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【4】(思うままに 在るがままに)

御調久遠 ♦ 2021/01/21(Thu) 01:30[88]

(二級からは請け負う任務も単独での行動が許可されていることもあって、多忙ではあったが協調性を強制されないというだけでかなりストレスフリーになった。とはいえ御調の術式はどちらかというと補助・サポート特化の術ではある為なかには他の術師と協力して任務に当たるようなものもあったけれど、それだけ相手にする呪霊のレベルが高いとなれば重畳。呪術師に休息はない──といえるほど現在進行形で実績を積み重ねている男は、時間を見つけては少女の元を訪ね「オレが居ない間、ハーブの水やり頼まれてくれね?」と伝えるようなことはしたものの、音沙汰なく数日高専を開けるなんてことはザラ。五条悟に昇級の言祝ぎを受けて以降少女と碌に言葉を交わせもしないまま、愈々正式に護衛任務が解かれる日を迎えてしまった。ここ最近はずっと“噛んで”いたからか喉がやけに渇く気がして、グラスに注いだミネラルウォーターを煽った。今日は任務の話しも来ておらず、終日高専で過ごせることになっている。薬の精製もしたいところではあったが、護衛任務が一区切りを迎えるというのに少女に逢わず部屋に籠っているだなんて冗談だろう。)イマナミ。起きてっか? ミツギサンが迎えに来てやったぜ。(斯くして戌の刻。いつかのように少女の部屋の扉に脚で無遠慮なノックをかましては、相変わらず高慢に宣った。少女が貌を出してくれたなら「はよ」と薄笑みと共短い挨拶を挟んで。)つっても特別行くトコなんてねーンだけどよ。 ま。久々にゆっくりしてーって思ってな。オマエ、なんかイイトコ知ってる?(高専在中歴は男のほうが長い癖、このいいようである。軽い調子で笑った。)

今波燈 ♦ 2021/01/21(Thu) 02:23[89]

(今思えばハプニングがあって良かったのかもしれない。正式な知らせを受けた時、むすめの顔ばせには動揺の欠片も見せることなく「分かりました」と共に「これまでありがとうって御調にも伝えてください」と素直な大人ぶって笑って頭を下げることが出来たからだ。別れに向けてこころの準備をはじめていたむすめだが、数日ののちには再び岐路に立つことになる。秘密の囮作戦。怖気づくこころが無かったとは言わないけれど、Xを放っておけないと思っていたのはむすめも同じだったから否を唱えるつもりもなかった。好条件のこともあって彼の話を持ちだされるより先に曖昧にも結論を出そうとしたものの、彼の名を聞いて揺れていた決意も固まる。さりとてこれがすべて他言無用の作戦ともなれば一つ返事で頷くには些か不安が残るから「必要に応じて、色々相談させて貰えるなら」と一言は付け加えておくことも忘れずに。それからまた数日のうちにむすめはXに逃げ帰る設定を保つためにXから着て来た洋服を土砂で汚し、ビニール袋の中にしまって見付からないようクローゼットの中に隠した。その最中、彼と邂逅叶う場面があれば軋む胸を笑顔で覆い隠して「分かった、気を付けてね」と行ってらっしゃいの挨拶で見送ったことだろう。心配も、不安も、寂しさも、全部笑顔の中に溶かして。――斯くして迎えた正式な護衛解任日、響き渡ったノック音が過日の再現のようで思わず飛び起きたことはひみつにしておきたいところ。髪を手櫛で整えつつ、ゆっくりと扉を開ける。)おき、た。おはよう……と、おかえりなさい。久しぶり?元気そうだね? そういうのは私より御調の方が詳しいんじゃない?って思うけど……そうだなぁ。部屋、……は流石にだめか。ガーデンハウス行く?ハーブの様子も気になるでしょ。(感謝を告げると別れが強まる気がして、思わず呑み込んだ。往生際が悪いにもほどがあると理解しながら。)

御調久遠 ♦ 2021/01/21(Thu) 21:55[90]

(本日を以て男が護衛の任を解かれることは既に少女にも周知されていると聞いたから、唐突に部屋を訪れた理由は貌を見ておきたかったからっていうのもある。階級がひとつあがっただけで斯くも多忙を極めるなれば十分に務められもしない任務にいつまでも胡坐を掻いているつもりはない、と理解はしているのだけれども、何時まで経ってもモヤモヤしている部分が晴れないから気持ち悪い。けれどもいつかの朝を彷彿とさせる光景がそんな濁りを洗い流してくれるから、自然と貌も綻ぼう。)まあな。そーいうイマナミも案外元気そうで安心したぜ、てっきり「寂しい~」とか啼いてるかと思ったわ。(すぐに少女を揶揄いたがる癖も変わりなく。ふはりと相好崩しながら、変わらぬ日常を謳歌したがる。護衛が一区切りつくだけであって少女がここを出て行くという訳でもなし。今生の別れというわけではないのだから、少なくともこちらからわざわざ「最後」を切り出すつもりはなかった。丸投げした問いに行き先が返ってきたなら提案には有り難く頷いて、ガーデンハウスへ向かって足を向ける。)そーいや水やりしてくれてたっけな。助かるわ。 前には家入サンにお願いしてたンだけどよ、あのヒト結構忘れっからな。つーワケでオレが居ない間はまた頼みてえンだが、(横暴な男にしては珍しく伺う形になったのは、護衛の任が解かれることによって多少なり立場が変わる所為だろう。傍らか、或いは少し後ろを歩いているであろう少女を見遣る。ささいな表情の変化も、なるべく見逃さないように。)

今波燈 ♦ 2021/01/21(Thu) 23:04[91]

(囮を承知した日から、ずっと正解を考え続けている。敵を騙すには味方からと言うし、そもこういった作戦は極力知る人数を絞るのが定石だ。この安全基地から勝手に出ていったと、後日むすめの姿がないことを知るだけならまだよい。しかし、もし彼が任務に参加してむすめの姿を見つけたら?――護衛である今とそうでない未来とを天秤に掛けるのもおかしな話だが、例え自惚れだとしても少しでも動揺を誘うのは避けたい。靄も寂寞も笑顔の中に溶けたまま、顔ばせにあらわれず済んだのは幸いと言ってよかったかどうか。)まぁね。なあに、言って欲しかった? それとも、寂しかったのは御調の方?(双眸を細めてちらと窺うように彼を見遣って揶揄を返す。「あ、ちょっと待って」と移動する間際になってポケットの中にドライフルーツの入った袋を入れ、コートだけを羽織って足早に彼を追い掛けよう。)――、結果も見てないのにいいの?私も忘れるかもだし、信頼できる友達とかに頼んだ方が確実だよ。(極力嘘は吐きたくなかったがために返す言葉に詰まって、刹那反応が遅れたものの彼の背中を見つめて歩みを続ける。ふと視線が交錯すれば笑みは絶やさぬまま小首を傾いで見せたのち、)あ、ほら御調。着いたよ。 そうだ、今日は私がハーブティーを淹れるよ。この間飲んだやつ、結構おいしく淹れられたから前のお礼も兼ねて。(お礼のお礼だ何てループ。彼との思い出を作りたくない気持ちと思い出を欲しがる気持ちとがせめぎ合って勘繰られないよう、何でもない日常の中で軽口めいた口吻に置き換えた。)

御調久遠 ♦ 2021/01/22(Fri) 23:40[92]

(高専関係者が、延いては五条悟さえ把握できていないことを一学生の身が察せる筈もなし。少女が貌に表さぬのならばなおのこと、今日はただの日常の一欠片でしかない。少女と斯様に言葉を交わすのも久しく感じるほどには護衛の任に専念していた頃より会う回数も減ったものの、会えるのならばどうとでもなろう。揶揄いに揶揄いが返って来たなら首へと手をやって、うんざりしたようすで遠い目をした。)別に。 ンなこと思うヒマもなかったっつか、にしては呪いのレベルも前に比べりゃマシにはなったっつー程度で拍子抜けだったってかよ……。(多忙であったのは確かだし、呪いの階級があがったことについてはこれまでと比べれば満足している。されども男の退屈が晴れることはなかった。やれやれって肩を竦めながら、寂しいかとの問いに返す返事は存外あっさりしたものだった。少女と言葉を交わす今があまりにも当たり前過ぎて、それが失われるかもしれないだなんて考えてもいない。謙遜めいた音を耳が拾えば、まさかといったようにふはりと笑う。)イマナミは忘れるとかしねーだろ。(さも当然のことのように吐き出した音は、少女への確かな信頼だ。出会ってまだ一ヶ月も経ってはいないけれど、重ねた月日は少女の人柄を知るには十分だった。)へえ。ンじゃ任せっかな、オレはハーブの様子見てくるわ。 あ。戸棚に入ってるティーポットとかカップは好きにしてくれてイイかンな。(折角なので今日は少女の好意に甘えようと、ひらりと手を振ってはハーブ園へと一旦姿を消すだろう。とはいえそう時間も掛からず、ハーブティーが色付きだす頃合いに幾つかのハーブを手に戻ってくるはずで。)

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 00:30[93]

(返す言葉に迷うのは、やっぱり心配が先に勝つからだ。あわれみでもかなしみでもなく、ただひたすら心配で不安なだけ。双眸細めて眉尻と共に視線を落とし、胸元の下で絡めた両手指をゆるく握る。作戦後は救出されると聞いているけれど、ここに戻って来るとまでは話されていない。向けられた信頼に応える術がないから、答えらしい答えを見つける前に差し伸べられたすくいの手にはかろやかに乗った。「それじゃ、また後でね」と解いた手指を伸ばして手を振ることで彼との別れに代えたなら、ガーデンハウスの中へ。思惟は止めぬまま黙って手だけを動かし、手慣れたようにハーブティーを淹れる。ここ数日よく飲んでいたのはローズヒップだったけれど、本日選択したのはレモングラスのブレンド。流石にみずから調合することは出来ないから市販のものだけれど、カップの底にはドライフルーツを添えて。)あ、お帰り。丁度準備も出来たとこだよ、座って座って。(再び邂逅叶った時にはすぐに笑顔を浮かべてカップを一つ彼の方へ並べる。お茶菓子は準備していない代わり、先程カップの底に敷いたドライフルーツを小さなお皿に乗せて中央へ添えればむすめも手近にあった席について彼に向き合おう。)……ねぇ、御調。今日のこと、って言えば良いのかな。私のこと、どこまで聞いてる?(カップに手を伸ばしながら、手探りに問いを投げる。静かな声だった。取っ手を摘まんで、水面を揺らして彼の方に視線を向けることなくそのままカップに口を付ける。声音が震えないように穏やかな顔ばせを保つので精一杯だった。)

御調久遠 ♦ 2021/01/23(Sat) 01:18[94]

(常に見据えているものがある。けれどそれを為せていたならば、今男はここに立ってはいないだろう。我ながら矛盾している。幼少期からの習慣だからと言い訳をしてハーブに水をやるのも、こうして気に掛けるのも、その内のひとつだった。レモングラスの爽やかな香りは男も好むものではあるが、その効能は今の躰には皮肉なものだろう。数日毒に侵され続けた躰の消毒にはいい薬草だと「わかってンじゃん」なんて少女のチョイスに高慢な感想をひとつ。収穫したハーブの茎をゴムで括って作業台へと置けば、促されるままに腰掛ける。)……そりゃオレの台詞だわ。 オマエ、聞いてンだろ。護衛任務のコト。今日で最後だとよ。(少女のことは知らない。ただ、護衛任務が本日を以て解かれるということは、既に周知をされているということくらいしか。ゆえ訝しそうに少女を見遣りつつカップへと口付ける。ふわりと抜けていくハーブの香りは、心を慰めてくれるようだった。)つっても全く会えなくなるワケじゃねーだろ。 ま、一緒に外出とかは厳しくなっちまうかもしれねえが、オマエのことは呪術師最強なンて言われてるオトコが見ててくれンだ。安心しな、心配はいらねーよ。(仮にXの信徒が襲ってくるようなことがあっても、あの五条悟が高専に居る限りはなんとかなろうという信頼。少女の不安は恐らくXに纏わるものだろうと勝手に結論付けてはそんなふうに話を振って、)それとも、他になんか心配があンなら今の内に言いな。聞いてやっからよ。(机に片肘をついては軽く首を傾いだ。)

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 02:11[95]

私が飲んでたのはローズヒップだったんだけど、御調は甘酸っぱいのとかより爽やかなやつの方が好きかなって思って。当たったなら良かった。(効能まで考えての選択と言うよりは唯の勘だった訳だけれど、どうやら気に入って貰えたようだと胸をなでおろすように笑った。訝し気な視線も慰めとも励ましともとれる言葉も、こころを擽ってならない。喉を潤すついで、咥内にドライフルーツを招き入れて時間稼ぎをしながら言葉を選ぼう。「そうだね」と相槌を打ったのち、小さな音を立ててカップをソーサーに置いた。)聞いてる。大丈夫だよ、……大丈夫。私のことは心配してない。(嘘じゃなかった。彼の選択に対する靄はさておき、不安はあれども心配はしていない。心配なのは、むしろ――。「ありがと」とあわく笑みを携えて、彼に視線を戻したならひとたびの瞬きののちに深い呼吸をひとつ。)私ね、行くところがあるの。これから暫く生活の保障もしてくれるって聞いたし、行かない理由もないから。(ここに留まり続ける権利と理由。前者は求むればこそ行かねばならないし、後者は気付かぬ振りを続けて来た。両手を膝の上に置いて、おだやかに告げる。)だから、私は行かなくちゃ。出来るだけ早くに行かないといけないし、明後日には出るつもり。(やはり、突如むすめが姿を消せば要らぬ混乱を生みそうだ。ならば、伝えられるものは伝えよう。だから、ますます会い辛くなっちゃうねって。一時であっても区切りとしての別れを告げなくちゃいけないのに、眸子が潤むからそれを引っ込める方にばかり夢中になって言葉にならない。その甲斐あってか涙に濡れることも無ければ声が震えることも無かっただろうけれど。)

御調久遠 ♦ 2021/01/23(Sat) 11:38[96]

ローズヒップも嫌いじゃねーンだが、香りねえしな。味もわかンね──…(ついまろび出てしまった油断。既に遅いかもしれないが、言わんとしていた言葉に気付いた刹那ハッと頭が冷えたなら、今更ではあるがぐっと言葉を呑みこんだ。少女の言葉で実際に聞いていると知らされれば、わかっていたこととはいえばつが悪そうに頭を掻いた。繰り返される大丈夫を聞けば殊更に、最後まで護衛を務めあげられなかった現実を突き付けられるようで胸の内でぐるりと不満が唸りをあげる。)……行くところ?(ただ、穏やかに切り出された想定外の言葉には間抜けにもきょとりと瞬いた。生活の保障、明後日には出て行く。高専という保護下にありながら、どうして。それにそのような話しがあったなら、教師や関係者から先ず自分に話しが回ってくるだろうという自負もあった。唐突過ぎる“都合のいい話”を訝しまぬほど、御調は能天気ではなかった。)オマエ、中学ン時に攫われてきたつったろ。その口振りからすっと、行くところってのはテメエの実家じゃねーンだろ。 生活の保障してくれるってンなら、高専もおんなじだろ。なんで出て行く。(いずれ少女がここを出なければならないことはわかっている。なれどまだ、このタイミングではない筈だ。Xという不安要素がまだ残っている状態で、折角助け出した生贄を、高専側とてこのタイミングで放り出すのは可笑しい。)オレもバカじゃねえ。オマエのことだ、誰かになんか言われたんだろ。 言えよ。誰に、なんて言われた?(一方的に捲し上げる。責めるような真似はしたくはなかったが、されど苛立ちを湛えた黄昏はどうしたって、鋭く少女を睨めつけた。)

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 13:51[97]

……どういう意味?(意図をはかりかねて一言で問うた。別段おかしな話でもない、ハーブティーそのものが味もはっきりしなくてよく分からないと話す人がいるのは知っている。だから、むすめが違和を覚えたのは言葉の続きが消えたこと。眸を眇めて彼の答えを待つ。気まずそうな彼には言葉も無しにやわらに笑みを返して。)御調、そんな顔しなくて良いんだよ。御調が呪術師になったのは、私を守るためじゃないんだから。そうでしょ? それより、御調の方が私は心配。私がいてもいなくても一緒だとは思うけど、無茶しがちだろうしね。(何てことない風を装って流れるように言葉を放つ。苛立つような視線に怯まなかったかと聞かれれば嘘になるけれど、だからと言って声が引きつるような真似はするまい。ゆるく首を横に振って、深く息を吐く。)今話した以上のことは何も。高専の事情は私も知らないけど、そもそもいつまでもここにいられる訳じゃないのは分かってたことだもん。これからの話をした時にその提案があったから受けただけ。ただ、どうせ出ていくなら前々から気になってたところに行こうと思って。(感情を乗せず、事実を語るように。ここで縋れば可愛げがあるのかもしれないけれど、これで安全を買えるなら安いだろう。いつの間にか凪いだハーブティーの水面にゆっくりと視線を落とし、落ちて来たサイドの髪を耳に掛ける。何事かを語ろうと開いた口が一度だけ空気を食んで。)でも、もう御調には関係なくなる話だよ。私のお守りから解放されて、また好きに生活できるようになる。 ……だからね、御調。出ていく前に、御調にあえて良かった。ありがとうって、ちゃんと会って話したかったから。

御調久遠 ♦ 2021/01/23(Sat) 15:38[98]

オマエだってンなに味わかンねーだろ。(そも味覚がないものだから、ハーブティーが一般的にどのように親しまれているのかなんてわからない。とはいえ神妙な話にならぬよう冗談めかして軽い調子で言葉を投げた。誰かを守る為に術師になったのではない、それは確かにそうだ。されど一度乗った舟、それが喩え泥舟であったってこちとら最後まで付き合うと決めていたのに。こちらに向けられた気遣いだってこんな性格だから素直に受け取れなくって、ハッと小さく鼻で嗤って一蹴した。)誰に向かって言ってやがる、オマエに心配されるほど弱かねーよ。(何故なら男にとってこの世界はイージーで、欠伸が出るほど退屈なものだ。ガチャンッ ソーサーに置いたカップが強めの音を立てても気にせずに、気遣いのない言葉ばかりがまろび出る。)ほんッッッとにかわいくねーオンナだな。勝手が過ぎンだろ。 てのはオレも言えた柄じゃねーが。ハァ~~~~……ンでこーなるかな。(元より人に好かれるような人間であろうと思ったことはない。すべての物事に興味がないゆえこそ、くるもの拒まず去るもの追わず、そんな精神で生きている。少女がいつの間にか自分で道を選んでいたなら、それは恐らくいいことなのだろう。それが自由だ。男が強制するものではない。くしゃりと前髪ごと髪をかき上げては、参ったようなどうしたらいいのかわからないような複雑な面でそっぽを向いた。本当に、どうしてこんなに感情を持て余すのかわからない。)……けどま、いずれはこーなるってわかってたしな。 でも言っておくが、オレは会えてよかっただなんてクセー台詞ぜってー言わねえぞ。(吐き捨てた一言は、子ども染みていた。)

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 16:37[99]

ローズヒップとレモングラス位分かるよ。(味に頓着しないひとがいることも知っているだけに、減らず口を叩く他反論の術がない。嫌われることを覚悟で確信のないことに突っ込んでいけるほど勇敢でも無い癖して、訝し気な視線を逸らすこともしない辺りむすめは往生際が悪いのだろう。彼のこころも知らぬまま、紡ぐ言葉は極力素直な色をていして。)心配されるのは弱いからなの? 御調が強くても弱くても心配なものは心配なんだから仕方ないじゃない。(大きな音に思わず肩を跳ねさせることがあったとしても、それで怯んで口噤むようなむすめではなかった。ただ、やっぱり返す言葉がなくて「そうだね」とあわく笑みを浮かべて同意を示すことに終始する。)分かってる。御調には色んなことをして貰ったのに、私は何にも返せなかったから。せめてお礼を言いたかっただけなの。 ごめんね、御調。でも、今日まで守ってくれたのも、気に掛けてくれたのも、ありがとう。もう、私は大丈夫だよ。(おだやかに、やわらかに。笑みは絶やさぬまま、紡ぐ音色にしあわせの色を乗せる。何もかも、まるで納得済みであるかのように。みずからを騙せずして、彼を騙せるとは思っていなかった。それでも視線があわぬようなら、小さな笑い声を上げてちょっとした揶揄を加えてしまうつもりだった。)御調が言ってた通り、ここを出ていったからって永遠に会えない訳じゃないかも知れない。けど、中々会えなくなっちゃうことには変わらないんだよ。ここで会えるのは最後かもしれないんだから、ちゃんと顔を見せてくれたって良いじゃない。 それともなあに、私がいなくなるとやっぱり寂しい?(――寂しいのは、どちらの方やら。)

御調久遠 ♦ 2021/01/23(Sat) 18:49[100]

オレだってそのくらいわかるっての。(香りの強いレモングラスとローズヒップは間違えようがない。別に知られて都合の悪いものではないのだが、自分の秘密を素直に喋るような男でもないもので。訝しそうにこちらを向く視線も見るなとばかりにしっしと手を振って散らしてしまおう。)じゃあ訊くけどよ、そんなにオレが心配な理由ってナニ?(弱いと思っているわけではないというのなら、なにがそこまで少女を心配に駆るのかがわからない。不思議そうに首を傾げた。)なあ。その「私は大丈夫」ってのヤメロ。 うぜえ。(まるで氷の棘を音にしたようだ。痛いほど冷たくて、ひとを傷付けるだけの言葉。先刻溜息と共表に吐き出したものが再び腹の底で渦を巻いているのがわかったから、熱を冷ますみたいに首へと手をやった。気に入らないのは少女が選んだ道ではない。たぶんその口吻が気に入らないのだ。抗わず、諦めて、受け入れる、本当は納得なんかしていない癖に。嘗てそうだったからわかる、なんてとんだ知ったかもいいところだろう。父の死に顔が頭を過れば、荒れる感情を鎮めるように瞼を伏せた。)オレの尊顔が見てえならドーゾご自由に。ただしソッチ向いてやる義理はねえがな。  あーーーー、今すッッげえ呪い祓いてえ。クソッ……どっかにリンデンなかったっけか……。(寂しいかの問いかけはなにも聞いてませんとばかりにガッツリ無視を決め込む。こういう時は気分を変えるのが一番だと席を立ちあがったなら、ごそごそ乾燥ハーブを収納した棚を漁り始めた。なんかもう今は呪いを頭から喰らい尽くしたい気分だった。)

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 20:05[101]

さっき分かんないって言ったじゃない。(無限ループだった。しかし、食い下がったところで口を割る素振りも無ければ溜息ひとつを残して意識をずらそう。)御調は私の質問に答えない癖に、私には御調の質問に答えさせるんだ。別に良いけど。私にだって分かんないもん。 それとも何、心配しちゃいけない理由でもある?(正確には、分からないふりを続けている。言葉にしてしまえば引き返せないと分かっているから。冷たく響く棘には身を強張らせたものの迷うように視線を彷徨わせて口を開く。それこそ風にかき消されてしまったっておかしくはないほどちいさな「どうして?」の一言。)だって、そうでしょ?護衛はもう必要ないって判断されたのは、私がもう大丈夫だって言う証拠じゃない。 私が御調の気にくわないことを言ってるんだろうなって言うのはわかるけど、何でそこまで怒ってるのかが分かんない。ねぇ、御調。そんなに言うなら顔を見せなくてもいいから、……ちゃんと見なくてもいいから、隠さないで、言ってよ。(許される限り、一緒にいたかった。そんなむすめとは裏腹に勝手に護衛を押し付けて、勝手に終わらせる。彼が護衛を続けたいと思っている訳じゃないと分かっていたから、最初は唯単純にその事実に対して子どものように拗ねているだけだと思っていたけれど、考えてみれば相手は成人男性だ。困った風に眉尻を下げて、とまどうように声を震わせながらスカートをきゅうと握り締める。彼の背中を視線だけで追って、近付かない代わりに出ていくこともしなかった。どうしたら良いのかが分からなかっただけかもしれないけれど。)

御調久遠 ♦ 2021/01/23(Sat) 21:54[102]

(過日少女に食べ物を送ってもらった記憶を思えば、今更「味覚がありません」なんて暴露したらそれこそ気を遣わせるかもしれないゆえ男はだんまりを決め込んだ。わざわざ要らない不安要素を植え付ける必要はない。)違うな。オマエがオレに怖気づいてるだけだろ。(拒絶する領域は確かにある。なれどそこに踏み込むも踏み込まぬも、こちらが強制するものではない。拒絶しているのだからなおのこと自ら招き入れるわけがないのだから、それを言われる筋合いはないときっぱり突き放した。「じゃあ勝手にしろよ」とはこれ以上言い争っても埒が明かないからだと踏んでのこと。中身の伴わない同情や心配をそそがれ続けた身としては、理由もない心配はより一層煩わしく纏わりついている。ハーブ棚から乾燥リンデンの瓶を引っ張り出しながら、背中で少女の言葉を聞いていた。隠さないで言えの音に、まずは溜息が口を零れた。)……オレがオマエの護衛から外されンのは、単に二級に昇格して仕事が忙しくなったからだ。 オマエに護衛が要らねえだなんて誰が言ったよ。上層部の連中か?五条サンか?それともテメエの判断か。(少し前、後輩と似た話をした。ほうっておいてあげればいい、そう後輩が零していたことを覚えている。今更、こんな中途半端な形で手を離すのはごめんだった。なれども渋々頷いたのは、彼女は信用に足る男が見てくれると思っていたからこそだ。持っていたハーブの瓶を割らんばかりに強く握る。ピシッ、硝子の軋む嫌な音がした。)それとも、もう放っておいてくれってことなのか。 それならそう言えよ、遠回しに「大丈夫」だとか「ありがとう」だとか綺麗な言葉で片付けようとすンじゃねえ。

今波燈 ♦ 2021/01/23(Sat) 23:03[103]

(驚きに双眸をまろく見開いて、思わず盛大に眉を潜めた。喧嘩したくなくて必死におだやかな声音を装っていた身としては「は?」と声を漏らしたのは大きな誤算と言える。彼に聞こえていなければよいのだけれど、必死に思惟を巡らせていればそれに構っている暇もないだろう。視線を凪いだ水面に落とし、口元にゆるく握った右手拳を添える。うすぼんやりと見えた答えを辿るようにそうとテーブルに手をついて立ち上がったなら、向かうは彼の元。困ったように眉尻を下げながらも苦みを含んで浮かべたちいさな笑みと共に「それ、」と続けた言葉は、彼の背から二歩分の距離を空けて。)御調が拒んでても、私が本当に知りたいなら踏み込んで来いよって聞こえる。御調は素直じゃないんだから、怖がってばかりいるなよって。(当たっていれば重畳、外れているなら「そっか」と引き下がる心算。何時の間にかたいせつになっていたからだとか可愛げのある台詞を紡げばそれで終える癖して「そうする」くらいしか紡げない可愛げのなさは健在だっただろうけれど。)誰かな、……直接はっきりは言われてないから私かも。 でも、本当に必要なら護衛は変更になるだけなんじゃない?(連ねる答えには極力嘘は交えない。そうすることで信頼性を持たせたいのは勿論のこと、誠実だった彼に極力そのままの気持ちを伝えることこそが感謝に通ずると信じていたからだ。痛いところを的確に突いて来る彼の台詞には思わずくちびるを引き結んで視線を落とす。互いの安全確保のために放っておいて欲しい気持ちも確かにあるけれど、元を辿ればそうしなければ、終わらせなければ諦めが付かないと言う身勝手な理由だ。――長い沈黙だった。)

御調久遠 ♦ 2021/01/24(Sun) 16:13[104]

(少女は自分よりも歳下の、成人未満の子どもだ。とはいえ言動はきっとずっと男のほうが子ども染みていただろう。背に近付く気配を感じはしたが、男がそちらを振り向くことはなかった。)調子乗んなよ。 オレは人の顔色伺って嫌われねえように振る舞ってるオマエの在り方が気に入らねえって言いてえだけだ。(突き放すような厳しい言葉なれど、その声色は存外やわらかい。だが世渡り上手とはそういうものでもあるのだろう。遠慮なんて生まれ持たなかった男より、傲慢に我が道を生きるより、周囲に気を配れる少女のほうがずっと常識的で、平坦な人生を歩けるに違いないのだから。)……つまりオマエの意思で、もう護衛は要らねえって判断して、ここを出てくって決めたワケね。(少女が明確に示していない以上、誰から話があったのかは知らない。少女は家に帰れるわけでもなく、ただ保護される先が変わるだけ。それが果たして少女の為になるのかなどわからぬが、本人が遠回しに放っておけと叫んでいる現状諦める他ないだろう。頭痛を感じて目頭を押さえては、フーーーッと息を吐き出すと共、硝子瓶をいじめていた力を抜いた。奔る亀裂を見遣って、きゅぽんとコルクを抜く。取り出した乾燥リンデンを新しいティーポットに放って、電気ケトルのスイッチを押した。)後悔すんなよ。(少女が決めた道だ。はじめて少女を連れ出した折とおんなじように、強制するものではないと改めて思い直す。縛られる不自由は男も理解しているから。ゆえもうこれ以上干渉はしませんの意を、後悔するなと短い言葉で纏めて告げた。)

今波燈 ♦ 2021/01/24(Sun) 17:31[105]

ほんっっと分かりづらいなぁ。ついでにすごい我が儘。 ……踏み込んで来いよって言ったのは御調なんだから、後悔しないでよね。却下は聞かないから。(大袈裟に息を吐いて憎まれ口を紡いでは見たものの、存外やわらかな音色を奏でる。都合のよい解釈も本当に彼が厭うなら口を噤むつもりでいたけれど、そうでないなら彼の意思で伝えてくれるまで――ゆるされるまで、この場で佇んで待っていよう。むすめはもう「教えてよ、御調のこと」と一歩を進んだから。)嫌われたくないんだもん、仕方ないじゃない。 ……でもね、本当はわかってるの。ずっとそうだったから。(眉尻を下げたまま緩慢に瞬いて見せたのちには視線を彷徨わせ、声が震えぬように紡ぐ。手持ち無沙汰に横髪を手でかき上げては耳に掛けることを繰り返して。)でも、仕方ないじゃない。どうしたらいいのか、わかんないんだもん。そのまんまの私でいれば可愛くないって言われるし、頑張って気を遣っても偉いねって言われるだけで可愛くはなれないし。(それでも、むすめが迷いながら選んできたのは後者だ。前者なら遠巻きにされて終わるけれど、後者なら嫌われることも無い。熱量を持たず、諦めた風にでもしなければ納得して生きて来られなかった。その先で見つけた、たいせつなひと。たったひとり、  になってしまったひと。どんなにこのこころが痛んでも、みずからの意思でそのひとのためになると――その安全の糧になると信じられるなら。)分かってる。(どんなに不安でも、――ほんとうは、はなれたくなくても。むすめが持ち得る少ないものの中で、ようやく彼に返してあげられるもの。「しないよう、頑張る」とはっきりとした声音で紡ぎながら、何とか笑って見せた。)

御調久遠 ♦ 2021/01/25(Mon) 00:19[106]

ウルセー。オレはイマナミと違って素直なンだよ。(なんて開き直ったように鼻で嗤った。我儘、傲慢、上等だ。思うままに、在るがままに振る舞うだけのこと。少女だってそんなふうに生きればいいと思っている。なれど生憎と悩み相談を親身に聞いてやるような男ではなく、滔々と語られる理由には薄情にも「ふーん」と無関心な相槌を打っていた。仕方ない、わからない。少女の胸の内を聞き終えてもその態度は変わらず、気怠そうに首へと手を持っていく。)アー。それだよ、それ。 嫌われたくねーとか、可愛くなれねえだとか、ンなふうにゴチャゴチャ難しく考えて行動してっからイケねえンだよ。(トントンと指先で眉間を小突きながら溜息を吐き出す。やれやれって高慢に肩まで竦めてみせながら、切れ長の黄昏が少女を射抜いた。口を挟まれるその前に、言葉を続けてしまおう。)もっと素直に、在るがままに、心のままに生きりゃイイ。 誰にナニ言われようがどーでもイイじゃねーか。誰かに気ィ遣って、我慢して、諦めて、テメエの心偽って苦しくなるくれーなら、オレみてえに自由に生きたほうがよっぽど楽だと思うがね。(息苦しい。そうだ、前々からずっと少女のことを、生き苦しそうだなと感じていた。これまでの生き方を否定するつもりはないが、どうしたらいいのかわからないというのなら、違う道を選ぶことも出来ると教えるのも年長者の務めだろう。とはいえ言っていることは人格破綻者のそれで、大概酷いのだが。)よし。 ンじゃハーブティーのおかわりは要るか?(湯が沸いたならティーポットにそそぎながら問いかけひとつ。そこで漸く少女のほうを向いた。常と変わらぬ気怠げな貌がそこにある。)

今波燈 ♦ 2021/01/25(Mon) 01:08[107]

素直なのか捻くれてるのかが判断つかない感じだよ、どっちかって言うと。 気に入らない私の護衛が終わって良かったじゃないって言ってあげようと思ってたのに。(鋭い視線が注がれようとも、もうこわくはなかった。彼の言葉を頭の中で縷説しながら、口元にゆるくにぎった拳を添えて思惟を巡らせる。その最中でも「世の中全部が御調みたいな訳じゃないんだから」と叩き続ける悪態の可愛げのなさと言ったらないが、「ひとが真面目に話してるのに」と怒って彼の耳を引っ張りに足を進めなかっただけむすめなりに冷静なつもりだった。)御調は今、自由で楽?(諦めることは楽だった。幾ら苦しくてかなしくなっても、傷付くことはない。体裁さえ整っていれば一方的で独りよがりの世界で生きていても困らなかったし、孤独にだって気付かぬふりを続けていればよかった。――けど、気付いてしまった。過日、聞き耳を立ててしまったそのたまゆらに。「でも、」そんな甘えも頼りも今更じゃないかってくちびるを開いたその刹那、振り返った彼の顔ばせを見つめて大きく瞬けば言葉は彼方へ飛んで行ってしまった。ゆっくりと手を下ろしてはそのまま片手肘にもう片方の手を添えて。)じゃ、貰おうかな。それはどんな味?(聞きたかったことも伝えねばならないことも、結局纏まらぬままなら縋る術もない。息をひとつ零して話題に乗ることを選んだなら彼に背を向けて席へ戻り、残っていたハーブティーを飲み干さんと片手でカップを持って一気に呷ろう。それからカップをソーサーに置けば、小さな音がふたりのあわいに響いたに違いない。)

御調久遠 ♦ 2021/01/25(Mon) 14:18[108]

あ? うざってえし気に食わねえとは思ってっけど、面倒みねえとは言ってねーだろ。むしろ今オマエをほっぽり出すほうが気分悪ィわ。(少女の言うように素直というより捻くれているのほうが正解かもしれない。ずけずけと配慮を知らぬ口吻で宣う音は溜息と共に紡がれる。それでも少女の意思を尊重するともう割り切った。揶揄めく声は先刻と比べてずっと軽いのがその証左。今を問う音にはシニカルに嗤って、)ま。やりてーように生きてっからな。自由だし、楽だぜ。つまんな過ぎて欠伸が出るくれえにな。(相変わらず人生退屈で、生に価値なんて見出せない。それでも家に、血に、祖父に、母に囚われていた頃と比べたら今のほうがずっと自由で呼吸が楽だ。そのぶん少女を含め周囲には結構迷惑を掛けているのだが、当の男はどこ吹く風。砂時計を引っ繰り返しながら、味への問いにはゆっくりと瞬いた。)オイオイ、味で答えろってか。オマエもだいぶ性格歪んできたな。(ハーブティーは味がはっきりしないだとか先刻言っていた癖に、と。こりゃワザと意地悪な質問をしてきているなと察すれば減らず口と共ジト目を向けはしたものの。)リンデンはカモミールほどじゃねえが、マスカットに似たほのかな甘い香りが特徴的だわな。要は飲みやすいハーブってコト。 あとは飲みゃわかンだろ。(ザックリ過ぎる説明だが香りについてはこれで恐らく伝わったはず。味はわからないので当然のように割愛。砂時計の砂が落ちたのをみやれば、ポットを手に少女の許へ歩みを進めた。)効能は鎮静、緊張緩和。高血圧にもよく効くらしーぜ。 今のオマエにも必要なハーブだな。(意地悪に笑って、空いたカップへと注ぎ入れた。)

今波燈 ♦ 2021/01/25(Mon) 17:13[109]

調子良いなぁ。 そんなこと言って、(誰かに任せようとした癖に。 掘り返しそうになった靄を慌てて畳むように息を呑んだ。味覚のこともさることながら、聞きたいことには答えてくれない癖に言いたいことは口にする。近いようでやっぱり遠くて、羨望とも傷みとも似つかぬこの感情を何とあらわしたらよいのだろう。「何でもない」に代えたのは嫌われたくないからと言うより、悔しさゆえに認めたくなかったからなのかもしれない。暫し口を噤んで幾度もまたたきをくりかえしたのち、)本当に? つまんないって言うことは、御調が求めてるのはそれじゃないってことじゃないの?(彼も彼で、嘘はないだろうし楽ではあるのだろうと思う。けれど同時に、自由に縛られているように見えてどうにも違和が拭えない。もちろんただの感覚的なものであって、正解とも分からなければ言葉に出さないけれど。物言いたげな視線をものともせずに「ふうん」と一言。やっぱり可愛げはない。)私にもってどれを指して言ってる? ……私は落ち着いてるもん。御調にぴったりなのは分かるけど。(先程まで悲鳴を上げていた瓶の方へ人差し指を向けて揶揄めいた口調で答える。空いた一拍に潜んだ動揺は図星を刺されたからだろう。穏やかに紡いでいるからと言って落ち着かない気持ちが消える訳じゃない。彼との口論によって訪れた揺らぎも、眼前に迫る運命への恐怖も、胸中に降り積もっている。それでも「ありがとう」と笑ってカップに手を伸ばしたなら、誤魔化しも飲み込んでしまおうとハーブティーを口に含んで。)

御調久遠 ♦ 2021/01/25(Mon) 18:53[110]

ンだよ。 言いたいことがあンならハッキリ言いな。(なんでもないというわりには少女の貌に物言いたげな表情をみとめてしまい、気怠そうに肩を竦めてしまった。そうやって不平不満を内に押し込めて殻に籠るくらいなら先刻口にしたように言ってしまえばいいのにと、男の思うことは変わらない。是非を問うような言葉には怪訝そうに黄昏を眇めながら、ゆっくりと腕を組んだ。)疑ってンのか?自由で楽だってのはホントだぜ。 ただ面白れーって感じるモンがねえだけで。(簡単じゃないものなんて存在しない。生まれ落ちた瞬よりそれを強いられてきた身であるからして、男の世界は常に退屈が横たわっている。やんちゃを繰り返していた折、褪せた世界に一時色がさしたこともあったが結局はこのザマだ。こちらへの揶揄は気にも留めず、お道化たように嗤う余裕さえみせながら、少女の貌を覗き込むように姿勢を屈めてみせるだろう。)不満そうだな。イマナミにはセントジョーンズワートを出したほうがよかったか?(くっと喉を震わせて、立ったままソーサーとカップを手に持った。そのまま一口、流し込む。ふわりと甘く香るハーブに少しだけ心を落ち着けて、少女と向き合う形で作業台に浅く腰掛けた。)そーいや明後日出てくってコト、五条サンは知ってンの?(高専関係者の介入なく此度の件の話し合いが為されたとは思えない。とはいえあの最強がそれを知っていたなら男に話が回ってこないというのも可笑しな話であるゆえに、先刻から引っ掛かっていたことのひとつとして今更問うた。)

今波燈 ♦ 2021/01/25(Mon) 20:36[111]

……先に手をはなしたのは、御調の方じゃない。(言葉にして初めて、拗ねたような音色になったことに気付く。子ども染みた口吻には辟易するけれど、一度声に出してしまったものはかえらない。とは言え、溜息ひとつ零して「でも、そうなることは分かってたことだから」とみずからに言い聞かせるような物分かりの良さは、気持ちを語る上で忘れてはならない補足だった。)ううん、上手く言えないけど……諦めてるのは御調もじゃない?って思っただけ。御調、本当に面白いものが今までひとつもなかった?好きなものは探してみた? 待ってるだけで素敵なものが降って来るなら、私も待ってたいよ。でも、違うでしょ?(跳ね返ってくる言葉は偉そうでむすめも耳が痛いが、止められない。語られぬ彼の過去をどれだけ思惟を巡らせたとてむすめは知れる筈もないし、多分彼が思うよりずっとむすめは頑なでわがままだ。踏み込むための最後の鍵は今も彼の元に残したまま、抉じ開けたむすめの素の責任を身勝手に押し付けるように真っ直ぐな視線を向けて問いを重ねゆく。)そのハーブを良く知らないけど、ばかにされてることだけは分かった。失礼だからね!(とうとう本格的に拗ねたように顔ばせを逸らしてカップに口を付ける。口に含むでもなく、ただ震える水面にくちびるを添えるだけ。ちらと様子を窺いながらくちびるを尖らせて、)わかんない。 ただ、必要な人には知らされると思う。(カップをソーサーに置いて、不安を逃がすように柄に右人差し指を滑らせる。波紋を広げるように揺れる水面が複雑な心中をあらわすようだった。)

御調久遠 ♦ 2021/01/25(Mon) 22:02[112]

(予想外の答えが返ってきたものだから間抜けにも双眸を丸くして、晒したきょとん貌でゆっくり瞬いた。)それってよ、護衛任務外れたコト言ってンの?(「そうなることはわかっていた」も含めて思い当たるものはそれしかなく、問いかけと共首を傾ける。都合のいい解釈が脳裡に閃くも、もしもそうなのだとしたら趣味が悪いと眉を顰めた。これでも一応、自分が厄介である自覚はあるゆえ。)それなりにヤンチャしてたっつったろ。 オレだって退屈な人生に辟易してンだ。今だってずっと探してる、クソ親父の言ってた人生退屈ばっかじゃねーってわからせてくれるモンを。(或いは、終わらせてくれるものを。父が死んでからはより顕著に貪欲に様々なものに手を出しては落胆し、また手を伸ばしては辟易してを繰り返し、繰り返し。なにも掴めぬ掌を見つめる男の黄昏に一抹の愁いが滲む。けれど思い出したように面を上げる頃には昏い色も影を潜めて、)まあでも、オマエと居るのは退屈じゃねーかもな。(そう茶化すように嗤ってみせた。護衛の任を解かれる折もやもやしたのも、少女が勝手に離れていくと知って苛立ちを覚えたのも、きっとこの所為だったのだと今にして思う。斯様に遠慮なく言葉を交わし合えるこの関係が、拗ねた少女を微笑ましく思って「悪かったって」と軽く慰められるような気軽さが、これから少しずつ失われていくのだと思うとこの胸がざわつくほどには心地よく感じていた。)ふーん。 ま、出てくンなら挨拶はちゃんとして行けよ。あのヒトだってオマエのこと、心配してるみてーだから。(なんて、これは蛇足かと。ふっと短く笑えば、少し温くなったリンデンに口付けた。)

今波燈 ♦ 2021/01/25(Mon) 23:29[113]

……。(沈黙は肯定だった。熱こそ頬に上らねど視線を落として泳がせるのがその証左。くちびるをへの字に曲げ、居た堪れなさと羞恥とを逃がすように瞼を伏せてハーブティーを呷る。一気に流し込み過ぎて「ッ!」と肩が跳ねて咽ることになるのだから本当に仕方がない。)やんちゃ何て大雑把に言われたって分かんないよ。 その中でちょっとでも思い当たることはなかったの?本当に?(持ち得ているものが少ないむすめとて、“心当たり”が沢山のもので構成されていることは知っている。静かにてのひらを見つめる彼の手を包んであげたくなったなんて、烏滸がましいだろうか。手を伸ばしたって触れるには届かないこの距離が、もどかしくて仕方なかった。双眸を細めて「退屈だって思って探すから、見付からないんだよ」と紡ぐ声音は本気とも冗談ともとれるように。)さっき、御調は誰か何てどうでもいいって言ってたけど、そんなことないよ。誰かと一緒だからしあわせになれることが沢山あって、つまんないなって思ってたことが長く続いて、それでもっと面白くなることだってあるんだから。 まぁ、気にし過ぎもよくないんだろうけど。(眉尻を下げて困った風に笑って見せる。――それで、終わる筈だったのに。鼓膜震わせる冗句めいたそれに動揺が走って、うすく開いたくちびるが何事も語れずに閉じてゆく。まるみを帯びた眸の奥を揺らしつつ口端を持ち上げ、ぎこちない笑みを作れば「調子良いんだから」と震えそうな声音を叱咤して。)本当に? 誰にでもそんなこと言ってるのか、単純に趣味が悪いのか悩むね。色んな意味で。(慰めにさえ嬉しいと素直に言えず、悪態を吐く。でも、楽しかった。彼との時間は、心地好かった。過去形になってゆく切なさに片てのひらを滲みかけた眸子に押し当てて「分かってるよ、そんなに子ども扱いしなくても出来る限りはするもん」何て軽口を叩いた。)

御調久遠 ♦ 2021/01/26(Tue) 18:12[114]

ハハッ。ガキかよ。(わかりやすく図星ですと言っているような少女の反応を見遣れば、気付いた時には笑声がこの口から零れていた。こっちとしては見守るつもりでいたゆえ放り出すような感覚は持っていなかったのだが、ただ解任だけを聞かされた少女の立場を思えば「手放された」と考えるのも無理はないのかもしれない。念を押すみたいに問いを重ねられては、吐息したのち髪を気怠げに掻きあげた。)しつっけーな。あったら今頃……どーしてンだろな。(もしも褪せた世界に色を与えてくれる存在に廻りあえていたら。想像もつかないことを考えるのは思った以上に難しく、言葉を紡ぐことも適わず沈黙したのち悩ましそうに腕を組んだ。諭すような声色にはそりゃそうだわなと納得するものもある一方で、)普通に生きてりゃそれでイイのかもしれねえがよ、なにせオレは呪術師だからな。長く続いていくモンよりも、刹那的でも満たしてくれるモノのがイイんだよ。(呪術師は死と隣り合わせの仕事。末長くよりも、短いものを絶えなく永続的に。互いに育んでいくものよりも、目と目が合った瞬間に堕ちるようなもののほうが都合がよかった。)マジもマジ。 安心しろよ。口説くンならもっと色気のあるオンナにしてるし、言葉もちゃんと選ぶっての。(けらりと嗤う口吻には揶揄の色が濃く現れたが、誰にでもこんなふうに言葉を吐くわけではないということは恐らくは伝わったであろう。「それにオマエ、オレの好きなタイプとは正反対だし」なんて更に要らぬ一言も付け加え、ニッと悪戯に口端を吊り上げては最後の一口を飲み干した。)

今波燈 ♦ 2021/01/26(Tue) 20:59[115]

(不貞腐れたように眉間に皺を寄せながら「だから言いたくなかったのに」と紡ぐさまはちょっとした開き直りも兼ねていたかも知れない。ちょっぴり痺れる舌を噛み締めて耐え抜けば暫くだんまりを決め込もう。)呪術師は普通に生きられないって言ってるみたい。どうして?(こんな問いを投げ掛ける辺り、呪術師と言うものを真に理解していない証左なのだろうとは思う。しかし、一度頭を擡げた疑問はくちびるからまろび出るまで止まらない。彼の生死すら然程大したことでもないと語るようなさまを見て、彼に苛立ちを覚えるのも説明もしていないのだからお門違いなのだろう。そも此処を行くと決めたのも彼にこうして婉曲に話をすると決めたのも彼のためではない。おのがこころのため。しかし、決意に変えたのは彼のことを思えばこそのものだったから、彼のためを思わなかった訳では無かった。元より報われる想いばかりではないと知っているからそれについては彼が任務から離れることを了承した時点で諦めたと言い聞かせたつもり。それでも、みずからの意思で行くと口にしたのは、残してきた子らと、何よりも彼自身の安全を――いのちを尊んだから。)刹那的に満たしてくれる、もの。……私からしてみたら、退屈で当たり前じゃないって思うけど。だって、面白いなって思ってもそこで終わっちゃうんだから。 寂しくないの?(みずからだったら、きっと寂しい。さりとて気遣って居られるのもそこまでだ。「そう」と一言返す言葉は呆れた風を装うことで傷を濁し、溜息ひとつを零して。)それはどうも。 それなら、タイプの人と会えたらいいね。恋でもしたら、色々変わるかもよ。因みに、御調のタイプって?

御調久遠 ♦ 2021/01/26(Tue) 23:12[116]

別にガキでイイじゃねーか。甘えられるのなんざ今の内なんだから我儘せず言っとけよ。(それの一体なにが悪いんだとばかりにひらりと手を振る。少女の言葉を子どもと称して茶化しはしたが、思いを吐き出してくれることはいいことだ。護衛でいて欲しいと想ってもらえること自体は趣味が悪いとは思いこそすれ、気分を害すようなことはないのだから。)呪術師について説明受けたろ。 呪いの数は減らねーが呪術師は殉職率も高えし数は少ねーしで、平和な日常ってのとは無縁の仕事なの。今は学生だからまだマシだが、卒業すりゃ殆ど毎日任務で埋まるだろーしな。階級が上になればなるほど過酷になるンじゃねーの。(これに関しては最近任務が多忙を極め、学生の身でありながら留守にしがちにしている現状が物語っていよう。正直な話し、平和に日常を謳歌している自分の姿が想像できないってだけでもある。寂しさを問う音には肩を竦めた。)別に。寂しいってよりゃどっちかっつーと空しいって感じだし、ガキん頃から満たされたコトなんざ一度もねえからなぁ。(なにをしていても退屈が拭えない。これまでよく息をし続けてきたものだと我ながら思えば苦笑も滲んだ。)お。やっぱそーいうの気になンの? タイプつったらプラダを着た悪魔のアン・ハサウェイとか、オーシャンズ8のケイト・ブランシェットあたりだな。テメエに正直で、芯の通ったオンナがイイ。(女性遍歴については少女の手前割愛して、理想の女を主演映画で解り易く例えた。などと語りはしたものの、今退屈を紛らわしてくれているのは目の前にいる少女であるから理想と現実とは伴わないものだとそちらを一瞥。カップをソーサーへ置いた。)

今波燈 ♦ 2021/01/27(Wed) 00:02[117]

……御調が言う程私は子どもじゃないから、我慢しないと我が儘が沢山出て来るんだよ。(今の内。子どもゆえか、将又もっと単純に明日までの意を以てか。詮無い問いが脳裏に過ぎって消えてゆく。事実を語らうように紡がれる未来図にははっきりと眉間に皺を刻んで。)平和と無縁の仕事だから、未来のことは考えないってこと? それに、何でそんな他人事みたいに言うの?自分のいのちの話でしょう。(彼の生存率が彼の考え方で上がると言うなら、むすめは閉口する他無いだろう。しかし、彼の論理が納得できるかと聞かれれば話は別。小首を傾いでまた問いを重ねる。)御調のその刹那的な生き方を否定したい訳じゃないけど、……もう一回言うね。今までそれで満たされて来なかったなら、御調が欲しいのはそう言うものじゃないってことじゃないの? 呪術師になったのだって刺激的だからって言ってるように今まで聞いた話からは思えたし、そうまでして“平和な日常を考えられない”っていう呪術師に拘わらなきゃいけない理由が私には分かんない。ただ、御調が必要とされてることも、御調が意外と面倒見が良くてやさしいのも知ってるから、色々難しいって言われると困っちゃうけど。(彼の考え方に至るようになった末端さえ殆ど知らぬむすめからしてみれば、今見えるすべてを語るしかない。それにしても、なるほど確かに正反対だ。彼の様子から悟るに女性遍歴だって推して知るべし、ゆっくりとまたたいてカップに手を伸ばしては残ったハーブティーを飲み干した。何の味も香りも感じられなくて、またひとつ息が零れていった。)

御調久遠 ♦ 2021/01/27(Wed) 01:00[118]

(一通り言葉を聞き終えたなら少女が言いたいことがようやっとわかって溜息吐く。どうしてここまで躍起になられるのか理解出来ぬまま、渋々と口を開いた。)オレさ、ガキん頃からなんでも出来たんだわ。むしろ出来ねえコトなんざねーってか、俗にいう「鬼才」ってヤツでよ。 例えばオマエがピアノコンクールで全国一位取る実力選手だったとしても、そのオマエに勝てる曲弾ける自信あるぜ。(まず前提として始まるは自慢の如き才能の開示。男自身はこれが自慢だとは微塵も思っちゃいないが聞きようによってはそう聞こえても仕方がない言葉で、されど声だけは酷く気怠げだった。)オマエに言われるまでもなく、これでも模索したんだぜ。 けどやっぱ平和ってのもつまんねーしよ、テメエが穏やかに暮らしてるところなんざ考えただけで反吐が出る。畳の上で死にてえとは思わねえし、ンなつまんねー死に方するくれえなら呪いにグチャグチャにされた方がずっとマシ。 ……やめらんねーンだよなぁ。薬とおんなじで中毒なんだわ、呪い祓わねーと生きていけねえ病。高専を選んだ時点で、普通に生きるなんざ考えてなかったし。呪霊祓ってる時が今のトコ一番満たされてるつっても嘘じゃねーしな。(滔々と語る音に抑揚はない。平坦に、おんなじトーンで、それこそ他人事のように語る眸はより黄昏へと暮れてゆく。手持ち無沙汰の手で胸ポケットにさした命を繋ぐ薬が入った注射器のシリンジを弄びながら、これで満足かよってばかりに少女を見遣った。)つかオマエ、さっきからンでそんなムキになってンの。オレが死のうが生きようがイマナミにゃ関係ねーだろ。(未来だとか他人事みたいに命を云々だとか。諭すような口吻を思い出せば不思議だった、誰かに気に掛けられるような男でないという自覚はあるゆえ。)

今波燈 ♦ 2021/01/27(Wed) 02:23[119]

何でもできるから平和がつまんないの?刺激が欲しくてって言うなら、まだ分からないでもないよ。でも、多分御調が言ってるのってそうじゃないよね? ――御調が、本当に“私”と一緒にいて退屈じゃなかったって言うなら。御調のことを評価する誰かじゃなくて、もっと単純に“御調”と一緒にいる誰かがいたからじゃないの?(彼の過去をなぞってみて思ったのは、多少の衝撃こそあれどああやっぱりって得心するようなもの。出来ることに安心することはあっても、それをつまらないと感じたことが無かったむすめとしてはやはり理解できずにいる。でも、聞かずにいることはできなかったし、そも理解したいと思ったことを諦めたくはなかった。それこそ、過日のひとときが彼にとって刹那のものだったからこそ退屈ではなかったのだと導き出されることになったとしても。誰かがむすめである必要性が無かったのだと、明確になることになったとしても。もちろん、推測のすべてが外れているならそれでもよいだろう。物思いに耽るように背凭れに背中を預けて、顎に添えた手を支えんと片腕を伸ばしたなら視線は何もないカップの底に向けて暫しの時を食む。)ねぇ、御調。呪霊を祓うと、どんな気持ちになる?(緩慢に視線を彼に戻して、また一時小首を傾いで見せた。そのまま顎から外された手はまた膝の上で重ねられて、ぎゅうと握り締めることになる。)……御調には関係ないかもね。 私には関係あるとしても。(その事実がかなしかった。今なおその生死さえどうでもよさそうな彼に、上手く伝えられなくて怒りがわいた。それでも、選択したことに後悔はない。生きて欲しいこの気持ちにだって、嘘偽りはなかったから。真っ直ぐに彼を見つめたまま双眸を細めて紡いだ声音は、おさえたせいか幾分か冷めた音をしていた。)

御調久遠〆 ♦ 2021/01/28(Thu) 22:27[120]

呪術師ヤメて平穏に生きて誰かと一緒になりゃ、オレの望むモンが手に入るとでも言いてえの? ンじゃオレには一生無理な願いだな。(結局、退屈じゃないものを見つけられたとしてもこの在り方は変えられない。変えたくない。呪いという麻薬を今更この躰から切り離すなんて出来ない。とんだ矛盾だと自分でもわかっている。探しているものが退屈を紛らわす光であるのなら、昔から懐いているこの願いは闇であるのだろう。この瞳はいつだって黄昏を、終焉を向いている。スラックスのポケットに突っ込んだ御守を指先で転がしては再びの問いへはうんざりとしたように肩を竦めて、)言わねえ。これ以上不機嫌になられンのはダリいしよ。(などと言って退けた。少女の想いとは真逆のものを見据え、飲み終えたカップをシンクへ置く。静かな声色を聞けば「なんだそりゃ」意味がわからねーと言わんばかりに溜息ついて、ガーデンハウスの扉へと手を掛ける。少女とゆっくり言葉を交わせるのは今日で最後になるかもしれないとわかってはいるが、それでもこれ以上不用意に言葉を交わしたらもっと酷い言葉で少女を斬りかねない現状、これが正解なのだと思った。)もう行くわ。 明日も任務入ってっから、明後日の見送りは期待すンなよ。(ティーカップも適当にその辺りに置いておけと付け足して、軽い木製の扉を押し開けた。外はまだ明るい。運動場にでも足を運ぶかと外へと一歩踏み出した瞬、なにかを思い出したように歩みを制止して、肩越しに少女を振り返る。)──じゃあな。(「またな」とは言わない。なれど「さようなら」も言わない。機会があればまた次回、そんな男の生き様を彷彿とさせる飄々とした言葉を残し、今度こそ御調はガーデンハウスを後にした。このやり場のない感情をさてなににぶつけたものかと、いつもと変わらぬ暢気な冬空へ悪態を打った。)

今波燈〆 ♦ 2021/01/28(Thu) 23:48[121]

――わかんない。 けど、そんな極端な話をしたいんじゃないの。私には分かんないから、仮定とか選択肢の一つのお話をしてるだけ。(双眸の光を揺らしてかなしげに瞬くと同時に、首を横に振る。問いの答えは得られぬままなれどもそれ以上追い掛けることも無く、半ば自棄になってくちびるを開こうとしたところで――眸子に映ったその背中に、引き際を悟る。)うん、 行ってらっしゃい。(彼と当たり前に紡いでいた、また明日がなくなる。それがどんなに切ないか、彼にいつか伝えられる日が来るのだろうか。またねを紡ぐことで未練を残しそうで、それでも彼との別れを思えば寂しくて仕方なくてさよならを告げられなかった。はなれたくないよと最後まですがれないまま、結局「体に気をつけてね」とだけ声に出して手を振って見せたなら彼との別れに代えてしまおう。そしてこれは、彼の背を見送った後で。)生きてね、御調。私は、そのためにいきたいから。(例えそれが彼の気に食わないものだったとしても、彼のすくわれたこのいのちをまた危険に晒すのだと分かっていても。本当は行きたくなくて、おそろしさで足が竦んで、泣き喚いて助けを乞いたくても。かわいらしいむすめになり切れぬなら、例えこのおもいが届かずとも、ひとり強がって諦めたくない気持ちだけを持っていくと決めた。漸く席を立って、空になったカップとポットを片付ける。ソーサーもシンクに置かれたままになっていたカップも一緒に洗い清めて棚にしまい込めば、むすめもガーデンハウスを後にしよう。折角の休日を台無しにしてしまった肩身の狭さもこの身の内に残る靄も晴れないままなれど、見上げたそらはあおく広がっていてうつくしい。深く呼吸して冷たい空気をからだに取り込んで、むすめはまた一歩を進んだ。)

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