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【ep】(久遠の生に燈を灯す)

御調久遠 ♦ 2021/02/11(Thu) 22:16[159]

(──斯くして2018年10月31日。去年任務を共にした一級術師により推薦を受け一級に昇級果たした男は更に多忙な日々を過ごしており、先日湯沢での地方任務を終え実に半年ぶりに東京へと帰還を果たしたのだった。)どーも、伊地知センパイ。今東京に戻って来たンだけどさ、悪ィけどソッチ帰ンのは明日になるって学長に伝えといてくんね? あ?電波が悪くって聞こえねーわ、ンじゃそーいうワケだからよろしく~。(スマホ越しから聞こえてきた先輩の悲鳴を無慈悲に断ち切って駅の改札を抜ける。ハロウィンということもあってかここ東京駅も渋谷に向かう人間やらイベント品を求めてウィンドウショッピングをする人間で溢れていて、久方ぶりの人混みにうんざりしたように溜息ついては近くのスタバに一旦避難した。一級術師に昇級する少し前、規格外呪霊と遭遇し領域展開に巻き込まれた際に大怪我を負い、以降右目には革製の黒いアイパッチを付けるようになっていた。他の変化といえば学生服が漆黒の黒衣に変わったり澄ました貌がより大人びたくらいで、外見は高専に居た頃と然程変わってはいなかった。東京へ向かう新幹線の中で『今日ソッチ戻るわ』と少女、否彼女にLINEを送りはしたが、さて既読はついたか否か。彼女がどこでどのように過ごすことになろうとも一級ゆえの多忙さで以前にも増して会う機会は減っただろうが、それでも全く会えぬことはなかっただろうし、彼女からアクションがあれば応えることはしていた筈だ。友達以上恋人未満、付かず離れの関係は彼女次第ではあるが未だ継続中。ともすれば口論だってきっとしょっちゅう絶えなかったろうが、それでもまだ関係が続いているのはなんだかんだ居心地がよかったからに他ならない。ハロウィンのコスプレをしたカップルが目の前を通り過ぎるのを見やりながら、頼んだミントシトラスを片手に『今東京駅居んだけど、会う? 外出てンなら迎え行くけど』なんてメッセージを送信しては、漸く息を吐いた。)

今波燈 ♦ 2021/02/11(Thu) 23:33[160]

(大してむすめの容姿に変化はなくとも瞬く間に経った4年と9ヶ月、その前の数年とあわせてもむすめにとって大きな意味をもつ時間だった。一級に昇級した彼へ真にその道を決めたことを理解して「お疲れ様」と「おめでとう」の言葉を贈ったのも「今まで以上にちゃんと気を付けてね」と余計な一言を付け足したのも想像するに難くない。彼が大怪我をしたと聞いた時は心の臓が止まるかと思ったし、それこそ何を言われようとも傍について見守っていた時は胸が抉られるような心地さえ味わったけれど、それでも彼の元を離れることはむすめの選択肢には無かった。そこそこ大学生活を謳歌する中で誰かの誘いがあっても、例えさみしさにこころが曇る日があったとしても、むすめの気持ちは変わらなかったから。彼と口論することや擦れ違うことがあっても、それは隠し事や嘘偽りで塗り固めた一方的なしあわせよりもずっとずっとたいせつなことだとわらって見せたことだろう。――そして迎えた、2018年10月31日。彼からのLINEを既読したのは比較的直ぐで『お疲れ様!』『どこかで会う時間作れそう?』と直接おかえりを言いたがった。大学で行われたハロウィンパーティーには顔だけ出し「ごめん、用事出来た!」と飛び出してゆくものだから仕方ないのだけれど「えっ、まさか彼氏……?」「違うって言ってたけど、他は眼中にないみたいだよ」と肩を叩く友人等には後々小言でも送ることにしようと胸に決めたことは言わずもがな。此度の任務は地方のものだと聞いていたし、ひとまず時間を潰す目的で向かおうとしたのは東京駅近くの商業ビル。それも直ぐにメッセージの着信を知らせるバイブで方向転換をすることになった訳だけれど。『会う!』『今どこ? 私まだ駅ナカだから、お店にいるなら私が行くよ』とだけ返信しておけば、然程時間を空けず彼と会うことは叶ったに違いない。)御調!(あかるい笑みと共に手を振って彼の名前を呼ばうのも駆け寄るのもいつものこと。)おかえりなさい、とお疲れ様かな。 ついでにハッピーハロウィンってことで、トリックオアトリートって言っておいた方が良い?(小首を傾いで軽口を叩くのも、また。)

御調久遠 ♦ 2021/02/12(Fri) 21:48[161]

(階級が上にあがるほど、それも一級術師となればそれなりに危険な任務も伴うと知りながら男は進んでその道を選んだ。そのたびに、いつか忠告したように彼女に心配を掛けて、不安にさせて、けれどもそれでも彼女はこの傍を離れなくて。こんな生き方しか出来ない男の何処がいいのだと「もういいだろ」と幾度告げたかはわからない。それでも今もこの傍に彼女がいてくれている、その意味。帰る場所があると思わせられて、口にしたことはないが男の心にも確かな変化が生まれていた。すぐについた既読に相変わらずだなって知らず唇は弧を描く。『スタバ。んじゃ店ン前で待ってる』そうメッセージを打ち待つこと暫し。ほどなく御調と名を呼ぶ声が聞こえたなら片手を上げて応えてみせ、駆け寄る姿にふっと眦を下げた。)ただいま。すっげ面倒くせー任務だったわ。 あとコレ、土産。オレに悪戯出来なくって残念だったな。(差し出した紙袋は先日まで任務で居た湯沢の土産だ。柿の種よりは笹団子のカントリーマアムのほうがまだマシそうだったのでこのチョイス。これでハロウィンの呪文もチャラだろうと意地悪く笑って。)オマエさ、飯食った? 話してえこともあるし、どっか店入ろうぜ。なに喰いたい?それとも、見てえもんあンならソッチ付き合うけど。(時刻は昼食時を少し過ぎた頃。ハロウィンともなれば今時間でもレストランは混雑していそうだが、こればかりは致し方あるまい。もしも希望があれば昼食前に少女の用事に付き合うつもりで、意思を問うように首を傾げた。)

今波燈 ♦ 2021/02/12(Fri) 22:19[162]

御調の面倒臭いってどういう方向なのか悩むよね……。 ……お土産はご馳走とは違くない?せめてほら、私の分の飲み物は?(苦しい言い訳だと思う。いや悪戯だって考え付かないけど。ほんのり化粧を施した顔ばせは複雑そうな色をもって反論した癖、両手はしっかり伸ばしてお土産を受け取ろうとするのだから意外とちゃっかりしているものだ。大学の友人が施してくれたらしい薄桃色のグラデーションがかった爪先は両てのひらを上に向けてしまえば見えないだろうけれど、自由に使えるお金が増えて年頃のむすめらしい装飾品も随分と増えたことはハーフアップにされた髪型に付いた花飾りや胸元に揺れるネックレスが教えてくれる筈。)ううん、まだ。メッセージ見て直ぐに学校出て来たから、お腹空いちゃった。さっき友達とお肉の話してたからお肉も捨てがたいけど、甘いのも食べたいって意味ではセットに出来るもの……プレート系かイタリアン? 見たいもの、……はなくもないけど、これと言ったものはないかなぁ。そうだ、そこの通り見ながら考えようよ。ウィンドウショッピングも兼ねて。食べたいものも見つかるかもだし。(話したいこと?と思わず小首を傾いでしまったのは素直な感情をそのまま乗せた証左だろう。おおきなまばたきを何度か繰り返したのち、気を取り直して大通りを指差した。元々商業ビルで時間を潰す予定だったし、それが彼と一緒に出来るなら重畳。一緒に見られるなら彼の欲しいものも多少はリサーチする目的で「御調、誕生日っていつ?」と贈る理由に一番なろう問いを投げ掛ける。ある意味ではド直球だが、今更言い繕っても仕方あるまい。)

御調久遠 ♦ 2021/02/13(Sat) 00:31[163]

面倒つったらは面倒なンだよ、交通面不便だしやたら呪霊ウヨウヨ居やがるし。 あ?喉乾いてンなら飲むか、ンなにウマいもんじゃねーとは思うが。(飲み物がほしい=喉が渇いているわけじゃないってことはもちろん気付いているけれど、敢えて恍けて飲みかけのミントシトラスのカップを揺らした。残る量は半分と少し、手分けすれば或いは移動前に飲み切れるかもしれない。普段あまり意識して見てこなかったが、久しぶりの長期任務明けに彼女の姿を映した所為か、何時にもまして傍らの彼女が綺麗に思えたのは恐らく気のせいではあるまい。実際、綺麗になったと思う。身に付けるものや化粧をしているせいもあるのだろうが、そう思う理由を最近まであんまり深く考えないようにしていたが、それでもう答えは出ているようなものだった。きっと。)OK、ンじゃテキトーに歩くか。新宿とか六本木あたりは任務でもよく行ってたが、東京駅はあんま知らねえンだよな。 (話したいことについてはまたあとで、とはぐらかしておく。「11月19日。イマナミは?」と誕生日の話題についてはさらっと答え、逆に彼女のほうに問いかけもしただろう。ぷらぷらと歩きはじめると、すれ違うカップルや集団がハロウィンのコスプレに身を包んでいる割合も高くなり、ついでに店の看板に「仮装している人は5%オフ」といった文字を見遣れば、)イマナミはしねえの、仮装。(深い意味はない。単純に、ただ聞いてみただけだった。)

今波燈 ♦ 2021/02/13(Sat) 01:38[164]

交通面に関してはどうしようもないけど、……大きなけがはなかったみたいで、安心した。(紙袋の紐を腕に通して揺らしながら「……中身は?」と聞く辺りで何から反論すべきか悩んでいる。結局そうじゃないと文句を垂れつつも一口くらいは頂くことになったかもしれないが、何にせよ店舗に入るまでなら飲み物を手にしたままでもビルから追い出されることはないだろうと踏んで。)私六本木の方が良く分かんないかも。 東京駅はお店が多すぎて回り切れてないって言うのはあるけど、あの辺にある商業ビルとか色んなお店が入ってて私は結構好き。(話題を追い掛けることもなく、駅近にあるビルを幾つか指差して足を進めよう。「じゃあもう少しだ」と両手を合わせて視線は楽しそうに硝子越しの商品を巡る。やはり使えるものがよいだろうか。勿論「私?5月13日だよ」と答えることも忘れることなく。)仮装? しても良いけど、ひとりでするのはちょっとね……私がするとしたら魔女位なら無難そう? でも確かにさっきから仮装すれば割り引いて貰えるお店も多いもんね。夏だと浴衣割りとかある位だし。(店舗の奥ばかり見ていたから、紡がれて漸くすれ違う人々の服装が双眸に止まる。口元に片手を添えて思案したのはたまゆら、)御調こそしないの? 私はちょっと見てみたいかも。結構色んなの似合いそうだよね。王道で言うなら吸血鬼とか?(コスプレについては何となく言及を避けつつも確かその類は美形であることが前提条件であった筈だ。彼の顔ばせを見上げるように見遣り当て嵌めた結果、思わずちいさな笑みが零れた。)

御調久遠 ♦ 2021/02/13(Sat) 12:15[165]

弱ぇヤツほどよく群れる、って言うだろ。数は多かったがオレに掛かりゃ大したことねーよ。(長期任務が続き戻って薬を調合する暇もなかったゆえ、解毒薬もそんなに使用せずに済んだことは幸いだった。「カントリーマアム、笹だんご味」とは中身を問う言葉に対して。ハロウィンはお菓子を強請るイベントだったと思えばある意味適任の土産といえようが、さて彼女の御眼鏡に適うかどうか。さらっとカップに口をつけるあたり気にしていないのか疎いのか、意外そうにぱちっと瞬きしたものの、男自身も気にするほうではないのでまだ飲み物の残っているカップ片手に足を進める。)六本木も商業ビルそこそこあるぜ。まあ割かし店は高めな印象だけど、ンなに混雑してねえしオレは好きだな。冬はイルミネーションもキレイだったしよ。(東京駅については彼女のほうが詳しいということであれば、ここは任せるのもいいのかもしれない。指で示されたビルを見遣りつつ、視線は楽し気に硝子を見つめる彼女へと戻っていく。「牡牛座か、なんかわかるわ」と誕生日ではなく星座への感想をひとつ落として。)まあ簡単に出来るのはそのあたりだろーな。それかカチューシャ付けるンでも仮装になんじゃね、アクセショップあたりならそーいうのありそうだし。(先刻からすれ違う仮装集団も耳をつけただけだったり、衣装を揃えただけだったりと簡単なものも目立つ。渋谷あたりに行けば更に凄いのだろうなと例年の混雑具合を耳にしていれば想像に易く、されどそれもこっちに話が振られれば、虚を突かれたみたいに瞬いて。)吸血鬼、ねえ。ま。術式的に間違いじゃねーな。 ナニ、血でも吸われてえの?(ニヤリと意地の悪い笑みを面に浮かべ、揶揄うように背を屈めては彼女へと貌を寄せた。唇のあわいからわざとらしく犬歯をのぞかせて、黄昏が近い距離で黒曜を見つめている。)

今波燈 ♦ 2021/02/13(Sat) 13:27[166]

(お菓子の感想についてはさて置き、所謂間接キスの問題については気にしない風を装ったと言うのが本音である。逸る鼓動何て触れねば伝わることも無いし、他の異性とだってやったことがあるだろうと言い聞かせ一度口を付けてしまえばおもはゆさのピークを乗り越えることは出来ただろう。色々物申したいことはあれど、口にしてしまえば是を返されて悔しさゆえに言い募るだろうことは必至。例えば誰にでもそうなのかだとか、人の気持ちを分かっていてそういう揶揄はアウトだとかそういうこと。)じゃあ今度案内してよ、イルミネーションの季節ももうすぐでしょ?(ウィンドウショッピングを楽しみながら、他愛ない話を交わす。「確かにそれくらいなら今からでも出来そう」とお誂え向きに見つけたアクセサリーショップには足を踏み入れて。)因みにどう言うのが似合いそう?面倒そうなのも含めて。(ピンやカチューシャの辺りを重点的にまわりつつ、来年以降も視野に入れてまた問いを投げる。天使に悪魔、魔女の帽子風に幽霊の花嫁、動物の耳にかぼちゃお化けモチーフの飾り、童話のヒロインをイメージしたものまで季節柄豊富に取り揃えられていることには思わず驚いたようにまばたいた。それから漸く彼の顔ばせを見上げたところで、思っていたよりも近い位置にいたことに気付いたのだろう。息を呑んで一拍、耳にほんのり熱を上らせながら返す言葉に迷ってくちびるを閉じる。)でしょ?まぁ、多分御調は何着ても着こなすだろうから、着たいものがあればとは思うけど……揶揄わないの!その意地悪、困るのは御調なんだから。(獲物位選ぶだろうと口に仕掛けたところで、やっぱり何だか複雑な心境になるからそれについてはむすめの願望ともあわせて閉口。ときめきあらわす頬の朱は薄化粧で誤魔化される筈だと顔ばせごと視線を逸らしながら、そうと彼の顔ばせに触れてやわく押し返すように距離を取ろう。)折角付けるなら御調も付けられるのにしよ、御調は何が良い? やっぱりジャックのがハロウィンっぽい割に普通の服にもあわせやすいかなぁ。

御調久遠 ♦ 2021/02/13(Sat) 16:59[167]

まぁ11月下旬くらいからイルミネーション始まるしな。任務が入ってこなけりゃ、行くか。(去年のイルミネーションは確か任務の折、高専の先輩たる補助監督と一緒に見たのだったか。意外にもロマンチストな一面がある件の先輩を揶揄ったのはそれなりに記憶に新しい。ゆえ約束と言うにはあまりにも簡単な言葉を結んで、彼女の後に続いてショップに足を踏み入れた。)そーだなぁ……オレが吸血鬼なら、シスターとか? イマナミはなんかそーいう大人しめのが似合うイメージだわ。(髪色などを加味すれば和装なども似合うだろうとは所感であるけれど、黒いベールを見つけたなら彼女のほうへと向けてみて「どう?」と示す。されど本格的にするつもりがないのなら、今日びはジャック・オ・ランタンの髪飾り程度に留めるのもいいだろう。まあそこそこな手応えが返って来たならくつりと笑みをひとつ落とし、大人しく身を引いた。もちろん相手は選んで揶揄っているつもりだが、それをわざわざそれを口にするのも野暮だろう。)オレはそもそもこの恰好自体が仮装っぽく見えるからイイんだよ。 ンな眼帯してるヤツなんてそういねえし、見ようによっちゃ海賊なり吸血鬼なりに見えんだろ。(黒ずくめの衣装は吸血鬼に、ともすれば革のアイパッチは海賊のように見えるであろうとは私服と呼ぶには些か特殊な自分の格好を自己分析しての見解。コートの下に着ている白衣だって、マッドサイエンティストの仮装だと言えば納得されるやもしれない。そんな折、ふと目に入ったアクセサリーを指先で掬い取る。)それとも仮装はナシで、お互いこのくらいで収めるか?(そうして示したのはジャック・オ・ランタンがぶら下がった安物のブレスレット。これでも十分ハロウィン気分は味わえるだろうと。)

今波燈 ♦ 2021/02/13(Sat) 18:53[168]

楽しみにしてる。(やわらな笑みが素直に喜色を示して零れ落ちる。ふたりでアクセサリーを選ぶ時間は何だかひどくおもはゆさを煽るけれど、その分楽しんでしまおう。選んで貰ったベールはいつかのようにあてながら「どう?」と小首を傾いで同じ言葉を返し、はにかんで見せることもあった位だ。結局何方かを選べない強欲さは相も変わらず、ベールとブレスレットを手に取って会計を手早く済ませたなら、値札だけ外して貰って彼の元へと戻る。)シスター位なら準備するのも難しくないだろうし、このベールも使えるだろうし……良いよ。来年御調が頑張ってくれるなら期待して準備しとく。 まぁ、今年は私も折角だしベール被る位はするけど、御調の分もってことで……はい、これ。(会計時、二つ無いかと聞いて手に入ったブレスレットはお揃いにした。押し付けるように彼にブレスレットを差し出せば、ウィンドウショッピングを再開。ベールを被り、こっそりカーディガンの下にむすめの分のブレスレットをぶら下げて、暫しふたりで過ごせるこのひとときを満喫するつもりだった。)あ、あんまり遅くなると今度はカフェタイム……は今もだろうけど、早めのディナーとか閉じちゃうとこもあるだろうしランチ終わらない内にどこか入ろ。色んなの食べたいけどやっぱりパスタとデザート食べられるとこが良いな。ランチ終わったら何処かにお茶しに行くのでも良いんだけど。御調、こう言うのは嫌とかある?(彼の希望があればそこに入ってしまうつもりだったが、そうでも無ければ近場のイタリアンにでも入ろうかと念の為確認する体で小首を傾いで。)

御調久遠 ♦ 2021/02/13(Sat) 22:27[169]

(どうせ贈るのならもっと高価なものにしてやりたかったという気持ちはあったが、それはまたの機会でもいいだろうと「イイんじゃね」ベールをあてた彼女へ相槌を打ちながら想う。あれよあれよという間に会計を済ませてしまった彼女の素早さには面食らったように瞬いたが、ある種強引な一面もある少女だったと思い出せば納得も出来よう。来年の話が持ち上がれば勘弁しろよって言いたげに面を苦くしながら。)仮装してやるだなんて言ってねーだろ。しても外歩くのは勘弁。(と言っておきながら家で仮装するほうが意味がわからないなと間抜けな絵面を想像し「……すンなら外だけど年齢考えろよ」と冷静な一言。今年で齢25、行事にはしゃぐような年齢ではない。ブレスレットを差し出された折こそ「オレに?」なんて意外そうにもしていたが、なんだかんだ礼を告げたのちに利き手の左手にぶら下げた。男のハロウィンレベルが若干あがった。)いンや、喰えりゃなんでもイイ。 言ったろ、味覚死んでるからなに喰ったってわかりゃしねーってよ。……パスタならそこのイタリアンにするか、中々小洒落てるし。(味覚を失くしている件については大怪我を負った折、看病してくれた彼女へ暴露したことのひとつだった。彼女の要望を聞けば候補は絞られたも同然、すぐに目についたイタリアンは流石東京にある店というか先刻まで滞在していた田舎のぼろい店と比べれば随分と洒落ていて、落ち着いた雰囲気の店だった。ここならば話をするのも丁度いいだろうと彼女の意思を伺い次第、店内へとエスコートするはずで。)

今波燈 ♦ 2021/02/13(Sat) 23:46[170]

それ、仮装の話を持ち出した御調が言う……? まぁ、どうしても嫌なら今日みたいに軽いやつね。それこそひとりでするのは流石に痛く思われそうでちょっと……。(意識してのものではなかったが、彼と共にいられる時間はむすめのものに費やす時間はあまり多くなかった。彼に選んで欲しいものがあれば話は別だけれど、それより共有出来るものを見たがった。そうすることで、急かさないで済むと思っていたから。ゆえに此度も同じで、まさか贈り物を考えて貰っているとは思ってもみなかったのだ。彼のおもいも露知らず、無事に彼の元へブレスレットが渡ったのを確認すれば眦下げてわらってみせる。誰も知らぬだろうお揃いに、ちょっぴり気分が上がった。)覚えてるよ。でも、こう言う匂いのものは嫌とか食感が好きじゃないもの……食べやすいものが良いとか気分ってあるじゃない?(曖昧だったものがゆっくりと確かになってゆく。彼の味覚についてもそう。聴いた時こそ想像していたとは言え胸の痛みを堪えるように眉尻を下げてくちびるを引き結んだものだけれど、口出しはしなかった。気遣うのは彼に限らずあたりまえの範囲を心掛けながら「うん、賛成!」と首を縦に振って。)あ、ありがとう。 御調、何でも良いなら同じのにする?(彼のエスコートを受けるのは慣れているようでどうにも慣れずこころが騒がしくなるから、平静を装ってでもいないと緊張で椅子にでも足を引っ掛けてしまいそうだ。その後は店員が促してくれるままに席へつき、彼と共に覗き込めるようメニューを広げて暫しメニューと睨めっこを始めたことだろう。――結局、本日のおすすめAセットと言うプレートを頼むことになるのだけれど。)

御調久遠 ♦ 2021/02/14(Sun) 12:28[171]

イマナミはしねーの?って聞いただけだろ、別にして欲しいってわけでもねえし深い意味はなかったンだけどな。(事実彼女が仮装をしようとしまいと本心はどちらでもよかった。他愛ない会話の一端として、目に入ったものから話題を取り出して伝えたに過ぎない。とはいえ彼女が乗り気であればそれを否定するつもりもなく、自分が仮装するかは置いておいて、存外満更でもなさそうな彼女を見れば来年は期待出来るかと彼女が買ったベールを見ては薄く笑んだ。)あー…まあ、匂いがキツいもんは確かに嫌い、かもしれねえな。ニンニクとか、あとは納豆もだめだわ。 けどその辺はイマナミも昼に食ったりしねーだろ?(挙げたふたつは女性が昼に食べ難い食材であることは知っている。ゆえ昼食のチョイスを彼女に任せたとしても問題ないだろうと踏んでいるがさてどうだったか。登りのエスカレーターは女性を先に乗せる、反して下りのエスカレーターはは自分が先に乗る。他にもそうした細やかな気遣いだったりエスコートは、それなりに見せてきたつもりであった。ランチの時間にはギリギリ間に合ったといったところ。同じものを、との言葉には「じゃあそーすっかな」と同意を示し、テーブルに置かれた水を一口。少女が注文を決めた頃に店員を呼んだならあとは料理が運ばれて来るのを待つばかりといったところで、いつになく真摯な黄昏が彼女を見つめた。話の切り出しに迷うような沈黙を挟んだのち、静かに唇を開いて。)──オマエさ、今、一人暮らしとかしてる? 

今波燈 ♦ 2021/02/14(Sun) 17:46[172]

(どれも一理あると言われればそう。言葉にするか悩んだのはそれなりにし難い光景を思い浮かべてのものだったから「まぁ、ね」と曖昧な相槌に留めておいた。幾度繰り返しても慣れぬものがあるのは付かず離れずの距離ゆえの産物であるのだが、それこそ口にしたところで惚れた方が負けを立証するだけだろう。ランチを注文して暫し、手持ち無沙汰にコップに手を伸ばして喉を潤せば視線がふと交錯する。コップの縁に指を滑らせ言葉に迷うように水中で泳ぐ氷に視線を落としたものの、声音が空気を震わせたなら意を決して再び彼の眸子を見遣り、おおきなまばたきを一度。)……?ああ、そっか。ちゃんと話して無かったもんね、その後のこと。 まだ高専にお世話になってるの、細々したことを手伝うことを条件にして情報が欲しいって言って。報せてもいないのに御調の情報が私に届くの、おかしいなって思わなかった?(常なら揶揄めいた口吻となろう台詞も今は懺悔めいた色が乗る。決して隠すつもりは無かったけれど、その後のことをわざわざみずから語らなかったことには変わらないから。眉尻下げた顔ばせであわく笑みを浮かべる。)これからも手伝い続けるつもりではいるけど、そろそろ部屋は出るつもりでいるよ。元々5年の約束だったしね。(次を急かして強請ることせず、ただ事実を語る。――それが、今まで。何時になく静かなさまに、話したいことにかかわっているのだろうと踏んでちいさく首を傾いでその先を促して。)

御調久遠 ♦ 2021/02/14(Sun) 18:55[173]

(なにかあれば言えとはいいつつ、思えば男が彼女のプライベートを問いただしたことは恐らくない。Xより攫ってきた時から数えれば彼是4年以上の付き合いになるというのに、そこを言及しなかったのは興味がないというより単純に気にしてこなかったというだけのことだった。呆気に取られたような大きな瞬きを見遣ればその反応も当然というもので、思いの外高専が少女らの生活を長く保障していたことについては驚きもしたが、聞けばなるほど納得も出来よう。)そこンとこ、オレもあんま深く考えなかったからな。言われてみりゃそーか。オマエ、オレの任務のこととか結構把握してたし。(はじめこそよく高専に顔を覗かせて任務報告なりをしてきたけれど、一級に昇級して任務に行きっぱなしという機会も多くなれば何時しか自然とスマホでの遣り取りも増えていた。会うのも基本外が多くなれば殊更その現状を知ることも難しく、無知を恥じるように頭を掻いた。されどそろそろ出るとの言葉を聞けば、愈々考えるように双眸を伏せる。プレートとセットのサラダとポタージュがまず机に運ばれてきたなら、一瞬だけそちらに意識を向けて、それから再び彼女を見つめた。)そンならさ、一緒に暮らさねえか。 つって忙しいから家帰る機会もそうそうねえだろーけど、イマナミがよけりゃ今広尾で家借りてる家に来るンでも、オマエの大学が近い所で新しく家借りるンでも、ドッチでもイイ。(ゆっくりとした語り口調で告げながら、手持ち無沙汰の左手がフォークを掴む。くるくるとナイフを転がすように手許で暫し弄んでから、そのままサラダのレタスへとフォークを突き刺して。)生きてえとは未だに思えねえ。けどイマナミに「おかえり」って言ってもらえんのは悪くねえなって、……一緒に住むようになりゃよ、オマエがオレの帰る理由になるかもしれねえなって、最近、想うンだよ。 ま。あのヒトと違って最強じゃねーし、死ぬ時は死ぬんだろーけど。

今波燈 ♦ 2021/02/14(Sun) 20:38[174]

御調が私のことを気にしてくれるのは分かってたけど、御調と連絡取れなかったらアウトだなって思って。高専にいた方が利点も多かったの。(呪力こそ使えないが、むすめの知識も単純な人出も邪魔になり過ぎることはないと踏んでのことだった。完全プライベートのみでの出会いに限られてしまえば彼の情報を得るのは更に難しかっただろう。勿論その保障から外れて尚居続けるのは難しかろうが、情報と引き換えに働けることを示すための価値作りは数年掛けて積み重ねてきたつもりである。彼の様子を探るように視線を外すことなく静かに見守る心算でいたものの、並べられる品目に「ありがとうございます」と反射のように口にして。)――、(息を呑んだ。耳を疑った。でも、この話題で期待しなかったと言えば嘘になる。空腹だったことも忘れたように手はカトラリーに伸びず、思考が刹那止まって双眸が揺らいだ。くちびるが何かを紡ごうとして開くのに、何にも言葉にできないまま空気を食んで。)大学は、もう少しで卒業だから気にしなくても良いけど……カノジョじゃないと、部屋に入れないんじゃ無かったっけ?(声が震える。所謂シェアハウスのイメージだったとしても、彼が差し出してくれた道はむすめにとっておおきな変化と希望を与えてくれるものだったから。冗談めいた口吻にでもしなければ、すぐに双眸に湛えた滴が零れ落ちてしまいそうだった。)……また、そんなこと言って。喧嘩になるよ、私と。 ひとりに何かしたら、また泣くから。(眉尻を下げながらあわい笑みをひとつ。)でも、良いよ。信じて、待っててあげる。御調がそうやって言えるようになるまで、一緒に生きていこうって私が御調の分まで言ってあげる。……おかえりってちゃんと私が言えるように、御調が帰ろうっておもってくれるなら。それが今、一番たいせつなことだと思うから。(あたりまえがあたりまえじゃない奇跡を知っている。とこしえに続くものを願っても手に入らないことがあることも理解している。いまだって、たいせつだからうしなうのがこわくて仕方ない。それでも、欲しがることを止めないし、止めたくなかった。「私からも、ひとつ良い?」とちいさく首を傾ぐ。)私の、決意表明みたいなの。御調に、って言うより、御調だから今、聴いて欲しい。

御調久遠 ♦ 2021/02/14(Sun) 22:03[175]

(恋慕と思慕の違いを考える4年と9ヶ月間だった。答えを導き出すのに随分と掛かったのは本気で他者を想ったことなど一度もないことと、気付いてしまったら最後、もう後戻りが出来ぬゆえだ。常に死を見据える男が帰る場所を作っていいものかと悩みもしたが、諦めたくないのだと言った彼女は宣言通りこの数年ずっと御調の近くにあった。彼女の幸せを真に願うのなら手放すべきとわかっているけれど、おかえりなさいが返ってくる幸福を自覚してしまった以上もうこの手は離せない。冗談めかした口吻が彼女の口から飛び出せば、そういやそんなことも言ったなって面に苦笑を滲ませて。)ホントよく憶えてンな。これでも特別とそうじゃないモンの一線はキッチリしてンだぜ。(いくらかヤンチャもしてきたが、ある程度の線引きはちゃんとしていると自負している。その上で彼女に一緒に住もうと提案したその意味、それがなにを示すのか。恐らくはもう既に伝わっているのだろうけれど、改めて言葉にするつもりだ。いつも彼女がそうしてくれているみたいに。)オマエが好きだ。守ってやりてえし、しあわせにしてやりてえと思ってる。 けどオレは呪術師で、いつ死ぬかわからねえ。任務のたびにオマエをひとりにする可能性は常に付いて回るし、絶対死なねえとはやっぱり言ってやれねえ。──だから改めて考えちゃくれねえか、それでもオレと一緒に居られるかどうかをよ。時間はたっぷり使ってくれて構わねえから。(常に死が付きまわる仕事であると理解したうえで、ひとり残される可能性があると知った上で、それでもこの手を取れるかどうか。彼女が男に時間をくれたように、男もいますぐ彼女に答えを求めたりはしない。決意表明とやらには促すように頷きをひとつ。結局前菜に手を付けられないまま、メインのパスタも運ばれてくるだろう。)

今波燈 ♦ 2021/02/14(Sun) 23:47[176]

(元々疑ってはいなかった。彼のとくべつである自負は、彼が伝え続けてくれたことでむすめの中にも在ったから。まばたきひとつで、おおきな滴が零れ落ちてゆく。おずおずと店員が端に寄せてくれたメインの料理に口出す余裕は既にむすめにはなく、ときめきなのか幸福なのか、初めて覚えるぐちゃぐちゃな感情のせいか胸が熱くなって詰まるような心地さえ味わっていた。そんな中でも、確かなことはある。例えば、)嫌だよ、止めなくてもそれはずっと言い続けると思う。好きなんだもん、一緒にいたいって思うのは仕方ないじゃない。ひとりにしないで欲しいし、それでも“大丈夫”何て言えない。でもね、(一拍間を空けたのは、やわらな笑みを浮かべて見せたかったから。だって、考えるまでもなく即答できる。)だからって一緒にいないことを選ぶ理由にはならない。 もう、御調は私にとってしあわせになって欲しいだけのひとじゃないの。私をしあわせにしてくれるひとで、一緒にしあわせになりたいひとだから。(てのひらを強く押し付けて止まらぬ涕涙を拭う。普通のしあわせは何だか知らないけれど、欲しいのは彼と紡ぐしあわせだ。奇跡だ。例えこれからまた幾度も涙するとしても、数年を経ても尚変わらぬ気持ちがそこにはあった。震える声音には精一杯のおもいを込めて。)私ね、御調が諦めろって言った時からずっと考えてたことがあるの。きっと、それって一緒にいたら強くなっていくんだろうなって予感してる。――やっぱりね、私はそういうことも含めて諦めたくないし諦められないと思う。御調はひとりじゃないし、ひとりで全部決めちゃわないで欲しいなって思ってる。それこそ、今すぐ全部の答えを出さなくて良いことだと思ってるしね。(分からず屋で可愛げのないむすめだけれど、このおもいばかりは本物だ。むすめのおもいを乗せた天秤が、もう少し恋か愛かに傾いていれば頷くことも出来たのだろう。もう少しでも、むすめが強欲で無ければ得心したのだろう。しかし、むすめはぜんぶ欲しがった。でも、だからこそ此処まで来られた。)だからね、……もし御調と私がどうしたら一緒にいられるのかを考えても良いって、未来の御調を、今の私を信じてくれるなら。私はまた、頑張れると思うの。この手を離さないために、離したくないっておもって貰うために私には何が出来るんだろうって、全部叶えて貰うんじゃなくていいから、ずっとずっと考えていきたい。御調と一緒に。 あの時よりももっと、今の私は御調が好きだから。御調と一緒にいられて、私はしあわせだもん。(だから、彼がむすめと一緒にいて少しでもしあわせだと思ってくれていたならそれ以上のさいわいなんてないと泣きわらって見せただろう。世界でたったひとり、たいせつでうしないたくないひと。手離して欲しくないって、その手を包んで伝えたい。むすめが手を取るのは彼だけで、彼のいない世界何て考えられないし、彼のいない人生何て考えたくのもないってことが伝われば良い。「その時にはきっと手離してあげられないし、御調が御調のしあわせを諦めるのもゆるしてあげないから覚悟しててね」と軽口を叩いて見せる辺り、少しだけ強くなれたのかもしれない。むすめは、彼のそばにいられたから。言い切って初めてむすめはまた顔ばせをはにかむように緩め、言葉を尽くしてこころをささいだ。しあわせは、ちゃんとここにあるよって伝えるために。)

御調久遠 ♦ 2021/02/15(Mon) 01:09[177]

(黒曜の瞳から零れ落ちる涕涙を見遣ればまた泣かせてしまっているなと眉尻を下げる。しあわせにしてやりたいと謳いながら、あと何回、こうして彼女を泣かせるのだろう。口にした言葉は残酷で幸福とは程遠く、ちっとも甘いものなんかじゃない。死を前提とした付き合いなんて自己都合もいいところだ。過日似たような言葉を告げたことはあるけれど、彼女の人生を左右するものなれば何度だって音にして伝えよう。)──…、……一緒にしあわせになりてえって気持ちはさ、なんとなくわかるよ。だから一緒に暮らしてえって思ったンだし。 けどオレの手を取るンなら、恨もうと呪おうと構わねえから、最低でも置いてかれる覚悟くらいはしとけ。(大丈夫と言う必要はない。絶対に赦さないと泣いたり、或いはこの魂を呪うことだって彼女の自由で、駄目だと縛り付けることだってしない。唯一持っていてほしいものはこの世に久遠などありはしないという感覚。永遠に続くものなどない。だからこそ今が尊く愛おしく、悔いなく生きようと思うのではないだろうか。少なくとも男はそう思っている。諦めの悪い彼女と、常に死を見据えている男では、きっとこれは相容れぬ考え方であるのかもしれない。ひとりで決めないでほしいと彼女はいうけれど、呪術師として生きると決めた以上、前にも言ったように仕事を終えたら必ず家に帰るようなそんな当たり前の生活を、普通のしあわせはやれないのだから。)オレは生憎と未来は見れねえが今なら見れる、見てえって思ったから、オマエにこうして訊いてる。……一緒に考えていきてえってオマエは言うけど、たぶんこればっかりは変わらねえと思うンだわ。 だってよ、オレは呪術師なんだ。テメエのしあわせより呪いを祓って死ぬことを選んだ呪術師なんだよ。ンで、その癖イマナミがほしいって無茶なコト言ってんの。酷え男だろ。(一緒を望む癖に永遠はなく。しあわせな未来よりも今の幸福を噛みしめたい。それに彼女を巻き込もうとしている、都合のいい男だ。なんなら引っぱたかれたって可笑しくない。その覚悟もある。「別にオレはさ、今でもしあわせだと思うけど」と呟いて、はにかむ笑顔に薄笑みを返したなら、冷めた食事に手を付ける。店を出てそののち少しウィンドウショッピングをはじめた頃には、日はすっかり暮れ始めていた。)

今波燈 ♦ 2021/02/15(Mon) 02:34[178]

やだ。……けど、どうしたら良いかって言うのはちゃんと考えるよ。答えが見つからないなら、どうしたいのかってちゃんと自分のこころに聞く。 それじゃ、だめ?(彼にまた願いを掛けるなら、むすめにだって掛けられるべきだ。聞き分けのない嫌を語りながらも、彼のおもいが分からぬと突っ撥ねない位には成長したつもり。彼の誠実なやさしさに応えるべく、ゆるやかに相槌を打ってむすめなりの決意表明に変えた。)さっき言ってたじゃない。御調はまだ、生きたいとは思えないって。 だから、御調は今答えを出さなくて良いの。御調がそうやって終わらせちゃわないように、私はそばにいるから。(未来も今も、比べられない位たいせつで諦められない。それがむすめのこころの在るがまま。諦めたくない、我が儘だ。「今よりももっと!」とだけは返してから、漸くむすめも食事に手を付けた。冷めた食事でも美味しいってわらえるのは、一緒に食べてるからだと知っている。ご馳走様と手を合わせお店を出たのち、駅前広場の通りの中央でぴたりと足を止めては彼の服の裾を捕まえんと手を伸ばして。)ねぇ、御調。私ね、御調が思ってるより、きっと、ずっと我が儘だよ。――全部欲しいの。御調のことを責められない位。 だからね?良いじゃない。我が儘言って、欲しがってよ。それを無茶かどうか決めるのは、御調ひとりじゃないんだから。(多分、酷いのは彼だけじゃない。むすめもそうだ。その傲慢さを理解しながら、彼の前に向き直って真っ直ぐにその顔ばせを見上げる。)呪術師としての御調も信じてる。だから待つつもりでいるし、これからも「行ってらっしゃい」って言うよ。 けど、私は今こうして目の前にいてくれる御調久遠が好きだし、たいせつだと思ってる。だから「おかえり」って言って、帰る理由になりたい。ならせてよ。(夕暮れの橙がむすめの双眸の朱を塗り替えた。緊張で高鳴る胸をおさえるように空いた片手で深呼吸。次いで両手を伸ばして彼の両頬を挟むように捕まえられたら良い。だって、)信じてて、久遠。私と、あなたを。(世界にただひとりだけのとくべつなひと。そうとその顔ばせを引き寄せては爪先立って、額を合わせるつもりだったから。あわよくばキスを攫ってしまう位の心算で。)

御調久遠 ♦ 2021/02/15(Mon) 11:33[179]

やだってオマエな──(こればっかりは職業柄どうしようもない、どうにも出来ぬ事実だろうと諭そうとして言葉を飲みこんだのは、次ぐ言葉に彼女はなにもかもを承知の上で言葉を向けてくれているのだと気付いたからに他ならない。ならば男が彼女の覚悟に口を出すのはきっと野暮で、男のそれが要らぬ節介であると漸く自覚したならば「……いい。好きにしろ」と投げ遣りに聞こえなくもない言葉を投げながら、反してその声色は柔らかく響いたはず。生きたいとは未だ思えずとも、生きるのは悪くないと感じ始めた時点で男の世界は既に変わりつつある。それなりにしあわせを感じている現状、この更に上があるだなんて中々想像に難しいが返る声色にはくつりと笑って、「わかったわかった」と軽くあしらいながら彼女にも食事を促そう。斯くして店を出て暫し。服の裾を引っ張られる感覚に足を止めたなら、前に向けていた黄昏を彼女へと流して。)……ハハ、全部欲しいなんざ強欲なオンナだな。イマナミのそういうところ正直面倒くせーって思ってっけど、嫌いじゃねえよ。 わかってンなら、イイ。オマエの譲れねえモンも理解した。応えてやれるかはわからねえが、まァそれもイマナミの力量次第ってコトで、(この先どうなるかなんてわからない。死ぬも生きるも運次第。けれど幸せは彼女が諦めぬというのなら、そこに身を任せてみるのも一興か。応えてやれるかやれないかはその時次第、今はただ、お前が傍に在ればそれでいい。頬に触れる手に瞬いたのも刹那、されどふたつの影が重なる直前、バイブレーションの音が幾度目かの着信を報せたなら「……悪い」と一言断ってから電話を取った。)もしもし。伊地知センパイ、だから今日は悪いが戻れねーって──…は? 渋谷? ……ああ、わかった。マークシティで禪院の爺さんらと合流すりゃイイんだな。車は……そうか、ンじゃすぐ行くわ。(スピーカーにせずとも近くに居た彼女にも鬼気迫る声は届いたであろう。渋谷に大規模な帳が下り、一般人が多数閉じ込められているということ。仕掛けているのは恐らく呪詛師。つい先日東京校と京都校の交流会が襲われただの、宿儺の器が現れてからというもの呪霊の動きが組織的なものになっていることは聞いていたゆえすぐに状況を理解したなら電話を切り、彼女を見つめるの面はすっかり術師なり下がっていた。)ンなわけで悪ィが早速任務だ。行ってくる。 ……サクッと片付けてくるからよ、おかえりって言う準備でもして待ってろよ。

今波燈 ♦ 2021/02/15(Mon) 17:20[180]

(得心しようと努力しようものなら鼓動さえ止めたくなりそうな今だから、成長を経てもなおむすめの危うさの残滓は窺えよう。しかし、理解せずに見ぬ振りをするつもりもない。それを知ってもなお、求めてしまうものがあるだけ。ゆえ、あわい笑みを深めて眦を下げた。かろやかなあしらいには不満げに横目で視線を向けたものの食事に意識が移れば追い掛けることもなく。)面倒な女を見付けちゃった不運でも嘆いてて。ついでに、可愛くもなければタイプとは正反対の女に捕まっちゃったってことも一緒に自覚しておいて。(おもはゆさゆえの不遜な口吻は冗談めいていて、自然と双眸も細まる。どうやらむすめはこう言ったことに於いて根気強く在るようだから、いつかを願って「頑張る」とわらっていよう。バイブの音がふたりのあわいに響いて思わず手が震えたのもたまゆら、触れていた手と共に一歩引いてそのさまを見守る。冷静になればものすごく恥ずかしいことをしたような。今度こそはっきりと耳に熱が上って頬に手をあてつつおおきな息を吐いてはみたが、どうやらそれどころではないらしい。流石に胸中の動悸は直ぐに意識を変えられないけれど、眉尻を下げて相槌を打つ位はお手の物。)うん、(緊迫感に思わず伸ばしかけた手を、冷たくなった指先をそうと握りこんで、そのまま胸元へ。されど揺れる眸子があらわすような苦しさばかりではなくて、紡がれる言葉が今までと違う音が聴こえて来るような心地になるのは確かな信頼と、このおもいに由来する気持ちゆえのものなのだろう。ゆうるりとまばたきを一度、震える吐息を漏らしては瞼を持ち上げて。)高専で待ってる。それで、一緒に帰ろ。連れてってくれるんでしょう?(高専を選んだのは元より今むすめの居住がそこにあることも理由のひとつだが、それ以上にむすめにも何か出来ることがあるかを確認する意味でも必要になろうとの判断である。連絡役として誰かしらは残っている筈だし、現場にそのまま赴いたところで出来ることがあるとは限らないから。もどかしさにひと息つけども、今出来る精一杯の頬笑みで。)……行ってらっしゃい、御調。気を付けて。

御調久遠 ♦ 2021/02/15(Mon) 21:32[181]

面倒なオンナを好きになったオレも大概だけどな。……ま。タイプだからって恋愛対象になるとは限らねえってこった。それに男の言うタイプってのは──いやコレはオンナにする話じゃねえな。(男同士ならばまだしも女性相手に言うことではないだろうと思い直しては口を噤む。万一問いただされようものなら「ま。くだンねえ話だ忘れろよ」と適当にはぐらかした筈。空気を読まない着信の知らせは確認した限りでも数十件以上、一方的に電話を切ってからなんと驚くことに10分置き毎に掛かってきていたようで、必死に連絡を取ろうとしてくれていた先輩の努力をしみじみ感じては今度缶コーヒーでも奢るべきかと暢気に考えて。)ん? ああ。そーだな、高専で待ってろ。……任務が終わったら一応連絡入れるけどよ、その前にもし高専から避難命令が出たら、オレの連絡は待たずにソッチに従うコト。いいな? いい子に出来たら、ちゃんと迎えにいってやっから。(だから男の自宅の鍵は彼女に渡さずに、持ったままで行くつもりだ。電話口から感じた緊迫感と長年培った勘が、此度の任務は常のものとは異なると告げている。だがそれは男の歩みを止める理由にはならなかった。どうなるかわからないなんてそれはどの任務にも言えること。加えて男は数少ない一級呪術師、若い後輩が居るともなれば殊更招集に応じないような真似は出来ない。)ああ。イマナミも、出来るだけ早く高専戻れよ。なんなら高専にツケてタクシーで帰れ。 ──…それと、コレは忘れモノ。(言うと同時に彼女の手を引くことが叶ったならこのかいなへと誘って、風のように軽やかな手腕でその薄く色付いた唇を淡と掠め取ってしまおう。眼差しが交われば不敵に笑って、今度こそ背を向けて大通りのほうへと歩いけば軈て男の姿は人混みへと消える。東京駅周辺に待機していた補助監督の運転する車に乗り込んで、渋谷を目指す。この折はまだ渋谷がどんなことになっているのか、なにも状況を知らなかった。)

今波燈 ♦ 2021/02/15(Mon) 23:03[182]

突っ込まないであげたのに。(ちいさな笑い声が上がる。曖昧に濁された話題に疑問符を覚えられるほど初心でもなくて、それこそいつか絶対見返してやるとひとり決意したことは暫くの間ひみつにしておこう。「分かった」と相槌を打ちながら、)ちゃんと信じて待ってるから安心して。避難の話が出るようならちゃんと従うし、手伝うにしても心配かけないように気を付ける。(余程の事情がない限り「約束する」と紡ぐそれをむすめが破ることは無いだろう。それこそ待ってろと言ってくれた彼に対し、むすめが示せる精一杯の信頼の証左だと思うから。)うん、そうする。電車だとどうしても迂回しづらいとこあるし、そこでタクシーを拾うよ。(彼の言葉にひとつひとつこたえ、そのまま彼の姿が人混みの中へ消えてしまうまで見送るつもりだったのに。補足するような言の葉が鼓膜に届くや否や、からだが傾いた。手を引かれたのだと気が付いて「っ?」と驚いたようにまばたきを繰り返しながら彼の方を見上げたところで、――ぬくもりが触れる。薄く開かれたくちびるにあまやかな痺れが走って、胸が高鳴ってゆく。今度こそはっきりと頬が紅潮し、おもはゆさに胸が疼いたことをあらわすように睫毛が震えた。)、 ――久遠。(まろび出るその名に、彼の生を祈る。彼とのさいわいをこいねがう。くちびるに残る熱を辿るように指先でなぞってはゆっくりとまばたいて、てのひらが口元を覆っていった。そうして、交錯するまなざしにいつかの光景が過ぎる。むすめがたったひとりときめくひとと決めた、愛しいアンチヒーロー。御調久遠。彼がたたかうと決めたなら、むすめもそうしよう。不安とたたかって、彼を信じて待とう。我に返ったむすめがささめくように「行ってらっしゃい、気を付けてね」と再び紡いだのぞみを詰め込んだあかりは、彼に届いたろうか。)

御調久遠〆 ♦ 2021/02/16(Tue) 18:07[183]

(「約束する」と彼女の口から出た以上それを違うことはないのだろうと思う。されどこれまで共にしてきた経験で彼女は御調の身が危ないとなると無茶も厭わぬ行動に出ると知っているから、手伝うなる言葉を聞けば訝しそうに眉を顰めもしたはず。だがその懸念もなにもかもひっくるめて彼女に待っていろと、いい子にしていろと言ったのだから、肯定を貰った以上信頼するより他にないだろう。)間抜けな貌。(彼女の反応を見遣れば不意打ち成功と言わんように薄ら笑み、呼ばう名に応えるよう片手を挙げてみせるのだ。一時の娯楽であるならまだしも、本気の恋など生涯無縁なものだと思っていた。借りているマンションも殉職してもすぐ片付けられるように部屋には必要最低限の生活家具しか置かず、そこに極力生活感を感じさせぬよう努めてきたというのに、やはりなにが起こるかわからぬのが人生だ。色のないこの世界に鮮やかな燈が灯ってゆくような心地を覚えては、過ぎゆく景色を黄昏に映す。──斯くして19:40。御調久遠、渋谷に到着。他術師との合流を待つ。)

(2018年10月31日、20:14。帳外、渋谷マークシティ レストランアベニュー入口。)ハハ。 一般人にまで求められるなンて、五条サンってば人気者じゃん。(禪院直毘人特別一級術師他昇級査定中の高専生徒二名と合流。補助監督新田明により状況の説明を受けた後暫しの待機を命じられたが、改造人間が非術師を襲い始めたとの情報を聞き21:22、帳内に突入。ここまで班行動を取っていたが伊地知潔高との連絡が途絶えたことを契機に二班に別れ、高専生徒と補助監督の護衛を兼ねて行動を共にする。道中非術師を襲う改造人間の群れに遭遇し、21:30、二名を先に帳外へと誘導してから孤立。人助けなんて柄じゃないとブツクサ文句を垂れながら、非術師を守り戦いに暮れる。)…………ッハ、(23:00。改造人間というだけあって毒素は薄いが流れ込んでくる記憶は複雑で、数を熟せば肉体への負荷も限界に近い。任務明けに加え、高専に解毒薬を取りに帰る暇もなかったゆえ渋谷に持ち込めた薬は注射器3本分。それも底を尽いた状況で、目の前には特級と思しき呪霊が現れたと来た。ポケットに忍ばせた古びた御守に指先が触れる。万全であるならまだしも斯様に消耗した状態で、隻眼で、特級相手に術式なしの肉弾戦を強いられるなど。どう考えても絶体絶命だというのに、男の面を彩ったのは絶望ではなく愉悦だった。死神の鎌が首に掛かっているこの状況下、どうしようもなく心が高揚して仕方がない。イチかバチか。やってみるか? 帰りを待っていてくれている女がいる。生まれてこの方我が身を縛り続けている、父より授かった名もある。このまま無謀に刃を振るって死ぬくらいなら、試してみるのもいいだろう。想像しろ。構築しろ。出来なければ死ぬだけだ。呪力を練り上げ、両の手で印を結ぶ。口許が不敵に歪んだ。)領域、展開────

(渋谷事変戦況報告。一級術師:御調久遠、生死不明。渋谷ストリーム付近の瓦礫の山より発見された焼け焦げた一本のダガーナイフは御調久遠の所有物と断定されるも、他に生死を特定できるような痕跡は残っておらずのちに暫定的な死亡判定が下される。回収されたダガーナイフは遺留品として高専に保管、数多の呪霊の体液が焼け焦げこびり付いた銀は封印を施されたのち、あかりの届かぬ狭く冷たい鉄箱の中で眠っている。)

(『幸福に満ちた久遠の生を贈ってやりたい』──ゆえの久遠。我が身を縛る呪いの名。否、それは我が身の祝福を祈る音。誰よりも恵まれて生まれた、さいわいな男をこの世に留めていた名だった。)

今波燈〆 ♦ 2021/02/18(Thu) 17:36[184]

(彼の語るいいことむすめのそれとが異なる可能性はあるが、彼の力になるか分からぬ策に考え無しに乗って無闇にいのちを投げ出すような真似はもうするまい。彼との約束が今のむすめには在るのだから。帰る理由になると、一緒に帰ろうと告げた癖、むすめが死んでは元も子も無いだろう。彼と別れて向かった高専で、帳外としてある程度の安全保証を得たのち、人手として首都高速3号渋谷線渋谷料金所にて待機が命じられればその配置に否を唱えることなくそこで彼の帰りを待つ。むすめの成長の証左か、彼への信頼か、此度は彼に無茶をするなとは言わなかった。それで彼のいのちが得られると言うのなら、このこころが彼に寄り添えると言うのなら、やすいものだ。ひたすら手を動かしながら、彼の無事を願う。)――……、久遠。(手を休める暇はないが、時折その名を呼んで祈り続けることは忘れない。X関係者に攫われ平穏だった人生は一変したが、幾度人生が繰り返そうともこのこころの在るがまま、今と同じ道を選ぶのだろう。彼が彼のために生きられぬと言うのなら、むすめのために生きて欲しいとおもっているから。一緒の時を歩んでゆきたいから。どんなにそれが寂しさを連れて来るのだとしても、今日も、明日も、その先も、久遠に、彼と共に寄り添いあって“もっと”を紡ぐために。)

――久遠は帰って来るよ、私におかえりって言う準備して待ってろって言ったんだから。ちゃんと迎えに来てくれるって言ってたもん。(それが、渋谷事変戦況報告に対するむすめの第一声。まだ泣かない。これから先、涙するのは彼の前でと決めたから。このこころを動かすのは、彼の姿をまた目にした時だから。守ってやりたいって、しあわせになって欲しいとこうのではなく、しあわせにしたいってわらってくれた。むすめはふたりで在ることを既に選んでいたけれど、彼はむすめに改めて考える時間をくれると言った。彼がむすめを信頼してくれたように、むすめも彼の言葉とおもいとを信頼する他ないだろう。ゆえに死亡判定の話をきいても尚、むすめの顔ばせから希望は消えなかった筈だ。決してこころが揺らがなかった訳じゃないけれど、託したあかりはまだ消えていないと信じている。ひとりを厭う癖、彼を待つ最後のひとりとなったとしても、交わしたおもいとその言の葉こそが彼をこの世へ留めるよすがとなるなら、どうかこのあかりを辿って帰って来て欲しいとおもっている。何もかもすべてを諦めないと彼には公言してあるから、そのナイフの封印には是を示しただろう。むすめにとって、それは彼の遺留品ではない。勿論、彼の所有物であるのならたいせつな品物であることに変わりはないけれど。彼は一度としてむすめに嘘は吐かなかったし、なればこそ彼はまだ生きていると信じられるから。頑ななむすめのこころを動かしたのだから、それこそ彼には責任を取って貰わないと。まだまだ彼に貰っていないものが沢山あって、受け取って貰っていないものも沢山あるのだ。彼と一緒に暮らす夢だってそう、クリスマスのイルミネーションの話だってそう、来年のハロウィンを恋人として一緒に過ごすのだってそう。その先の話は出来ていないけれど、彼の誕生日のことだって予定したいところであるし、そうだ、バレンタインだって一緒に過ごしたい。何にしてもその希望の応えはむすめの力量次第だと彼は言った。ならば。むすめにとって、渋谷事変はまだ続いていた。彼のいのちだけはうしなえないと、ふたりでのさいわいを諦められないと、彼に出会うまですべてを諦めてきたむすめの我が儘。それは、他の誰でもなく彼のことだけはぜんぶを欲しがった、強欲で貪欲なむすめの延長戦。)

(さて、その後の話を少ししておこう。彼の戻りが何時になるか知れぬが、もしそれが時間のかかるものであればのもの。むすめは彼に告げた通り、彼のいない世界の不幸を耐えられそうにないから直近のものだけ。渋谷事変直後ともなれば、むすめの卒業まで時間はある。つまり?――住まいについては一旦保留、むすめの将来は暫定的に宛がわれた事務職として高専に就職する予定に方向づけられる。彼がすぐに帰ってきてくれるならそれでよし、そうでもなければ彼のいのちが見つかるまで空いた時間のすべてをむすめは渋谷での彼の捜索につぎ込んで、その姿を探し求めたことだろう。躓き掛けても、この手を伸ばし続ける。さりとて帰る場所として、いいこにして待っていると告げた以上高専に戻って来ることも違えない。ゆえにむすめは看護の知識を用いながら、外での活動が無茶と止められてしまう時間ギリギリ以降、寝るまでの時間で薬学の知識を深め高専の手伝いを続けるつもり。原家族との邂逅の兆しは見えていないが、それこそ彼が帰って来てから考えよう。むすめのしあわせは彼の生と共に在ることは、既に彼へ伝えてあるから。いつか、あのひとたちには彼と一緒に会いにいけたらよい。恋人だと紹介して、叶うなら家族になろうひと。他の誰かじゃだめなひと。むすめが、唯一我が儘を伝えられるひと。彼と共にふたりで紡いだささやかな約束を胸に、ポケットの中にはカモミールジャスミンの入った古びたお守りを携え、むすめは彼をおもってその帰りを待っている。)

(彼が帰って来たら先ずはどうしようか。何時か彼がむすめにしようとしていたように、怒鳴るのもひとつかもしれない。けれど、きっとむすめは泣きわらうのだろう。「ちゃんと待ってたよ、ずっと」と戀い願ったこのこころを紡いで「遅すぎ、ばか」と減らず口を叩きながら「おかえりなさい、久遠!」って。死ぬかと思うほど心配したけど、むすめが好きだって、一緒に住もうって言ってくれたあなたのことを誰より信じてたよって。精一杯に両手をひろげて彼を包み、恋を謳って、愛をささぐから。どうか、あなたのかいなでこの震えるからだを抱き締めて、いつかのお返しに流れ落ちる感謝の涙を拭って、あたたかなその手でどうか私に触れて。とびきりの思慕も欲しいけど、今はそれよりも溢れんばかりの恋慕をちょうだい。彼の過去の女の子たちに、嫉妬をしてしまわぬように。私はあなたのとくべつ何だって、あなたが教えて欲しい。その声で、その笑顔で。私は、何度だって愛しいその名を呼ばうから。――だって、久遠。面倒で強欲で、傷のある私だけど。私が欲しいって言ってくれたのだから、私をちゃんと受け取ってくれるんでしょう?)

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