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(折れても祈れ、季節は巡る。)

穿月桐静〆 ♦ 2021/02/15(Mon) 23:08[130]

(当たり前の話をしよう。穿月桐静はズルをするために術式を教えられたわけではない。初めて術式を教えてもらったのは年のころ七つを過ぎた辺り。すごいことを出来るのに人に見せちゃいけない。教えてもいけない。最初はそんな幼心が燻った結果かもしれない。ズルをしてでも目立ちたかった。自分は特別なんだという間違った認識がばっきりと折られ、男は自分が嫌いになった。自分を嫌いにならないと、もっともっと嫌いになりそうだったから。おかしな話なのかもしれないけれど。)

――えっ、祈織さんの誕生日って本当に1月21日なの?!(なんともまぁ、甲斐性のない叫び声をあげたのは任務終わりの午後のこと。鳥居下にてドラムロールと共に差し出されたそれに素っ頓狂な顔をして。事の次第を聞けば頭を抱えるが、なんだか彼女が楽しそうなので良しとしよう。)来年は当日にお祝いしようね。(そういって笑った男はそれから毎年律儀に贈り物をするだろう。それは生活に必ずしも必要じゃないアクセサリーが多い。彼女の人生を彩る一つになればいいと、毎年その枝に飾り付ける。そして、この頃からじんわりと「卯木を穿月化計画」は進行していたわけだが――へたれた男の口からは、一生語られることなんてないんだろう。)

(計画の一段階目は本家への連絡。前からいらないと言っていたお見合いは本気でいらないと断る。手伝いを一人連れて帰るけれど絶対に無駄なことを言うなと言い含める。こつこつやりながら途中で我に返ってまだ後輩ではなかった後輩(?)であるパンダに「俺ってキモイかな」と相談することもあっただろう。そもそもとしてこの自尊心激低い自分嫌いが自分から告白できるのか。いや少なくとも今はまだ出来ない。せめてもう少し自信が付くまでは出来ない。情けがないと言われながらも外堀を埋めて埋めて、とうとう卒業。そして帰宅。からのこれ――「桐静が嫁さんを連れて帰ってきた!!」)祈織さんの意思も聞かずにやめて?!(いや本当に。一生懸命がんばって、いいとこ見せようキャンペーン最中なのだから。)






(夢を見ているようだ。先ほどから過去の記憶がぽつらぽつらと浮かんでは消えていく。――仄明るい室内で、誰かが自分を見下ろしている。朧げで輪郭は像を結ばず、なにを言っているかも分からない。耳をすまそうとするのに、目を開こうとするのに、全身に感覚がなく重力さえもおぼつかない。雲の上でも歩いているようだ。駄目だな、帰らなきゃいけないのに。360度すべてが闇に落ちるまでそうかからなかった。深く深く、意識の水底へ。ゆらゆら揺れて寄せては引いて、けれどどこにも――往きはしない。)



(帰るんだ。みんなの元へ。君の所へ。帰るんだ。嫌いな自分の命でも、死にたいなんて思っちゃいない。帰るんだ。惨めったらしく息をして、どれだけ情けなくたって。帰るんだ。 君が好きだと言ってくれた俺を、君の元へと帰すんだ。)

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