[126]

――そっか。(「好きって言うのよ」そうだろうとは思っていたけど、感情の名付けはたった今だ。大好きで大事なのだって否定しない。ただ、他に大好きで大事なものがないので比べられないというだけの話。喉を震わせて発した小さな呼気で笑って、付随して肩もささやかに揺れるだろう。)へえ。一緒に寝てんだ? 僕よりずっと一緒にいるんじゃない?(パンダの居場所を口元にしたまま、ひどく挑戦的に目を細めて。似た者同士という単語だとて、此方を煽る台詞になんぞなりはしない。とっくに自覚済みだからだ。楽しげに持ち上がった口角が男の性悪を証明するだろう。確かな喜色も孕んだ言動は、無敵な気分がさせること。悲鳴さえ心地良い。)くろ太郎のくせにってなに。(先ほどと違って大きく溢れた呼気、けれど孕む成分は何も変わらない。喉が何度も上下して、腹の底から身体が揺れてしまった。どんな恨み言を投げられたところで、幸福そうに撓んだ男の目元も譲らない。ようやっとパンダを元の居場所に戻して、改めて彼女の隣に並ぼうか。どこへ行くでもないけれど、此処が自分の居場所だと思う。)――そっか。(先ほどのそれとは打って変わって、穏やかな中に一粒の苦味がエッセンスのような、見守る声音。高専を出たとて生活の保証が打ち切られるわけではないと聞いているけれど、それだけで全ての心配が除かれるわけではない。離れて暮らしていたらしい母のことは詳しく知らぬけれど、この子のお母さんならきっと大丈夫だとも思うのに。きっとこれは、男の問題だった。)俺が寂しいって言ったら、”大丈夫”じゃなくなる?(柔和に笑いながらのそれは、揶揄と知れるだろうか。きっとそう伝わってほしい。縫い止める気はない、自由がいい。自分がそうであるように、そう求めるように。抱きつかれれば確かに一瞬目を見張ったけれど、すぐに肩を抱いてぽんぽんと叩いただろう。慰めたのは彼女でなく自分だ。寂しがらないでなんて、無茶なことを言う。名の割に騒がしくて、明るくて、元気な女の子。ちょっぴり泣き虫で、守ってあげたくなる女の子。そんな存在が傍に居なくなって、すぐに会える距離じゃなくなって、寂しくならない男が居たら教えて欲しい。そんな本音を、心のまま打ち明ける日はきっと来ないけど。最後にぎゅっと抱きしめて、暫く分のエネルギーチャージを試みるくらいには。これから先の日々、どこを切り取っても彼女の面影があるといいと思うくらいには。立花蓮は、治葛静音が大好きだ。)

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