三須原弐那〆 ♦ 2021/01/31(Sun) 19:57[71]
(明るい笑顔で迎え入れられた、と、思った。そわっとした風が心に吹いて、追ってなんだか気恥ずかしくなって、口元を微かにまごつかせる。勢いに押されるまま頷くこと一回二回。まずは実践と言わんばかりの言葉に、自分の両頬を両手で包んだ。)……むずかしい、です。世界でいちばんは、なんだか、……(このむずがゆさ、歯がゆさを、なんといえばいいかわからなくて。ぶきっちょに震える頬を両手で上げようとするばかり。「治葛さんの笑顔が可愛らしくて」「久百合さんの笑顔はとても綺麗なんです」ぽっつらぽっつら理由を語りながらまたむにむに。ああこんなことなら、この快活な少女ともっと話をしておけばよかった。打算的なようで感情的なこの心をうまく表現できずにまだ足掻く。そのうち気が付くのだ。ああ、これこそが―何でもないガールズトークっていうものだ。)……いいんですか?(驚きが、瞬き一つに溢れる。小さく笑う彼女はちょっとだけ大人びて見えて、暖かくて。自然とふへ、と唇が綻んだことに少女自身は気が付ていない。ただ、見えない明日が少しだけ明るく見えたのは確か。)ケーキ、好きです。私はチョコレートがいいです。……治葛さん、四人で行くこともできますかね。私と、治葛さんと、立花さんと、久百合さんです。 でも、二人でも行きたいです。内緒の話、たくさんしましょう。……たくさん話すので、たくさん聞かせてください。(紡ぎあげる声は、静かで、それでもたくさん、たくさん。いつかみんなでこうやってテーブルを囲めたら。そしてまたこうして二人で話をできたら。そう願うだけで、今は頭がいっぱいだった。いっぱいに、満たされていた。)