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(折って祈って思って、想う)

乙無白亜 ♦ 2021/01/23(Sat) 16:23[44]

(家に帰れる──その朗報を聞いたのはつい昨日のことだった。約束の日は1月23日、だからその日までにたくさん鶴を折って祈っていかなければいけなかった。バックリボンがワンポイントの白いニットワンピースの裾を揺らしながら、本日分のべんきょうを終えて部屋へと戻るむすめの手にはたくさんの折り紙が抱えられている。あとどのくらいで千を折れるだろうかって収納ボックスの中に仕舞ってある折り鶴の山を思い出しながら、直線の廊下へと出た時のことだった。)  あ、(ヒュオッと悪戯に通り抜けた風がむすめの腕の中から色とりどりの紙を攫って、舞い上げて、廊下のあちこちにばら撒いていった。ふわりと舞いあがって、風と一緒にひゅうっと飛んでいく折り紙があんまりにも綺麗だったから、見惚れるようにゆっくりと白い睫毛をはためかせて。折り紙が散乱する廊下を見つめること数秒。)ひろう、しなきゃ。(ぽんと思い出したように手を打ってから、その場にしゃがんでせっせと紙を拾い始める。折り紙でカラフルに染まった廊下は、まるでたくさんの色のペンキを零したみたいに鮮やかだった。)

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 23:26[45]

(単純な学習もさることながら趣味にも近しくなった知識を蓄えようと図書室と自室とを往復していたある日、休憩も兼ねて飲み物を買いに出た時のことだ。色のなかった世界に突如カラフルな雪が舞う。疑問符を浮かべて思わず小首を傾いでしまったものの、よくよく見てみれば雪じゃない、折り紙だ。得心した頃には折り紙の持ち主の姿を眸子に宿して相槌を打った。その結果、間近にあった折り紙を拾い集めようと躊躇うことなく屈み込んで手を伸ばす。手近にあったものを拾い終えたらまた次の折り紙を拾い集めに向かうことを繰り返していれば然程時間を掛けることなく終わらせることは出来るだろう。また色味の薄い廊下に戻ってしまったことはちょっぴりもったいなかった気もするけれど、ひとまずは彼女に届けるべく小走りに近付いて。)これで全部?かな。大丈夫?運ぶの手伝おうか?(拾った折り紙の束を差し出しながら、問いを投げる。彼女の答えが是を示すものであれば「貸して貰える?」と両手を差し出したことだろうし、否であれば心配そうな視線を向けながらも大人しく引き下がる心算だった。)折り紙、懐かしいなぁ。昔は良く折ってたんだけど、最近は全然折ってないや。白亜ちゃんは折り紙好き? 結構量があるから、頑張ってるところなのかなって思って。

乙無白亜 ♦ 2021/01/24(Sun) 01:22[47]

(生来急ぐということをしてこなかったむすめであるので、せっせと拾いはしているもののその動作は至ってゆっくりだ。お陰で折り紙は風が吹くたびにぺらりと低く浮き上がって、釣り糸にくっつけられた餌のように廊下を泳いでいく。ひとりだったらもしかしたら夕方まで掛かったかもしれない作業は、思わぬ助っ人の助けを借りてこと無きを得た。聞こえた声にかおばせをあげて、覚えのある少女を紅玉に招き入れて。差し出された折り紙におどろいたようすで眸子をまあるくしながら、小さな手をそっちへ伸ばした。)あかり、ありがとう。(まずは全部集まったよということを伝えるように頷きひとつ。それから、)へいき。 ひとりではこぶ、できる。(手伝いの申し出にはふるふるとかぶりを振ってだいじょうぶを示した。今度こそ風に攫われてしまわないようにと、本を持つ時とおんなじようにきゅっと胸元へと折り紙を抱き込む。嗜好を問う言葉には、こくりと大きく頷いてみせるだろう。)うん。おりがみ、すき。いま、つる、折るしてるの。 あかりはおりがみ、すき?(こてん。首を傾いでは、無垢な紅玉を黒曜へと向けた。)

今波燈 ♦ 2021/01/24(Sun) 16:57[48]

どういたしまして、驚かせちゃってごめんね。 下から零れちゃわないようにこう、片方は角のところをもってあげると良いかも。(彼女の元へ折り紙が渡ったのを確認してからそうと手を引き戻す。心配そうな視線は相も変わらず、その代わりにとばかりみずからならどうするかを彼女に伝えてみることにしよう。もちろん、彼女の選択がどうであっても「今からお部屋に戻るの?送ろうか?」とまた問いを重ねるだけに留めて。)そっか、良いね。折り紙って色んなものが作れるから、やってて楽しいし。鶴も素敵だよね。 最近は全然やってないけど、すごく好きだったよ。褒めて貰えるのが嬉しくって、出来たものを弟のと一緒に並べて見てるのが楽しかったなぁ。色々忘れちゃってるから、今でも折れるものを探そうとするとそんなに多くないけど。(鶴、蝶々、クローバー、ハート、勲章ーー幾つも折ったそれを思い起こしてはほっこりと胸をあたためて顔ばせをやわらげる。それから、一拍ためらうように視線を泳がせたのち。)……ねぇ、白亜ちゃん。白亜ちゃんは、やっぱり、Xに戻るの?(本当は、聞かなくたってよいことだった。歳にかかわらず人の意思を尊重したがるむすめではあるが、今回に至っては彼女の意思如何にかかわらず分かり切った答えだ。それでも問わずにいられなかったのは、このあたたかな世界で過ごしているうちに、Xの中で凍らせていたこころが溶けてきたからなのかもしれない。)

乙無白亜〆 ♦ 2021/01/24(Sun) 23:43[51]

(持ち方のレクチャーを受ければ手許へと目線を落としつつ、言われた通りに角っこのほうを支えてみせては「こう?」と不思議そうに彼女を見つめた。送りの誘いにはこくんと頷いて、こっちと自分の部屋のほうへ向かって足を進めた。)おとうと……あかり、かぞく、おそとに、いるの?(聞き慣れない単語を拾っては、ゆるく首を傾いで問いかける。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、妹、弟。Xのなかでもよく聞いた言葉、むすめには無縁なもの。けれどそれを家族と呼ぶことは知っていて、そこが子どもの帰る場所であることも知っている。のちに紡がれた音を聞いて、紅玉がじぃっと黒曜を見上げた。まっすぐ、心を伝えるように。)帰る。 てんしさまのところ、わたしのおうち、だから。(だってむすめに家族はいない。だから帰れる先はXしかない。誰かに頼まれたからとかそんな理由ではなく、自らの意思で。ちょっと長いお出掛けから家に戻るような感覚で、むすめは淡々と語った。)おはなし、するの。にえ、なるは、いやって。 わたし、にえ、なるために、たすけるされた、けど……てんしさま、おはなしすれば、わかってくれる、思うから。(そう信じたい。むすめの記憶のなかに在るてんしさまは、あたたかくて優しいひとであるから。想像するのは明るい未来だけ。だから声は沈まないで前を向いている。)あかりも、てんしさまと、おはなし、するの?(たぶん隣を歩いているだろう彼女のかおばせを伺うように見仰いでは、そんな問いを落とした。ただ家に帰るだけのむすめは、囮作戦などの詳細は一切理解していないゆえ。部屋につくまでの間、そうして他愛ない言葉を交わしていた。)

今波燈〆 ♦ 2021/01/25(Mon) 00:34[52]

(素直な彼女に相槌を打って「うん」とだけ返す。“外”、“家族”――今もむすめにとって、そこは帰る場所なのだろうか。もちろんすべてが終わった暁にはどうしたって向き合わなければならないのだけれど、焦がれている癖おそろしくて仕方ない。眦を下げたあわい笑みを湛えながら帰路を辿る道中、むすめなりの真摯さで以て彼女にこころを傾けよう。)そうだね、お話するのはきっと大切だと思う。だから、私も一緒に行くよ。(緊張か不安か、将又両方か。徐々に指先が冷えてゆく。震える息で呼吸をひとつ零しては胸元で両手を重ね合わせ、鼓動を続ける心臓を抑え付ける。明るい未来を語る彼女の姿を見ていれば安堵する気持ちの一方で心配は膨れ上がるのだから、こころとは本当に制御できぬものだと頭を抱えるばかり。)白亜ちゃんのてんしさまが、誰のことを言ってるのか私は知らない。だから、絶対にそうなるとは言えないけど、 けどね。どうしても、てんしさまと分かり合えないなって思ってかなしくなったら、……あったかい世界で生きていたいなって、思えたなら。ちゃんと、たすけてって言ってね。(彼女に厭われても作戦の詳細を理解していなくても、最後まで未来を信じていようって伝えておきたかった。見てみぬ振りを続けるには、少し情を移し過ぎてしまったから。純粋で真っ直ぐな彼女が傷付く未来何て来なければよい。はかなげでかわいらしい少女が、いつだってこうして明るい未来を信じて、前を向き続けてくれることを祈っていたい。他愛ない話の中で紡いだ願いの行く先を見つけるよりも彼女の部屋に辿り着いてしまう方が先だろう。ならばせめて今だけはもう少し、このあたたかな世界を共に。)

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