乙無白亜〆 ♦ 2021/02/11(Thu) 23:41[123]
近いところで借りられるなら、そっちのほうがうれしい。ずっとここでお世話になるわけにもいかないし、大学に進学して少ししたら、ここを出ようかなって考えてたから。(幼いままではいられない。こうして高校に通えているのも昔日彼に助けられた信徒であったり、支援団体であったり、高専の関係者らの援助があったからこそだと知っているから、ひとり立ちの準備だってこっそりとはじめていた。そんな折の一緒のお誘い、相手が彼ならばもちろん断るはずもない。ささやかな悪戯に予想通りの反応が返ればやったねバッチリ大成功とばかりに微笑みひろげて。)でも、緊張、ほぐれたでしょ?(なんて。うらめしそうな聲だってこの身に掛かる体重と一緒に穏やかに受け止めていたものの、すぐに耐えきれなくなって鈴を転がすような笑声を落としながらころりとシーツに転がった。細い白糸がリネンの上に散るも整えることすら出来ぬまま、いつもと様子が異なる彼のかおばせを想いの宿る紅玉がじっと捉えて離さない。逸らせない。)そう、かな。……ん。そう、かも。 となりと一緒なら、家族も、なんとなくわかるような気がする。これがそうなのかな って思うこと、ちょっとだけ、心当たりがあるの。(なんとなく。ほんとうに、ふんわりとした感覚しかまだ掴めていない。けれど一緒に生きていくって、きっとそれを形にしていくことなんだろうなって今までを振り返って思ったならいまひとたび重ねた手を握った。わたしがずっと、あなたのかえる場所でいられるように。)となり 、(──呼吸をとめる。はくりと震える唇が息を飲んで、そのまま。触れられた場所から生じる熱がじわじわと身体を溶かしていくみたいな不思議な感覚に襲われて、知らぬ熱情から逃れるように睫毛を伏せた、永遠のような刹那。刻がとまったような錯覚に揺蕩うなか、ふわりとはためく白いカーテンがうつつに揺れていた。)