御調久遠〆 ♦ 2021/01/16(Sat) 16:39[84]
(無性に虚しくなる瞬間がある。喩えばそれは死なぬために食事を摂っている時。喩えばそれは朝にハーブ園で薬草に水を与えている時。辟易としている。なにもかもが簡単すぎて、つまらなくて、満たされない心を埋めてくれるほんの少しの慰めも最近めっきりご無沙汰だ。護衛というこの任務もはじめこそ鬱陶しく面倒だと思っていたけれど、少女と過ごす日々に退屈がないことに気付いたのはつい最近のこと。唯一もどかしく思うことがあるとすれば、それはやはり少女の在り方であろう。諦念、暗澹。時折言葉の節に感じ取るそれらに、同族嫌悪に似たものを感じている。我ながら勝手だろう。同情されるのも、探られるのも嫌いな癖、少女には変化を求めるなんて。瞼を伏せて考えるのはそんな取り留めもない話し。頬にあたたかなものが触れる感覚でやっと睫毛を持ち上げたなら、黄昏を細めた。)おー、戻ったな。──ンじゃ、散策再会といくか。温室なら咲いてる花もあンだろ。 こっから出たら近くのショップでなにか食おーぜ。食べたいモンある?(ベンチから立ち上がったなら散策の続きを促して、異論があがらなければ温室へと向かって足を進めるつもり。道中、購入したシラカバのキャンディーを「いる?」と少女に差し出して、もう暫くしたらきちんとした食事を摂ろうと提案を。味はわからずともなにかを胃に入れなければいけないし、少女が「おいしい」と先刻のように笑ってくれればこの外出も意味のあるものだと思えるから。今ばかりは色褪せたこの世界もほんの少し、輝いて見えた気がした。)