西風千鶴〆 ♦ 2021/01/26(Tue) 17:47[57]
“わたしには”……(言われたことを反芻し、むぅと思案顔で頬が膨らむ。距離を置かれること。彼が傷つくこと。あのおおきな手で、触れられること。)嫌だけど、……いやじゃない。理由聞いたら……答えてくれるかな。(はぐらかされてしまう気がする。それがはがゆくて、すこしさみしい。と――ふいに撫でられて不思議そうに、まるい瞳で彼女を見やる。けれど続く優しい声を聞けば、面映ゆさにほんのり頬を染め、)…えへへ。いい子、なんてひさしぶりに言われた。祈織ちゃんって、不思議なひとだね。(心地好いリズムに身をゆだね、存分に甘えさせてもらおう。彼女と話しているとまるで、湖を眺めている心地になる。おだやかで広々としていて、弱さも受け入れてくれるような。まとまらないと素直に告げる、その気取らないところも好きだった。寄りかかられて楽しげに笑い、「重たいよ」と茶化すけれど、)――…、(しずかに紡がれた「告解」に、そこに滲む劣弱に触れたなら、胸がぐっと締めつけられた。寄りかかる彼女はすこしおおきくて、でもわたしとおなじ17歳だ。だれかを想い、悩んでいる、春を待ちわびる青い魂。)…祈織ちゃんのこと、好きだよ。祈織ちゃんの人を否定しない、おおらかで優しいところが好き。爆弾処理に向いてないところも、まとまる前に喋りだしちゃうのも、笑顔も、猫舌もとってもかわいい。……もし祈織ちゃんがそう思えなくても、わたしが祈織ちゃんの分も、祈織ちゃんのこと好きでいるからね。(「舌のやけど、はちみつ舐めると楽になるよ。」無駄な雑学も披露しつつ。こちらからもえいと体重をかけ、片手をそっと重ね合わせたい。)――頑張るのは、今日からだって遅くないよ。“昨日と今日は地続きで、明日に繋がってる”んでしょう?(ちいさく首をかしいで笑う。それから繋いだ手に力をこめて、そっと彼女の双眸を見つめた。ブルーグレイの虹彩に、たくさんの想いを閉じこめて。花ほころぶ日はまだ遠いけれど――わたしも、彼女も、大切なひとも、どうかしあわせになれますように。今日と地続きの優しい未来を、一緒に歩いてゆけますように。それは広い校舎の片隅、ひめやかに捧げられた祈り。)