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髪伸びたよな〜、白亜。洗うの大変じゃねえ?

近嵐隣 ♦ 2021/02/10(Wed) 05:13[105]

(春隣の暖かな陽射しが差す窓辺はこのところ近嵐のお気に入りだった。呪術師として本格的に働き始めてもうじき一年になる。卒業後一年間のモラトリアムに補助監督として黒いスーツを身に纏ってみたこともあったけれど、後方支援は柄じゃないと気付くまでにそう時間はかからなかった。斯くして、今日も今日とて非番をいい事に窓の栈に腰を下ろし、背中に受ける温度の心地良さに微睡んだ。部屋の住人が不在でも我が物顔で居座るデリカシーのなさは気心知れた仲との自負と、それから、)おかえり、白亜。着替えんなら一旦出るよ。ちょっと相談したいことあってさ。(部屋のドアが開いたと同時に、当たり前みたいな色をしたおかえりを伝えて暫し。次に彼女と向き合ったのは手を引いてベッド辺りに腰を下ろし、同じくらいの目線になってから。普段なら意識しないひと呼吸の音がやけに耳についたのは、きっと少しばかりの緊張だった。)あのさ、お前もうすぐ卒業すんじゃん。したら、一緒に暮らさねえ?(絡めた指先の甘やかさは何処か恋人然としているのに、先刻告げたおかえりの温度はもう家族みたいな響きだったかもしれない。もう当たり前に、近嵐隣の帰る場所は乙無白亜のいるところだった。)俺さ、一年呪術師やってみて、お前がいるのを、守りたいものがあるのを言い訳にしたくねえなって思った。俺にとって、お前は足枷にも重荷にもなんねえから。(自由でいてほしいと、いつか願われた言葉が過ぎる。一番近い場所で生きていきたいと、互いに帰る場所でありたいという心緒は、大元をたどれば恋と言うよりは愛に似ていた。いつの間にか大事になっていたから、欲求ばかりが先んじて想いを口にしないまま数年間。彼女が口にするだいすきを細分化する事を良しとせず、まともに受け止めないまま現状に甘んじていたのかもしれない。伝えたいことがあると言いたげに、指先をぎゅっと握って紅色の瞳を見据えた。)好きだ。俺、お前と家族になりたい。 ……、(含羞に堪え切れなかった眼差しを一度伏せて、もう一度持ち上げた。出会った頃より少し精悍になった顔つきが、あの頃と同じようにはにかんだ。)やべえな、すっげー今更な気がする。

乙無白亜 ♦ 2021/02/11(Thu) 00:54[113]

(卒業を目前と控えれば最近の友達同士のお喋りで話題にあがるのは専ら卒業旅行の話だった。現在候補にあがっているのは美しい夜景を臨める函館かのんびり温泉が満喫できる別府の二択。前々からプランニングが進んでいたこともあり、先生から帰宅の催促を受けるころには既に話も纏まって、あとは当日を待つばかり。時刻はまだ正午を少し過ぎた頃。この時期にもなると授業も少なく、陽はまだ高いところにある。斯くして高校をあとにし自室の扉を開けた瞬、返って来たあったかい聲にすぐに破顔。)ただいま、となり。 ううん。着替えならあとでも出来るからから、へいき。それより、相談ってなあに?(玄関先で外した帽子を木製のポールラックへ引っ掛け、サングラスは靴箱の上を定位置としているケースの中へ。歩きながら寒色のニットマフラーを首許より取り去ってクローゼットに仕舞ったなら、膝上丈で揺れる制服のスカートを翻し、誘われるままベッドへと腰掛けて不思議そうに首を傾ぐ。絡めた五指の温度がいつもより少し熱いと感じたのは、きっと気のせいではなかったんだろう。)一緒に……?(ぱちり。微かに瞠った紅玉が瞬きを落とす。さんざん一緒に居たいだなんて言い続けてきたのにこのていたらくであるのは、今まで続けてきた当たり前に慣れ過ぎてしまったせいなのだろう。愛だの恋だの色恋沙汰についてはまだ無知が多い身の上なれば、大好きだと謳っておきながらその振る舞いは歳を重ねてなお手を繋ぐ程度の幼い愛情表現に留まっていた。昔っから当たり前のことであったから、てのひらを重ねることに羞恥を覚えたことはあまりない。 うそ。こうして指を絡めあって繋ぐのは、ちょっぴりドキドキする。ぎゅっと強く結びつけばことさらに、まっすぐ向けられた寒色から眸が離せなくなってしまう。それでも、)──となり、わたしのお兄ちゃんになってくれるの?(家族と聞いて。そういえば昔日兄妹のように見えるかもなんて言葉を交わしたこともあったって憶い返しながら、はにかむかおばせを見つめてくすくすと小さく笑った。「うそ」わかってる。もちろん、ほんの冗談。これで彼の緊張が少しでも解れればいいなって思っての行動。教室内で読み回した流行りの恋愛漫画には一通り目を通してきたこともあって、ここで彼の言う好きを、家族になりたいの意味を理解できないほど疎くはない。「うれしい」応えるように、きゅっと抱きしめる感覚で五指を握った。)わたしも、好き。となりがだいすき。 ……わたし、まだ家族がどういうものか、あまりよくわかっていないけど、(言葉を紡ぐたびに鼓動は速くなるばっかりで、かおばせにもほのりと熱が灯る。家族を知っているようでしらない。けれど、なんとなく。彼と共に過ごすこのあたたかな時間が、そうかもしれないと感じていたから。)それも、となりが教えてくれるんでしょう? ……違う?

近嵐隣〆 ♦ 2021/02/11(Thu) 16:58[119]

うん、一緒に。近いとこに住むとこ借りるんでも、此処で広い部屋にしてもらうんでも、そのへんはどっちでも。(すぐ隣から見慣れた顔は、つと意識してみれば出逢った頃よりも大人びて見えた。当たり前みたいに一緒に過ごして四年あまり、その変化に気付かないふりをしていた訳ではないけれど、ある種ブレーキのようなものを己に強いていたきらいはあったのかもしれない。触れ合う手の感触は慣れた温度であるくせ、任務から帰った後に充電させてと抱きしめてみせるくせ、それ以上を仕掛けたことはなかった。とは言え、いっとうの特別を示してきた意識はあった分、次の瞬間まろび落ちたのは「へっ?」となんとも間抜けな音だった。彼女の知識を確認しながら喋っていたかつてのように、そうじゃなくてさ、と焦って言いかけた声が戯れの笑みに口を半開きにしたまま中途半端に止まった。)俺今けっこー緊張して言ってたのにおまえ~~~……、(言わずとも伝わっているなんざ思ってもいないから、自白めいた感覚と共に唇尖らせて戯れに体重を彼女の方へ掛けた。繰り返し伝えられてきた好きが耳朶を震わせば、再び彼女の顔を見つめながら、僅かな紅潮の気配を頬に感じて眦が下がる。)俺も、そんなに分かってる訳じゃねえけど、だから、俺が教えるっつーか、白亜と一緒にだったら分かんじゃねえかなって思った。同じ家に、一緒に住んで、ただいまっつったらおかえりっつってくれて、…それは今もそうだけどさ、メシ作ったり掃除したり、たまに喧嘩もするかもだけどちゃんと仲直りもして、そういう風に、一緒に生きたい。(いつか。もしかしたら近い未来、彼女を残して逝かなくてはならないとしても。この行動がいつか、彼女を苦しめるとしても。繋いだ手を解いてやることは出来なかった。)って思ってりゃさ、たぶん何とかなんじゃねえかな~。俺割と、いっつもそんな感じだし!(持ち前の楽観思考で破顔。笑いの残滓がフェードアウトするなか、空いた指先が心做しか赤らんで見えた柔肌を確かめるみたいに撫ぜた。繋いだままの手をベッドに縫い付け、少しかさついた唇が彼女の赤いそれを浚うのを、きっと春色の風だけが見ていた。)

乙無白亜〆 ♦ 2021/02/11(Thu) 23:41[123]

近いところで借りられるなら、そっちのほうがうれしい。ずっとここでお世話になるわけにもいかないし、大学に進学して少ししたら、ここを出ようかなって考えてたから。(幼いままではいられない。こうして高校に通えているのも昔日彼に助けられた信徒であったり、支援団体であったり、高専の関係者らの援助があったからこそだと知っているから、ひとり立ちの準備だってこっそりとはじめていた。そんな折の一緒のお誘い、相手が彼ならばもちろん断るはずもない。ささやかな悪戯に予想通りの反応が返ればやったねバッチリ大成功とばかりに微笑みひろげて。)でも、緊張、ほぐれたでしょ?(なんて。うらめしそうな聲だってこの身に掛かる体重と一緒に穏やかに受け止めていたものの、すぐに耐えきれなくなって鈴を転がすような笑声を落としながらころりとシーツに転がった。細い白糸がリネンの上に散るも整えることすら出来ぬまま、いつもと様子が異なる彼のかおばせを想いの宿る紅玉がじっと捉えて離さない。逸らせない。)そう、かな。……ん。そう、かも。 となりと一緒なら、家族も、なんとなくわかるような気がする。これがそうなのかな って思うこと、ちょっとだけ、心当たりがあるの。(なんとなく。ほんとうに、ふんわりとした感覚しかまだ掴めていない。けれど一緒に生きていくって、きっとそれを形にしていくことなんだろうなって今までを振り返って思ったならいまひとたび重ねた手を握った。わたしがずっと、あなたのかえる場所でいられるように。)となり 、(──呼吸をとめる。はくりと震える唇が息を飲んで、そのまま。触れられた場所から生じる熱がじわじわと身体を溶かしていくみたいな不思議な感覚に襲われて、知らぬ熱情から逃れるように睫毛を伏せた、永遠のような刹那。刻がとまったような錯覚に揺蕩うなか、ふわりとはためく白いカーテンがうつつに揺れていた。)

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