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【2B】(焦がれた青春のひとかけらを、君と)

今波燈 ♦ 2021/01/11(Mon) 23:05[67]

……え?(自室に訪れた来訪者から何処かに出掛けてきたらどうかと提案が齎されたのは、大人しく勉強でもしながら部屋で過ごそうとしていたある日のことだった。紡がれる言葉は、どれも尤もなものばかり。ずっとここにいられるとは限らないし、齢十八ともなればそろそろ青春も終わる頃。教師から提案されるよりも先に浮かんだのが彼の顔ばせだったことはそれこそ首を振ることで濁して、たったひとりだけのひみつと仕舞い込む。彼と共に買い物に出て、既にもう数日が経過していた。心なしかむすめ側にぎこちなさこそあれ、彼の厚意のお陰もあって決して互いに避けている訳でもなければ会う機会がなかった訳じゃない。しかし、こうしていても埒が明かないことは容易にはかれよう。ならばと「じゃあ、一ヶ所だけ」そう先日のお詫びも兼ねて彼と薬用植物園に行ってみたい旨だけを伝えて支度を整えることにした。過日の買い物がむすめのためにあったならば、彼のためにある時間があったってよい。とは言え言葉であらわすのはできそうもないし、したところで一蹴されてしまえばそれでおしまいだ。クローゼットを開け逡巡した結果、服装であらわさんと決意した。つい先日購入したばかりのニットワンピにショートブーツ、チェスターコートーー危なげなく着替えを済ませたなら後は彼の来訪を待つだけ、だったのだけれど。保護対象とは言え高専の中で自由がない訳でも無し、此度はエスコートを受ける側ではないむすめが迎えに来て貰うのもどうなのだろう。となれば「以前車を回して貰ったところで待ってるって、伝えて貰えますか?」と申し出たのは必然だったのかもしれない。彼の部屋まで行けば逃げ道も狭まるし、これ以上みずからふみこまぬようにとむすめ自身に言い聞かせる意図もあった。伝えたいりぐちで壁に背を預けて、今度こそ彼の来訪を待つ。冷たい冬の空気に頬と指が冷えてゆく。はぁと白い息を吐いて指先をあたためながら、そうと澄んだあおを仰いだ。)

御調久遠 ♦ 2021/01/12(Tue) 00:38[68]

(結んだ“約束”は元より早々に消化してしまうつもりであったから、五条悟より為された提案は断るべくもない。とはいえ教員と生徒という立場であるとはいえそう年齢も変わらぬ男に子ども扱いされるのはなんだか癪で、愉し気なようすを見遣れば睨めつけることもしてみせただろう。溜息ひとつ。褪せた世界は今日も今日とて廻り続ける。以前はまだ衣服も十分に揃っていない少女に合わせて制服での買い物に臨んだが、此度は所謂デートであるので服装にも気を遣おう。アウターは黒のCPOシャツジャケット、中にはオリーブのモックネックスウェットを着込み、下は黒のテーパードパンツとポストマンシューズを合わせて黒を主体としたコーディネートに。嗜みとしてワックスで髪型を整えることも忘れずに、仕上げにサムライのライトダイヤモンドをワンプッシュすれば完璧だろう。鞄に黒のレザートートバックを選んだのは単に武器を潜ませられるサイズのものがこれくらいしかなかったからだが、コーディネートに違和感はないだろう。肩にトートバックを担ぎながら、話しを持ち掛けられた折に指定された場所へと緩慢に足を進めてゆく。)イマナミ。 待ったか?(軈て少女の姿が見えたなら、鞄を持っていないほうの手を挙げて軽い挨拶を。白い吐息を指先に吹きかけるさまを見遣れば手袋を買うべきだったかと思いつつ、男の眼差しはまず少女の衣服へと向いて。「へえ」)その服、着たんだな。(ニットワンピースもショートブーツ、チェスターコート。いずれも先日のデートで見立てたものだ。まじまじと観察しながら、そんなふうに言葉を落とすだろう。)

今波燈 ♦ 2021/01/12(Tue) 05:36[69]

(彼が来るまでの間、念のため頭の中でリストアップした必要なものを確認。頭を下げて前借したお金を入れた財布代わりの薄桃色のシンプルな小物入れに借り受けたオフホワイトのスマホ、レース地の薄紫のハンカチなどなど。過日に彼と別れた際、一つ位は持ち運び用に欲しいと購入したピンクベージュのレザートートの中に詰め込んだそれらを思い浮かべつつ、大丈夫そうだと安堵するように相槌を打ったところで待ち人の声音が耳に届く。)御調! 平気、さっき来たところだから。(視線を声の方へと向けて、彼の姿を双眸に映す。ああ、これはかっこいいなって独り言ちたのが顔ばせに浮かんでいなければよい。まずは来訪そのものを示すように喜色を宿した顔ばせを綻ばせ、肩口まで右手を挙げて軽く手を振って見せよう。壁から背を離して彼の方へと歩み寄れば、向けられる視線におもはゆさを煽られて自然とくちびるも尖るけれど、すぐに口許を緩ませて。)うん、今日御調と外に出るならこれかなって思って。どう、似合う?可愛い?(軽口はちょっぴり調子に乗った証左。答えが何だったにせよ「今日も先生が送ってくれるって」「何処行くかは聞いてる?」「帰りはどこかフラついて帰って来ても良いけど、迎えに来て欲しいなら連絡しろって言ってた」と今日の流れを説明してから車に乗り込んで、目的地へ向かうことにしよう。到着したのち車を降りたむすめの第一声は、)……そう言えば私、植物園とかって公園にくっついてるの以外で来たことないかも。(と圧倒されたことを示す感想であった。我に返ってすぐ歩みを進めて入り口を潜り抜けたなら、まずはマップ付きのパンフを入手し彼に差し出しておく。さて。)これ順路とかあるの?適当に歩けば良い感じ?

御調久遠 ♦ 2021/01/12(Tue) 22:28[70]

(彼女が指定したという行き先を聞いた折こそ驚きはしたものの、元より男が行きたいと思っていた場所ゆえ否を唱えることはしない。映画、遊園地、水族館にプラネタリウムと他にも候補はたくさんあったろうに、年頃のむすめの口から「薬用植物園」だなどと可愛げのない場所が出てくる時点で気を遣わせてしまっているのだろうと悟るのは易かった。少女の花貌がやわらかく綻んだ刹那を目の当たりにしては妙なくすぐったさが心に湧き上がったものだけれども、ポーカーフェイスで押し留めた。可愛らしい問いの音には「そーだなぁ……」なんてわざとらしく腕を組み、改めてまじまじと恰好を見やってから、)似合ってンよ。カワイイ。(先日にも伝えた言葉ではあったけれど改めて。やはり実際に着た姿というのは随分と印象が異なるものだと、ふっと綻んだ唇から零れた音は今日一番素直な響きであっただったろう。行き先はわかっていると伝えるように頷きながら「あの辺周りになにもねーンだよなぁ……ちょっと行けばよみうりランドとかピューロランドがあるンだけどよ」と車の中でぼやく瞬間もあったはず。軈て目的地正門へと車が滑り込んだなら、どこか圧倒されたような少女のようすを一瞥して。)ま。植物園なんざ年頃の男女が好んでくるよーな場所でもねえだろ。 オマエも物好きだな。(「オレの好みに合わせるなんて」付けたすようにぼやいた言葉に含羞潜ませつつ、手渡されたパンフレットをひとまず広げた。なるほど、とひとまずは頭に園内の地図を押し込んで、少女にも見やすいように距離を詰めたなら肩口が触れる距離でパンフレットを広げた。)順路は特に決まってねーンだろ。今だと……クチナシの花が咲いてンのか。 とりあえず、まずはこの手前の漢方薬原料のコーナーから見ていこうぜ。(指差しゆく場所を示したならば、パンフレットはひとまずジャケットのポケットに突っ込んで歩き出そう。)

今波燈 ♦ 2021/01/12(Tue) 23:20[71]

(後数秒焦らされることがあればおもはゆさに耐えかねて「……もういい」と顔ばせを逸らすこともあったかもしれないが、どうやら杞憂に終わったらしい。彼から望む答えを貰えば満足そうに笑みを深めて「よかった」と紡いだことだろう。ご機嫌麗しいさまに照れは見られない。車中の独言には一応「時間あったらどっかに足を伸ばすのもいいかもね」とフォローの一言を添えておくとして。)いやそもそも……ううん、いい。何でもない。 その言い方だと御調が年頃の男の子――って言うと御調には微妙?とにかく御調はその男女の片方に当てはまらないことになるけど。(年頃の男女と二人で出掛けたことがなかったむすめとしては、その良し悪しははかれない。そもむすめからすれば多少の理由はあるにしろ、今日はお詫びも兼ねた彼のための一日であるからして彼のお気に召すものであるかが大切になる。「それともここじゃない方が良かった?」と確認したのはその証左であろう。小首を傾いで見せつつも減らず口を叩くことは忘れずに、園内入ってすぐのいりぐちでパンフレットを覗き込んでいた。一応パンフレットは二つ貰ったけれどそれを申し出るのも何だか今更で、ぞんざいにコートのポケットに押し込んでは彼の様子を窺うように目線を向ける。そのせいで話は半分ほど聞き逃してしまったものの、指し示された場所さえ分かれば問題もないだろう。)やっぱり季節ごとによって咲くお花も違うよね。 そういえば、頼めばガイドもしてくれるって書いてあったけど、いる?御調、自分のペースでまわれた方が良いのかなって思ったから頼んでないんだけど。(漢方も聞きかじった情報程度ならあるし、説明文があれば会話も何とかなるだろうとやたら楽観的であることは否めない。両手を袖口の中に入れて暖を取りながら、彼の後について歩みを進めては辺りを見回しゆっくりと呼吸を繰り返す。嗅ぎ慣れない草花のかおりが揺蕩っていた。)

御調久遠 ♦ 2021/01/13(Wed) 00:39[72]

(呪術高専も東京郊外の辺鄙なところに建てられているが、この薬用植物園が在るのも都心からは随分とかけ離れた小平市。近くに大きなスーパーマーケットがあるだけで先日のショッピングモールのように目移りしたくなるような店はどこにもなく、それこそ薬学を先行している学生だったりこの手のものに興味がある者くらいしかわざわざ訪れないだろう場所だった。)オレは変わりモンだからな、世間の枠にゃ囚われねーの。それにココに来たかった理由は都内で唯一ケシを育ててるからってだけだしよ。 ま。今の季節じゃ花は見れねーンだが。(開花の季節は初夏の頃の5、6月。されど今の季節は仲冬間もなく終わろうとしている12月。温室で育てられている草花であればまだしも、寒空の下に根を張る植物にとっては一番厳しい季節である。しかしながら肩を竦める男の面は残念がるようなものではなく、仕方ないなと達観しているような。ゆえ不機嫌になることもなければ「別に? イマナミがイイってンならココで」と是非を問う言葉にはここに残る意思を伝えるだろう。)さすが、よくわかってンじゃん。 ガイドとかあれこれ指図されンのってうざってえし、こーいうモンは好きに見ンのが一番イイんだよ。 温室以外じゃそんな花は咲いてねえだろうから園内は殺風景だろーが、まあそこは勘弁で。(時期的に芽を出している草花も恐らくは数えるほどであるはず。告げるなり早速足を進めた漢方薬区は案の定殺風景なもので、栽培されている植物の看板を見て周るのみとなるだろう。次いで足を進めた民間薬原料区、製薬原料区も似たようなものであったが、看板をしげしげと眺める男の横顔はどこか愉し気であったかもしれない。)イマナミ。 ケシの花がどうしてこンな厳重に管理されてるか知ってっか。(目的でもあった二重の金網に囲われたケシ・アサ試験区を見つめては、折角植物園に来ているのだからとそんな問いかけをひとつ。最も看板を見れば、すぐに答えがわかってしまうだろう。)

今波燈 ♦ 2021/01/13(Wed) 18:03[73]

じゃあ仕方ないね、相手が御調だもん。気にしてくれるって言うならまた今度、次は御調がプランを立ててくれるの楽しみにしてる。 花は、……流石に咲かせられないからそこはいつかリベンジして。(軽口を叩きながら微塵も気にしている風を見せない。ひとつだけ気掛かりがあるとすれば、いつまでここにいられるか何て分からないむすめは、出掛ける季節を選べる立場にないことくらい。約束にも満たない一方的な希望を押し付けて、眉尻を下げて苦く笑う。みずから選んだ行き先ともなれば否を唱える筈もなく「御調、詳しいって言ってたし、何となくね」と首を縦に振って相槌だけ打って見せたことだろう。有用樹木区にあるように冬に咲く花もあるとは言え、殺風景になりがちなのは承知済み。植物園そのものを楽しむと言うよりは、この瞬間を眸子にやきつけるかのように看板と睨めっこする彼の横顔を見つめ、頬を緩めていた。)私が聞いたことあるのは……ケシって、薬にもなるけど、麻薬の材料になるんだよね。いや、麻薬も薬と言えば薬だけど。 それで日本では栽培が禁止されてるから、誰かが取って行っちゃわないように、とかでどう?(毒も薬も紙一重、作る人使う人のこころ次第なのだろう。看板とデートすることはいつだって出来るから、答え合わせは彼の方を向いて。)……あ、あそこ何か咲いてる?何だろ。(歩み進めたとしてもまた暫くは殺風景な世界が広がっていたに違いない。変化が訪れるとすれば林地やロックガーデンが視界に入った頃合くらいだろうか。目に止まった色彩に意識を向ければ目を凝らして見つけようとしたものの、ふと、道中にあったログハウス風の建物を指さし、足を止める。)あ、でも通り道だし、先にそこ寄って見てく?確か、苗とか本とか売ってるってパンフに書いてあったよね。

御調久遠 ♦ 2021/01/13(Wed) 23:50[74]

ンじゃ今度はスカイツリーでも行くか。 水族館もプラネタリウムもあるし、展望台は結構眺めイイんだぜ。デート初心者にはうってつけってな。(揶揄い混じりの語調と共、唇の端っこも意地悪く吊り上げながら、されど不確かな今度を現実にするべく具体的なプランを言葉として打ち出した。家を勘当された今でも薬学の知識を腐らすことなく磨いているのはそれくらいしかすることがないからだが、とはいえ看板を眺める男の面はそれだけではきっと片付けられない。たぶん、傍らに誰かがいることも大きかったのだろう。ひとりなら欠伸でも出ていたって可笑しくはなかったけれど、こうして誰かがいるだけで退屈とは無縁だった。或いは誰かではなく傍にいたのが少女だからこそ、この時世界が鮮やかに映っていたのやもしれない。)ン、正解。 にしても、よく勉強してンじゃん。エライエライ。あとでジュースでも奢ってやンよ。(少女の回答が思いのほかしっかりしていたものであったので、意外そうな語調で告げては薄く嗤った。)あー……ありゃコウヤボウキ、か?(記憶を辿るように言葉を絞り出しながら、細指が指した方角を見遣れば頷く。)ああ。パンとかも売ってるみてーだし、ベンチに座って一旦休むか。(ここらで小休憩。買い物の折はベンチでゆっくり出来なかったけれど、此度は時間制限がない分休めるだろうと提案すれば、惣菜パンやら土産物が並ぶ売店へと足を踏み入れた。)

今波燈 ♦ 2021/01/14(Thu) 00:26[75]

……デート初心者と思った理由については聞いても良いところ?それとも御調がデート初心者って意味? スカイツリーは行きたいけど。ただ、賑やかなとこ、あんまり好きじゃないんじゃなかった?(意外そうにまたたきを見せたことは隠せない。喜色が口許に浮かんだことだって、このひとときに安らぎを覚えて心地好さに顔ばせがやわらかなものになっていることだってそう。つかず離れずの距離を保つのは、気付かぬ振りの精一杯。)すぐ子ども扱いする。もう。 まあ、今回のは聞いたことのあることだったから偶々ね。ジュースはありがたく受け取るけど。(不本意そうな反論もほんのり懐古をまなざしに滲ませていれば、ゆるい軽口の中に消えてゆく。聞き慣れぬ単語を調べようとスマホに手を伸ばしかけたものの、直ぐに思い直して。)後であっちの方も見に行こ。 パンはハーブとかが入ってたりするのかなぁ、ちょっと楽しみ。(彼に続いて売店に足を踏み入れれば、やわらかな樹木の香りと共にやさしい色彩を放つ雑貨が目に留まる。入り口には植木鉢が置かれていたし、季節が違えばさらに華やぐのだろうと想像に難くない。見慣れない売店を忙しなく見遣りながら総菜パンを覗き込んで。)思ってたより普通だった。御調、何食べる? 私、いっそお菓子とかでも良いかなって気になって来た。飲み物は絶対だけど。(でもお腹は減ったので、ちゃっかりおすすめと書かれたパンは一つ手に取っておく。)

御調久遠 ♦ 2021/01/14(Thu) 21:01[76]

オトコとデートしたことあるヤツがスーパーで服買いたいなンて言わねーだろ。それにあーやって一緒に買い物すンのとか、慣れてねえよーに思ったんだケド?(男の面には揶揄ってやろうって薄ら嗤いがまだ居座っている。人生イージーモードでここまできてしまった代償、ご覧の通り性格はよろしくない。けれど意外そうな瞬きを見遣れば意地悪も少しだけ鳴りを潜めて「好きじゃねーのと楽しめねえのとは違うだろ?」なんて。口端を吊り上げる。)そうしな、甘えられる時はそーやって甘えてくれりゃイイんだよ。(共に過ごす中、少女はやや周囲に気を配り過ぎているとは常々感じていたことだ。奢られることに然り、生活する上に然り、せっかく籠の外へと出たのだからもっと自由であればいいのにと思っている男であるから、つい傲慢な物言いになる。なにか休憩がてら口にできるものがあればと思って入った売店に懐いた感想は少女と殆ど同じで、)ンー……(籠に並べられたパンを見遣る。無難なラインナップだ、香りが立ちそうなものもない。)確かに。 ンじゃ飲みモンと適当に菓子類買うか。あとはここ出てからなんか食おーぜ。(言うなり菓子類と飲み物を適当にカゴに放り込んで会計を済ませてしまおう。そのまま近くのベンチへと腰を下ろしたなら、二本の瓶を少女の眼前にちらつかせて。)ホラ。 ぶんたんと小夏、ドッチがいい?(そんなに変わらないと思うケド、そう付け足して笑った。)

今波燈 ♦ 2021/01/14(Thu) 23:08[77]

そうなの……?で、でも、当初予定では唯の買い物でしょ?(言葉にすればするほど墓穴を掘っていくとはこのことだろうか。図星を差されてもくやしさゆえに「ふたりで遊んだことくらいあるもん」何てうつむき加減に負け惜しみで反論する。「そういうもの?」と確認する時になって漸く彼の顔ばせを窺い、悩まし気に眉尻を下げて。)別に甘えて無い訳じゃ、(ないけれど、と言葉にはならない。むすめが贅沢すぎる今を送っていることに変わりはないが、向けてくれたこころがあたたかくて嬉しかったなら、言葉にすべきことは他にあるはずだから。開いたくちびるを一度閉じてから「ありがとう」とあわい笑みで感謝を紡ぐ。)ブルーベリーが特産品なの?じゃあそれと、……一個くらいはパンも買っとく?一番人気って書いてある奴で良い? あっ、今日は私お金ちゃんと貰って来たよ!(何方が会計したかについてはさておき、幾つか見繕ったのちには店外に並んだベンチの方へ向かうことにしよう。彼の隣に腰を落ち着け、袋の中に手を伸ばそうとしたところで。)あっ!それ飲んで見たかったやつ!どっちもおいしそうだけど、……ん~……文旦かなぁ。(ねだるように両手を差し出して受け取ることが叶ったらよい。次いで、所謂カレーパンをレジ袋の中から手に取ったなら半分にちぎって片方を差し出そう。)後で食べるなら全部食べるのは多いから、半分。食べさせて欲しいなら口に突っ込んであげるけど。

御調久遠 ♦ 2021/01/15(Fri) 01:09[78]

イマナミに洒落っ気がねえってコトはよくわかった。これ以上は墓穴掘るだけだしヤメときな。(言葉に詰まる少女のようすに潮時を悟ったなら、ひらりと手を振ってこれ以上は突っ込みませんと合図した。あまり納得がいっていないとばかりの声を拾えば「そーいうモノなの」と背を押すような一言を。興味を持てぬものばかりとはいえ、すべてをつまらないで片付けられるほど世の中は平坦ではないことだって知っている。反論のような音から一転、その唇より謝辞が紡がれればどういたしましてを告げる代わり、面に薄笑いを乗せるのだ。)そこンところはイマナミに任せるわ。 へえ、用意いいじゃん?つっても金はオレが持つからオマエは気にしなくていーの。(こっちの都合で付き合ってもらっていればなおのこと受け取れるはずもなく、会計は男のほうでさっと支払ってしまったはず。)だろ? 柑橘系は殆ど間違いねーだろうし、外で飲むにゃちと寒いがあったけえモンは自販機でも買えるしな。(差し出した二択に少女が答えを示したなら、ご所望の文旦をその掌へと握らせる。ラスクの封を開けたところで半分こにされたパンに気付いたなら、意外そうにまたたいたのち、)「ほら、あーんして」ってカワイく言ってくれたら、口開けてやるよ。(悪戯を思いついたって貌で嗤っては、調子に乗った冗談を紡ぐ。デート初心者じゃないのならこのくらい余裕だろうと、そんなふに。)

今波燈 ♦ 2021/01/15(Fri) 02:20[79]

失礼だからね、それ!ずっと着る服を買おうとしたらちゃんとアウトレットとか行くもん。せめてデパートって言っとけばよかったってまさに今後悔してるけど。でも、……高専が私にお金をあげる道理はないじゃない。洒落っ気何て求められてると思わなかったし……。 しかもその言い方、信じてないでしょ。中学の時には男の子のお家に遊びに行ったことだってあったんだから。(それをデートと言うかはさて置きとして、である。何にせよこれ以上の深堀りがなければむすめにとっては重畳、「なら良いけど」「楽しみにしてる」の二言を紡いだことだろう。)……この間の話と矛盾してない?ちゃんと領収書貰うの忘れないようにね。(この間のやり取りをなぞるように軽口を叩く。彼の感想にはなるほど確かに。得心したように相槌を打ってはジュースを受け取り、まずはひとくち。やわらかい酸味が口内にひろがって自然と顔ばせが綻んでゆく。「おいしい!」は自然と飛び出した感想だ。)話してる内に突っ込まれる可能性は考えなかった? まぁいいけど。はい、あーん。(流石に半分をそのまま押し付ける気概はなくて、一口サイズに再びちぎって摘まんだそれを彼の口元に差し出す。ゆっくりとまたたいて、その行く先を見守った。デート初心者であることは否めないが、意識さえしなければ顔色ひとつ変えずにやってのけてしまえることも多い。可愛げのないことに、初心なばかりのむすめではなかった。)

御調久遠 ♦ 2021/01/15(Fri) 21:06[80]

(少女が気に強いなのか、男が傲慢なだけか。紡がれる反論には先刻口にした通り茶々をいれることはなかったものの、少女のその生き方或いは在り方に男は勝手にも窮屈さを感じている。折角蜘蛛の糸から逃れられたのに、囚われていると勘違いをして空へ羽ばたかぬ蝶のようだと。周囲に気を遣うことは悪いことではないけれど、もっと自由に奔放に羽を伸ばしたって罰は当たらないだろうにと。そんなふうに。されどこればかりは少女の性分でもあるのだろうからこれ以上の指摘は野暮というもの。指摘された矛盾についてはとぼけたようすで肩をすくめた。)さっき奢ってやるつったろ。菓子類はオマケってコトで。(ジュースのオマケにお菓子がついたって金銭的にも大した差はないのだからと、ここはチープな言い訳で押し通してしまえ。綻ぶ花貌をみとめては男も微笑ましがるようにふっと面をやわらげて、手にしたジュースを一口流し込む。口腔に広がる甘みも酸味も男にはわからないが、柑橘特有の爽やかな香りだけは感じ取れる。少女の言うように、たぶん、美味しいのだろう。存外素直に行動した少女には多少面食らったりして、)かわいくねーなぁ。(残念がる声で冗談紡ぎながら、あーんを実行する細い手首を捕らえんと腕を伸べた。それが叶えば少女の手指を食べやすいように口許まで引き寄せて、遠慮なくその指先からパンをかっさらってしまうはず。捕らえるのに失敗したとてパンが口に入るのは同じこと。)そんなにスパイス効いてねえな。(唇を指先で拭いつつ、紡ぐ言葉は評論家ぶっていた。)

今波燈 ♦ 2021/01/15(Fri) 22:36[81]

……じゃあ、お言葉に甘えて。ご馳走様、ありがと。(格好つけて格好がつく人は得だと思う。そして彼はそのひとりだとも思った。それこそ言葉にも顔ばせにもあらわれずとも、その声音にははにかんだ喜色が潜む。)知ってる。こういうのはもっとかわいい子にやってもらわないと。 ただ!御調のそれ、ちゃんと失礼だからね。あんまり言ってると傷付いて拗ねちゃって、面倒臭いことになるかもよ。(双眸を細めて、変わらぬ軽口を叩く。聞き馴染んだ評価はいまさら過ぎて揺らぎのかけらさえ見せやしない。彼の口許にパンが触れたのを確認すれば抵抗することなく指の力を抜いて、ゆるやかに手を引こう。)そうなんだ?じゃあ、私も。 あ、御調残りはどうする?ひとりで食べられる?(揶揄するような体でちぎった半分を差し出し、小首を傾いで見せる。傾きはむすめの分のパンをかじる頃までには定位置に戻り、残った半分を口に運んだことだろう。「あ、でも結構おいしいよ」と感想を述べつつ、ジュースと共に舌鼓を打っては完食。半分ならお腹が一杯になることもあるまい、両手を合わせてご馳走様のポーズをとって。)でも、やっぱり手がちょっと冷たいからあったかい飲み物は買って来ちゃおうかな。御調も何かいる? あ、折角だしごみも捨てて来ちゃうよ。貸して。(ベンチに手をついて立ち上がったなら、彼の方に向き直って片手を差し出す。ごみが乗せられるようならそれを捨ててから、そうでなくても自販機には向かうつもりで。)

御調久遠 ♦ 2021/01/16(Sat) 01:04[82]

そーだなぁ、助けられた姫サンのなかにはカワイイ子結構いたしお願いしてみンのも悪くねーか。 素直にオレの言うコト聞いてくれる優しい子、ひとりくらいはいンだろ。(最も本気でそんなことをお願いしようものなら、実行に移す前に護衛の騎士たちが駆けつけてくるに違いないだろうが。後輩たちが助けた生贄の少女たちの貌を思い浮かべるとセットで護衛の面が並ぶのもなかなか、彼らも今頃は振り回されているのだろうと思うと嗤って軽口も叩きたくなる。ただしこの男の場合は少女を振り回している側であるのだが。)……喰えなくもねーから食べるかな。 あとオマエ、だいぶ図太くなったよな。(これだけ揶揄いもしていれば耐性がつくのは当たり前。語調に揶揄を見つけては随分と慣れたもんだと吐息と共肩を竦めて、味の感想には「そーか?」と無関心な相槌。どうにかこうにかジュースでパンを流し込んだなら、少女からの申し出を有り難く受けよう。謝辞と、それから「飲み物はいらねー」の言葉を自販機に向かった少女の背へとかけたなら、ひとりになったのをいいことに膝に肘を立てるように前屈みになっては、深い深い溜息を吐き出した。)……しんど。(味覚が戻れば食事も楽しくなるのだろうが、それは即ち呪霊の味をまた知ることに繋がる。知らぬ地獄か、味わう地獄か。ならばと選び取った前者、しんどくとも後悔はない。ぐっと躰を伸ばしては、今度は空を仰ぐようベンチの背もたれに躰を預けるだろう。少女が戻るまでのあいだ、ふっと力が抜けたように瞼を閉ざす。静かだった。)

今波燈 ♦ 2021/01/16(Sat) 06:19[83]

(一度くちびるを開いて、何事もつむげぬまま閉じた。空気だけを食んだ一拍ののち、口端を持ち上げて「そうだね、みんないい子たちだから」と相槌を打つ。護衛が駆け付ける可能性を露程も考えないのは、真に彼女たちを困らせることはないと無意識に信頼を置いているからだ。もしするならば意図あってのことだろうし、彼女たちの意思に任せるほかむすめには何の権利も無い。「元々だよ」と憎まれ口を叩くのは、彼の言葉通り慣れのたまもの。彼に背を向けて自販機に向かえばほうじ茶を購入、振り返って彼の元へと戻ろうとしたところで。)――。(背凭れにからだを預けた彼の姿が目に留まった。彼の事情こそ知らねども、身勝手にふるまっている身では彼に負担を掛けている今に思い至らぬ道理はない。耳をすませば小鳥のさえずりが聞こえ、陽が高くなってきたことでひなたは幾分かはあたたかいだろう。探せば見つかる距離なら、何かあっても困ることはないはずだ。たまゆらの躊躇いののち、踏み出そうとした足を戻して自販機の端へと移動し、そうとペットボトルを両手で包んでその蓋にくちびるを寄せる。両手にぬくもりが移った頃にはその蓋を開け、飲み干すまではひとときのやすらぎを彼へ捧ぐつもりだった。途中で見つかってしまうようなら「今戻ろうとしてたとこだったの」と言い訳しただろうし、そうでなければ飲み干したペットボトルを捨てて新しいものを購入してから彼の元へ戻ったことだろう。後ろにまわって彼の頬にそれをくっつけてしまう悪戯くらいは考えていたけれど。)

御調久遠〆 ♦ 2021/01/16(Sat) 16:39[84]

(無性に虚しくなる瞬間がある。喩えばそれは死なぬために食事を摂っている時。喩えばそれは朝にハーブ園で薬草に水を与えている時。辟易としている。なにもかもが簡単すぎて、つまらなくて、満たされない心を埋めてくれるほんの少しの慰めも最近めっきりご無沙汰だ。護衛というこの任務もはじめこそ鬱陶しく面倒だと思っていたけれど、少女と過ごす日々に退屈がないことに気付いたのはつい最近のこと。唯一もどかしく思うことがあるとすれば、それはやはり少女の在り方であろう。諦念、暗澹。時折言葉の節に感じ取るそれらに、同族嫌悪に似たものを感じている。我ながら勝手だろう。同情されるのも、探られるのも嫌いな癖、少女には変化を求めるなんて。瞼を伏せて考えるのはそんな取り留めもない話し。頬にあたたかなものが触れる感覚でやっと睫毛を持ち上げたなら、黄昏を細めた。)おー、戻ったな。──ンじゃ、散策再会といくか。温室なら咲いてる花もあンだろ。 こっから出たら近くのショップでなにか食おーぜ。食べたいモンある?(ベンチから立ち上がったなら散策の続きを促して、異論があがらなければ温室へと向かって足を進めるつもり。道中、購入したシラカバのキャンディーを「いる?」と少女に差し出して、もう暫くしたらきちんとした食事を摂ろうと提案を。味はわからずともなにかを胃に入れなければいけないし、少女が「おいしい」と先刻のように笑ってくれればこの外出も意味のあるものだと思えるから。今ばかりは色褪せたこの世界もほんの少し、輝いて見えた気がした。)

今波燈〆 ♦ 2021/01/16(Sat) 21:46[85]

(たとえそれが冗談だとしても、みずから招いた結果だとしても、こころにさざなみが立たない訳じゃない。聞き馴染んだかわいくないも、むすめでない誰かに意識が向けられるのも、つかず離れずのこの距離感も、すべて。それは随分と身勝手な感情だった。歯止めをかける術を知らないから、すぐに引いて諦める。今だってそうだ。彼の負担を分かっていて誘い、それを目の当たりにして癒す選択肢を取れるとは思えず、緑に委ねる。もどかしくない訳じゃないけれど、足掻くことで更なる負担を掛ける危険性を考えれば委ねた時間の方がむすめに頼るよりもまだ有意義だと思っていた。むすめは、他の誰よりむすめ自身を信頼していなかったから。彼の元へ戻って頬にペットボトルをあてたのち、頬をゆるめ「カイロ代わりにあげる」そんな一言を付け加えて。)うん、お待たせ。そろそろお勉強から離れたいところだったから、それは嬉しいかも。なんて。 とにかく寒いからあったかいものが食べたい……スープがセットでついて来るところが良いなぁ。御調は何食べたい?(キャンディはありがたく「いる!」と受け取って温室の方へと向かおう。色味のある世界を目の当たりにして漸く「あれなんか可愛いね」「あの色好きかも」とか何とか、弾むように口数の増えたむすめの姿がお目見えすることになったはず。植物園を一周したのちは食事を済ませ、借りたスマホを頼りに近くを散策する。どうやら少し歩けば足湯などもあるようだし、もう少し足を伸ばせば神社もあるようだ。幸い天気も悪くない、彼の意見を聞きながら今しばらく彼との時間を堪能したことだろう。神社でお参りしたなら、社務所に寄ってちゃっかりおみくじを楽しんだりお守りをいただいたりしただろうから、帰路につく頃には「はい」と彼の分の神社守りを渡したに違いない。いまひとときこそ平穏の中にあるが、これからきっと危険の中で生きてゆくのだろう彼を少しでも守ってくれるように。彼の無事とさいわいを祈ったこのこころを込めて。)

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