bbs topadmin

(向かう先、西風千鶴の部屋。)

七竈王哉 ♦ 2021/02/08(Mon) 18:07[80]

(Xからの帰還後、更にまるっと一日眠り続ければ体力も漸く全開の兆しを見せ始めた。もう少し休んでいたかったというのが本音だが、そんな怠惰を許してくれる程周囲は優しくないらしい。数日後には新しい任務の予定が入っていて、また暫く高専を空けることになるだろう。自分が、仲間達が、少女達が、命を賭した戦いも世界の中で見れば瞬きの間に過ぎ去る出来事なのだと思えども、そこに存外焦燥は滲まない。呪術師として、七竈王哉として、得られたものが確かにあった証拠だろう。)ま、こんなもんか。(零した独り言は事実を事実として受け止めただけの軽いもので、きっとこれから先もこうやって生きていく。そうして医務室を後にした男の足が向かったのは、自室ではなくこのひと月の間で何度か訪れた彼女の部屋だ。両手を制服のポケットに突っ込んだまま、足先でノックをする怠慢さは平素通りのもの。そのまま返事を持って、暫く。彼女が無事に顔を覗かせたならそのままで、或いはいつかの買い物のように待たせるつもりならば無遠慮な指先をドアノブに伸ばすことに躊躇いはない。 どちらにせよ、丸一日以上ぶりの邂逅における第一声は決まっていた。)返事聞きに来てやったぞ。(意識を失う直前に、己が告げた言葉ははっきり記憶に刻まれている。それに対する答えを差し出せと、自己中心的な所業は激動の夜を越えたところで変わらなかった。ロ角を緩ます笑みだって、いつも通りのものだ。)千鶴が「王哉くん大好き」って早く言いたくて仕方ねえかなと思って来たんだけど、違った?……つーか、俺が早く聞きたいんだけど。早く。あと3秒以内。(彼女の顔を覗き込むように背を曲げて、目を合わせる。傷一つ残っていない彼女の左頬を、もうあと数秒だって我慢の効かない手が撫でた。)

西風千鶴 ♦ 2021/02/08(Mon) 22:43[85]

(返事も聞かずに眠ってしまった勝手な王のたくましい腕から、どうにかこうにか抜け出して。逃げ帰るように戻った自室の扉を閉めたその瞬間、)~~~っ  …待ってよ……(千鶴は手のひらで顔を覆った。やけどしそうなほど頬が熱くて、まるで風邪をひいたときみたい。頭の中ではさっきからずっと、彼の声ばかりがこだましていた。 千鶴。 好きだ。 すっげえ好き。 まっすぐな愛に貫かれ、こころがふるえているのがわかる。 けれどあまりにも突然すぎて、受けとめきれない気持ちもあった。海に浮かんだ小舟がなすすべもなく高波に揺らされるように、はじめて知る感情に戸惑う。結局、その日は眠れなかった。)! き、王哉くん……?!まっ、だめ、ちょっと待っ……(そして、翌々日のこと。未だぼんやりとした心地が抜けず、うっかり朝食を食べ損ねた。身支度だけは整えていたのは、元来のきまじめさの賜だ。あの日のようにドアが開いたなら、ボートネックの青いニットに雪色のプリーツスカートを合わせ、身構えるようなポーズで固まる千鶴の姿が目に入るだろう。来訪の目的を告げられて、みるみるうちに頬が染まる。)なっ……!そ、そんなこと思って―― …っ、なに、それ……急にそんな、…ずるい………っ(言わせてやろうと笑う彼ばかり余裕があるのがくやしくて、突っぱねようとするけれど――素直に“聞きたい”と乞われてしまえば、もう降参するほかはないのだ。頬を撫でる手に応えるように、彼の双眸をおずおずと見る。「せ、急かさないで」「だから、ええと…」幾度かまばたきをくりかえしたあと、すぅ、とひとつ息を吸えば)     …すき、(想いを宿すひとひらが、ふたりのあわいを揺らして溶けた。じわりと、瞳が潤みを帯びる。)王哉くんのことが、好き。

七竈王哉〆 ♦ 2021/02/09(Tue) 14:20[93]

(乗り越えてしまえば、存外簡単なことだ。 一度命を危険に晒せば、自覚以上に生にしがみついていたのかもしれないとぼんやり考える。ただ消費するばかりだった命に再び意味を見出し始めたなら、元より己の希求に正直な男の行動からは一切の迷いが消え去っていただろう。二日ぶりの邂逅で、好き勝手言葉を紡ぐあたりにもその様子は表れていた筈。分かりやすい狼狽を示す彼女の仕草がおかしくて、口元が緩む。笑みに甘さが宿るのは無自覚だった。彼女の瞬きの合間に、期待が
、下心が、熱情が、あらゆる情操が煌めいているのは予想ではなく確信である。だって知っているのだ、この感覚を。自分の中にもあるものだから。)おー、知ってる。(そうして彼女の口から望みの二文字を引き出すことが叶ったならば、零れた言葉の持っ甘ったるさにまず自分が驚いた。分かりやすいよお前と笑ってやろうと思っていたのに、好きだ嫌いだの色恋沙汰はこれが初めてでもないのに、されど脈打つ心臟が全身に熱を浸潤させていくのだから重症だ。空いた片手で彼女の手を引き、腕の中に抱き寄せた。何度目になるか分からぬ抱擁は、きっと今までで一番優しい温度をしていたろう。)……話してえこと、いろいろあんだよね。今度聞かせてやるよ、心して聞きな。(囁き落とすように、言葉を紡いだ。暴くばかりで結局己の過去を教えたことなど無に等しいと、気が付いたのは最近のこと。今まで誰にも踏み入れさせたくない領域を明確にしていたのだから、当然かもしれないけれど。慰めて欲しいわけではない。優しさが欲しいわけではない。けれど彼女には、知っていて欲しいと思った。過去の上に成り立つ男の今を。彼女と出会って変わったこの生を。とはいえ積もる話は後回し。今はもう少しだけ、この温度に浸っていたっていいだろう。この手で救った、唯一無二だ。)

西風千鶴〆 ♦ 2021/02/09(Tue) 22:13[98]

(知ってる、というあまやかな声に、くやしげに頬を膨らめ押し黙る。その声や笑顔がはじめて見る、とびきりとろけたものだったから、どうしたらいいかわからなくなった。抱き寄せる腕もなにもかも、なにもかもがこれまでとは違う。とくべつなんだ、わたし、このひとの。はっきり自覚してしまえば、そして自らも口にしてしまえば、もう制止などきかないのだ。あたたかな背に腕を回す。ひとつになってしまえるほど強く。そうして開け放たれた窓から小鳥が次々に飛び立つように、想いが唇からあふれてゆく。)すきだよ。 王哉くんがすき。 ほんとはあのときも、…言えなかったけど、巻き込まれたっていいと思ってた。王哉くんに降りかかる不幸、半分わたしが受け取れるなら、……そしたら王哉くんのけが、もっと軽くて済むのかもって。だから嬉しいの。わたしも、危なくても、王哉くんのそばにいたい。(渡しそびれていた過日の返事を、ひとつ、ひとつ、丁寧に紡ぐ。やがてささめきが降ってきたなら、ふっとちいさく吐息をこぼそう。聞かせてやるよ。心して聞きな。こんなに横柄な口ぶりなのに、好きだなあ、と思ってしまって。)うん。……ゆっくりで、いいからね。 わたしも、話したいことたくさんある。これまでのことも、……これからのことも。相談に乗ってくれる? 先輩。(まるで猫が甘えるときのようにその腕に頬をすり寄せて、たのしげな声で予告した。あなたが呪術師を続けるのなら、わたしは高専で働きたい。そう告げたならおどろくだろうか。賛成、してくれるだろうか。飽くまで千鶴の青写真だから、彼の進路や考えも聞いてから決めたいと思っている。ふたりとも納得できる道がいい。一緒に生きて、ゆきたいから。)

………。  …きみなりくん、(優しい温度に満たされながら、千鶴はそっと唯一を呼ばう。とろりと甘い、あどけない声。けれどわずか滲む虹彩には、年相応のたしかな熱を――恋人への熱を、孕んでいた。)――…どう、したらいい? どうしてほしい? あげたいの。わたしのぜんぶ、 …あなたに、あげたい。(これも、あのとき言いそびれた気持ち。見つめる瞳で伝えたがった。いいよ。あげる。ぜんぶあげる。いざなうように微笑んで、)だいすき、(その顔ばせに、指を這わせた。)

name
icon
msg
文字
pass