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(君から貰った贈り物、ふたつめ)

今波燈〆 ♦ 2021/01/11(Mon) 23:58[7]

(高専に保護されて初日も、今日もそう。もう少し気を配れば良かったとうまくいかなかったやり取りがあっても、関係は破綻することなく当たり前に「また明日」がある。それに安堵と喜びとがあることを彼はきっと知らないのだろう。もちろん、元より仲違いするほど深い仲だったかと聞かれれば否かもしれないが、こころに刺さった針を思えばむすめにとっての彼はその他大勢の中のひとりではなかったから。恩人だし、それこそ当たり前だろうか。多分。否、本当にそれだけかはさておき。導き出された答えにため息ひとつを零して、褥にダイブする。お湯を張ったマグカップから、くゆるネロリに波立っていたこころを何とか整えて、そっと瞼を閉じたのちには暗がりの中で物思いに耽っていた。なかったことに何てなるはずもないし、するつもりもないけれど、すれ違ってしまったそれを引き摺らずに今日を終えられたのはひとえに大人な彼の対応のお陰と言ってよいだろう。明日にはスマホも受け取りに行くつもりだし、やることが沢山ある。早く寝てしまおうと意識を落とし掛けたところでふと、)……そう言えば、さっき後で開けろって……(思い出したようにぱちりと瞼を押し上げて、半身を起こせばサイドに置いてある袋の中から文庫本サイズのラッピング袋を取り出す。月明かりの差し込む室内で、袋を開けて出てきたのはジャーマンカモミールのハーブティー。)……私のことばっかり。勿体なくて飲めないじゃん……。(可愛げのない悪態が、こんなにも柔らかな声音で紡がれる日が来るとは思っても見なかった。高専内での彼の評価はまだ然程入って来ていないけれど、それがむすめにとっての本当ばかりではないと知っている。今のむすめを静かに見守っているのは星月の明かりだけ。今度こそ確かに滲んだ世界に、自然と眦と頬とが緩んでゆく。)また明日ね、御調。 おやすみ。(どうか、彼の夢路が素敵なもので溢れていますように。届かない感謝を独り言ちて、再びベッドにからだを横たえた。きっとやさしい眠りがこの後は待っているのだろう。確信めいたおもいがあれば、むすめに不安も嘘もなかった。また明日彼に会えた時には、きっと笑って伝えよう。ありがとうって。――購入したものの中にネイビーがあったかどうかは、むすめのみぞ知る物語。)

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