御調久遠〆 ♦ 2021/02/10(Wed) 22:51[112]
約束しろとは言ってねえ。ただ、そういうしあわせを求めるンならきっと応えてやれねえから、早いうちにオレのことは諦めろって言ったンだよ。その方がオマエのためだから。(どこから話を始めるべきか。一緒に居ると決める前に、少女のしあわせが何処にあるかによって今すぐに決断をすることも必要だと思ったのだ。喩え少女と結ばれる未来を歩むことになったとして、呪術師であることを差し引いても普通のしあわせを与えてやれないだろうと自覚している。子どもを持ちたいとは思わないし、任務で長期間家を空けることもあれば、怪我もきっと絶えない。寂しい思いをさせてしまうことのほうが、きっとずっと多いだろう。わかっている、とまた言われてしまうかもしれないけれど、念には念をで忠告したくなったのも、すべて少女のしあわせを想うからこそだった。)オマエのコトは好きだし、大切だと思ってる。けどそれはイマナミがオレに向けてくれてるモンとは別の感情だ。 しあわせにしたいってより、オマエにはどっかでしあわせになってほしいと思うし、傍に居たいってよりゃオマエが平和に暮らしてる世界を守ってやりてえと思ってる。少なくとも今、オレがオマエに懐いてンのはそーいう感情なンだよ。(恋慕ではなく思慕であり、ある意味では恋人よりもなによりもきっと最優先に考えてしまう尊き命。だから時間が要る。呪いに縛られるのではなく、誰かのために生きたいと思える日が来るかどうかについても、これから時間を掛けて向き合っていかなければならない課題だ。そしてもし誰かのために生きたいと思う日が来るとしたら、その相手は少女なんだろうという確信があるから離してやれる今の内に確認しておきたかったのもある。軽口を交わす遣り取りが心地いいと感じてしまっているあたり、既に世界は鮮やかに色付き始めてしまっているのだから。)ま。 呪術師やめろって言われたって絶対ぇ辞めてやらねーし、そこンところは問題ナシ。 デート?あー…そーいやスカイツリー行くとかいってたっけか。他にもしてたな色々。(そういえば、と想い返すあれやそれ。意外にも交わしていた約束は多くって、思い当たるものを見つければ苦笑も滲む。常日頃死を、黄昏を懐いているくせに、これだけの約束を作っていたなんてやはり口で言うほど死にたがりではないのかもしれないと。終ぞさんざしを加えることなくカップの中を飲み切っては、おかわりを問う音に「じゃあ貰うかな」と空のカップを少女の近くへと置くだろう。この身を縛る呪いの名へ贈られた祝詞には、面食らったように黄昏を瞠りもしたけれど、)そりゃどーも。 ……オレも、いつか好きになれりゃイイんだけどな。(穏やかな父の微笑む貌が鮮やかにまなうらに蘇ったなら、男にしては珍しく照れくさそうにはにかんで、そんなふうに応えただろう。この身に刻まれた呪いを祈りと想うことはまだ出来ないけれど、いつかそう思えたらいいと。そう考えたことこそがきっと、変化への一歩だった。)