御調久遠〆 ♦ 2021/02/07(Sun) 21:20[157]
どうしてオマエはンなに約束に拘るんだよ。死ににきたわけじゃねーつったろ。それとも約束がねえとオレのコト、信用出来ねえってか? まあ、オマエに信じて貰えるよーなコトしてこなかったのはオレだけどよ。これでも一応生きようって努力してンだぜ、じゃなきゃ薬なんざ打たねーで今頃毒で死んでるっての。(進んで死ぬつもりはない。なれど信用されるようなことをしてこなかったから、こんなにも話が拗れたのであろう自覚はある。ゆえ先刻の戦いで震える指先で薬を打たんと試みたように、呪いでも生きようとしている姿は行動で示したつもりだった。それでも心配のほうが勝るというのなら少女の信用を勝ち得なかった男の責任なのだろう。自嘲も滲む。多少の無茶と無謀は階級が上の呪霊を祓うにあたって生きるための策のひとつであると思っているゆえ、それすらも認められぬというのなら、男が呪術師である限り少女の不安は永劫取り除けぬのだろうとすら思ってしまう。約束がこの身と少女を縛るものとなるのなら、容易に結んでいいものでもない。ゆえに時間が必要だった。覇気のない声を聞いて、ひとつ息を吐く。)……なあ、イマナミ。それについては何度も言ってンだろ、いつ死んだって可笑しくねえンだから「絶対」なんて保障は出来ねえって。 オレは今スグ確かなモンをオマエにやれねえ、明確な約束もしてやれねえ。呪術師やってりゃ死とは常に隣り合わせだし、無茶や無謀やンなきゃ生きらンねえコトもある。それが我慢ならねえってンなら、それが辛くてどうしようもねえって感じるンなら、無理に一緒に居る必要はねえとオレは思う。なにもオレは、オマエを苦しめてえわけじゃねえ。(諦めるもなにも、元よりそういう次元の話ではないだろう。これまでの生き方を覆せだなんてはいそうですかと簡単に頷けるものではないし、考える=約束になるのだとしても、この世に絶対はない。これから時間を掛けて、自分の気持ちと向き合ったうえで、結果によっては少女の気持ちに応えてやれない可能性だってあるのだ。少女が男に懐いてくれている大切と、男が少女に懐いている大切は似ているようで恐らく違う。大切に思うからこそ、少女の不幸を願っているわけでもないからこそ、斯様に言葉を重ねられれば殊更に別の選択肢だって提示したくもなる。勝手にしろと告げたように、あとは少女の心に任せるつもりだ。それでも一緒に居ようと思うのか、諦めるのもまたひとつの選択だ。)──じゃあな、イマナミ。 行ってくる。(五条悟の勝利が告げられるまで間もなく。再び呪いの蔓延る敷地へと足を踏み入れれば、気のりはしないが生存者を探しつつ叶う限り呪霊の殲滅へとあたるだろう。無論、傷は増えたが無事に戻ってきたことはいうまでもない。)