bbs topadmin

(迷子センターはどこですか)

今波燈 ♦ 2021/01/12(Tue) 17:58[8]

(クリスマスの大脱出劇を繰り広げた二日後、やけに早い時間に目が覚めた。まだ外は陽が上ったばかり、太陽が力を発揮するのはまだ先の話だろう。大脱出劇の翌日は泥のように眠って寝坊仕掛けたくらいだったし、その反動だったのかもしれない。目が覚めて暫くは部屋で過ごしていたのだけれど、妙に眼が冴えて眠れない。事前に教師には出歩いても構わないか許可は取ってあるし、出入り口や部屋の位置などある程度の地理は頭に入れておきたかったからこうして人気のない校舎内を練り歩いたとしても注意されることはないだろう。もちろん禁止された場所があれば流石にそこには足を向けるつもりもなく、散策ついでに外の空気でも吸っておこうと運動場まで出た――のがいけなかったのだろうか。段差に躓いて、思わずへたりこんだまではまだよい。いや、よくないけれど。かなり恥ずかしかったけれど。それよりも大きな問題は、その帰りにあった。宛がわれた自室への道中で、手持ち無沙汰に落ちてきたサイドの髪を耳に掛けながらぴたりと足を止める。)あ、やば。 ……ここどこ……(ものの見事に迷子の完成である。閑静な廊下のど真ん中、呆然とした顔ばせで途方に暮れた声音が漏れてゆく。)

梵一期 ♦ 2021/01/12(Tue) 20:12[10]

(冬は早朝がいいらしい。ぬくい毛布から指先ひとつを出すのさえ惜しい一期は清少納言の説く趣を理解することなど到底無理だろう。けれどふと、挑戦心が芽生えることがある。――冬の朝のいいところ、見つけてやろうじゃんか。朝の身支度もそこそこに、洗顔を終えただけの顔ばせは年相応にあどけない。ひやんとした廊下は清々しさを感じなくもないけれど、)うえっ、さむう。(部屋を後にしたことを早々に後悔する程に冷え切っていた。寒いときは首を温めるのがいいと聞いたのは誰からだったか。スウェットの後ろ襟を掴んで、頭に被るように引っ掛ける。オーバーサイズのおかげで腰回りが露出することはないし、寒さも幾らかマシになった気さえしたがいかんせん、褒められた見てくれではなかった。更には肘を折って余った袖をぷらぷら揺らすカオナシが、角を曲がった先に)――あ…。(見知った姿を捕らえて微かな音が乗った息を漏らす。意図したものではない、断じて。)燈ちゃーーーんっ!! おはよーーーー!(見つけたときは、指先で摘めそうな大きさの距離感だったのに。朝に相応しくない声量の挨拶と共に駆け出せば、みるみる近づいて、あっという間に手が届くほど詰めた。さすがに手は袖から出したとはいえ、珍妙な格好で走り寄る姿はとても朝に見たい光景ではなかったかもしれない。)早起きだね。ラジオ体操でもしてた?

今波燈 ♦ 2021/01/12(Tue) 22:25[11]

(朝露の凍る寒冷が澄んだ空気をもたらし、呼吸すればましろい息が零れて消えてゆく。静謐を貫く廊下に明るい声音が響いたのは、ひとり途方に暮れて数十秒後と言ったところだろうか。反射的に音の主を探すように辺りを見回して彼女の姿を双眸に宿す。「――」と言葉にならぬ声が漏れたのも束の間、覚束ない足取りで彼女の元へ両手を伸ばしながらむすめの方からも歩み寄ろう。)いちごちゃん、(高専の教師陣から彼女らの無事は伝えられていたけれど、こうしてあいまみえれば感動も一入。あえてよかった。ぶじで、ほんとうによかった。彼女を連れだしてくれた誰かに感謝する気持ちは本物だった。瞬時に緩んだ涙腺をどうにか引き締め、喜色を滲ませたやわらかな顔ばせを浮かべて見せる。おだやかな声音になるよう心掛けてはみたものの、然程意味はなさないだろう。元気な姿で彼女が目の前にいることそのものが、むすめに凪を与えてくれているのだから。)おはよ。 うぅ、今日も寒いね……。(彼女に触れようと伸びていた手は彼女に触れる前にむすめの口唇に触れて重ね合わせ、誤魔化すように擦り合わせる。変わらぬ日常を辿るように。)ラジオ体操は……ちゃんとしっかり覚えてはないからなぁ……。昨日しっかり寝ちゃった分、ちょっと早めに目が覚めちゃったみたい。折角だから、ちょっと校舎内の地理を頭に入れておこうかなって思って。 一期ちゃんこそ早いね、ちゃんと休めた?それともラジオ体操したくて起きた感じ?(微笑ましい彼女の姿に思わず胸がほっこりあたたまって頬が緩む。深められた笑みはそのままに、小首を傾いで問いを投げた。)

梵一期 ♦ 2021/01/13(Wed) 18:20[14]

――ハグ! してもいい?(元気を湛えた口吻のまま、両の手をいっぱいに広げるとふざけた襟ぐりはストンと落ちた。疑問符を浮かべ窺いながらも、その実、否を聞き入れる耳は持たない。拙い足元を、雫滲む眦を、震える声を、たとえ僅かなものであれ見逃すことなどどうして出来ようか。謂わば運命共同体のような、同じ末路が用意されていた仲間ともなれば尚更だ。己よりもすこし小さな体躯を抱き込んで、背を擦ってやるわがままを許されたかった。)くっついてれば寒くないよ~。(歌うように震わせた声を吐き出したのは彼女を腕の中に閉じ込めた頃だったか、それとも。)ぇえ、あたし第二までなら完璧に踊れるよ。踊るってなんか変だけど。ここに来たときめちゃ夜更ししてね、昨日もごろごろ遅くまで目が冴えてたのに、今日はなんか起きれちゃった。睡眠時間少ないから元気ってよりハイかもっ。(双眸を細めてニッ、と歯を見せて笑う。気持ちが高ぶるのはそれだけじゃあないってこと、待てを知らない口が告げよう。)燈ちゃんに会えたから“冬はつとめて”になったよ。覚えてる? 枕草子。こんな寒い朝のどこがいいんだろって出てきたのに、簡単にみつけちゃった。(ふふふ、いたずらっぽく声を漏らす口許に指先を添えた。それから、くるりと周囲を一望。吸い寄せられるように窓辺へ寄ると、まるはげにされた木々を眺む。)ここあんま学校って感じしないよね。なんか、和? で、神社? お寺? みたいな雰囲気。しかもすっごい広いし、迷っちゃいそ。(よもや彼女が迷子になっているなど思いもせず、「来た道覚えてる?」なんて冗談まで溢れ出た。)

今波燈 ♦ 2021/01/13(Wed) 23:17[15]

(おおきなまたたきがひとつ零れ落ちてゆく。次いで綻ぶように笑みを深めたなら「もちろん」の一言と共にそっと彼女の背に手を回す。触れればこわれてしまいそうなものを扱うようにそうと、それでいて彼女の存在を確かめるように少しだけ力を入れた。やわらかくてあたたかな、ちいさな生命がうしなわれずに済んだ幸いをどうあらわしたらよいのだろう。Xに悔いは置いてきたけれど、力が無かったことを忘れはしない。背を撫ぜる手が、そのまま変わらぬ彼女のやさしさを運んで呼吸を落ち着けた。これではどちらが年上なのか分かりやしないが、年上だからこその心配でもあったからそれについての言及はしないでおこう。今はただ、ちいさく息を吐いてそうと彼女から離れるだけ。)ふふ、確かに。あったかかったね。 折角だし、手をつないで帰ろっか。(はい、と差し出した手を彼女が取ってくれるかは分からないけれど、弾むような声がむすめのこころに安堵と元気を与えてくれたから躊躇いを見せることはない。ゆるやかに相槌をひとつ打って見せては「私も」と言葉を続けて。)一期ちゃんのお陰で、素敵な冬を見つけられたみたい。 学校って聞いてたからどんなところなのかなって思ってたんだけど……確かに、想像とはちょっと違ったかも。一期ちゃん、因みにこれからお時間はありますか。私と探検デート何ていかがでしょう?(軽口を叩く元気もどうやら戻ってきてくれたらしい。まさか迷っている真っ最中だ何て年上の矜持としても気恥ずかしくて暴露できそうにもないが、問いの答えを辿るように視線を彼女へと向けて今を楽しむ方向にシフトする。彼女の答え如何ではこのまま此処でお別れとなっただろうけれど、もし叶うようであればもう少し彼女とのひとときの逢瀬を楽しむことにしよう。さあ、道中では何を話そうか。彼女を助けてくれた英雄のお話? 聖夜の贈り物のお話? それとも今日の朝ごはんのお話? 彼女とならなんだって、素敵な談笑を交わせるに違いない。)

梵一期〆 ♦ 2021/01/14(Thu) 20:26[17]

(よしよし、よしよし。子どもをあやす手付きであると否定出来ない指先が時折、とんとん、と背を叩く。外にいた分、きっと彼女のほうが冷えていただろう。呼吸の落ち着きを感じ取る頃、ぎゅっと一層力を込めてついでに頬を擦り寄せてから離れた。名残惜しむ腕は彼女の肩から腕を伝って、「もお?」なんて不満げな、けれど冗談めいた声と共にだらりと重力に従うはずだった。やって来た提案に断るという選択肢はないし、むしろ期待がなかったといえば嘘になるくらい。他人の色を窺って大人ぶったところで、所詮は子どもだ。簡単に甘えて、握り返した手のひらはちょっぴり力んでしまったかも。)時間がなかったとしてもあるって答えちゃうお誘いだっ。もっと冬の朝のいいなってところ、一緒に探しにいこー。(ゆーら、ゆーら、繋がった手を揺すって、はしゃぐ心によって飛び出しそうな足取りをゆるく保つ。まず一歩、二歩、三歩。早起きは三文の徳を、みっつの良いことがあると誤って捉える頭があとふたつを欲張った。)あたしの初デートの相手、燈ちゃんになっちゃったな~。燈ちゃんは? 男のひととデートしたことある? 好きなひと、いた?(Xにいた頃は、それまでの話は意図して避けていた節がある。家族のことも、友達のことも、どう過ごしていたのかも。触れられたくなかったし、触れたらいけないもののような気がして。隣から彼女の顔ばせを覗き込んで、興味にきらめく双眸が無邪気に問えるのも、“あたしたち”の世界が好転したからだ。なにもかもが目新しい探検中、年相応に会話に花を咲かせよう。これはふたり仲良く迷子になって朝食に遅刻するまでの、のどかな日常の一幕。)

name
icon
msg
文字
pass