御調久遠〆 ♦ 2021/01/17(Sun) 14:09[86]
──は?(「昇級おめでとう!」五条悟、出会い頭の開口一番。唐突の通達になにごとだと呆気に取られたのも無理はあるまい。数度の瞬きを経る間漸く頭の中で告げられた言葉の意味を理解したならば、ハァ~~~と長い溜息を挟んだのち、双眸閉ざしては気怠そうに首に触れた。興味がなかったゆえ忘れていたが此度の奪還任務は二級への昇級を兼ねたもの。であるならば昇級を告げられることは全く可笑しい話しではないのだが、当事者たる男は迷惑そうに鬱陶しそうに眉根を寄せていた。目の前であからさまなニコニコ笑顔をひけらかす五条から視線を外しては、言葉を吐き捨てる。)だーから昇級なんざ興味ねーってンだよ、そうじゃなきゃこのオレが二級なんぞ小せえ枠に収まってるワケねーだろ。 もしも本気で上目指してンなら、オレは今頃一級術師だっての。(いけしゃあしゃあと高慢をのたまう。向かい合う五条は威勢がよくていいねというようにただ面白そうに笑って、「そういうわけだから」と護衛任務の終わりを男へと言い渡した。それは即ちこれまで当たり前のように少女の傍に居た日々が、当たり前ではなくなるということ。呪いが視えなければ呪力も持たない一般人の少女をいつまでも此処に置いてはいられないという理屈もわかる。今生の別れというわけでもない。ならば、それならば。)……五条サンがアイツの安全を保障してくれるってンなら文句は言わねえ。アンタのことは一応信頼してっからな。(Xに大きな動きがないとはいえ、だからといって少女を放り出していい理由にはならない。この身が護衛から外されるというのならせめて少女の身の安全はきちんと保障されていることを知りたかった。されど他ならぬ五条悟が言うのであればこれ以上安全なことはないだろうと安堵した癖に、そんな心に反して吐き出した声色は納得していませんといわんばかりの不服が滲む。どうしてこんな声が出るのか自分でもわからなかった。驚いて、勝手を吐き出した口を咎めるように大きな掌で覆う。──どうして。五条悟が少女の身を保障してくれるなら、それが一番安全だと頭でも納得している筈なのに。護衛を外れたからといって少女との縁が切れるわけでもなし。五条の愉し気な笑顔を見遣ればますます我ながらまだ子どもだと思い知らされて、ハァーーーとあからさまな大きな溜息を吐き出すと共、気持ちを散らすようにぐしゃりと頭を掻いた。)言うまでもねーと思うが、帰す時はアイツの身元、ちゃんと調べてから帰してやれよ。(Xがまだ存在している以上、そうそうに彼女を此処から追い出すようなことはしないとは思うものの。二級昇格で外出も多くなれば今後は以前のようにすぐ少女の状況を知ることも叶わぬのだろうし、念のために伝えておきたかった。こんな調子で意識が目の前の五条へと向いていたから、傍で誰かが聞き耳を立てていることなど露知らず、早速と告げられた任務の内容を聞いたならくるりと踵を返して後ろ手にひらりと手を振った。)ンじゃ、行ってくるわ。 二級になったンだ、それなりのレベルの呪いを祓わせてくれンだろ?(詳細は補助監督から説明があるのだという。二級術師の任務というのならこれまで相手にしてきた呪いよりも強いものが期待できると思うと、憂さ晴らしには丁度いいだろうと寒空へ靴を鳴らす。ポケットに突っ込んだ手の指先に少女に渡された御守が触れたなら、柄にもなくてのひらに握りこんで想う。またここに帰ってこられたらいい──そんな矛盾した祈りを。)