七竈王哉〆 ♦ 2021/01/29(Fri) 02:22[54]
(苦言苦情には渋い顔。お説教の類は願い下げと言わんばかりの表情だって結局いつもの戯れの範疇であるのに、怪訝に眉間の皺を深くしたのは付随した言葉のせいだ。X。聞くだけで相変わらず反吐が出そうなその単語を、なぜ彼女が今口に出したのか――幾つかの可能性が脳裏を過ぎって、結局答えを見つける術は持たぬから曖昧な疑問は溜息に帰結。)人に何か言うならまず自分から、っていい子の千鶴ちゃんは知ってる? 俺にそう言うんなら、お前もだよ。何考えてっか知らねえけど、危ないことはすんなよ。死なれても目覚め悪ぃし。(ぶっきらぼうな言葉はされど本音だ。折角この手で助け出した相手なのだから、危険に首を突っ込むことだけは遠慮願いたい。雑な忠告を向ける男は、当然彼女が現今どのような状況に置かれているかなど知る由もなかった。そうして差し出されたてのひらに、)やる。ま、お前が持ってても何も意味ねえんだけど。(乗っけたのは、制服のポケットに突っ込んでいた花札から取り出した一枚。桐の鳳凰柄。呪力の籠った札だから、非術師の彼女にとってはただの紙だ。それゆえこれは、やると称しながらも男のためであることは秘したまま。残りの札の山を再びポケットに雑に突っ込めば、さてそろそろ頃合いか。)んじゃ、俺そろそろ行くわ。手当どーも。(ひらりと手を振り立ち去る所作に、感慨も焦燥も滲まない。なんせ護衛が終わると雖も、彼女らがこの地に暫く身をおくのだと当たり前に信じているのだから。自室に戻る道すがら、ふと視線を落とした手首に巻かれた不慣れな物に指をひっかけて、 やめた。重い重いと思いながら、畢竟、突き放すことなど出来ないのだ。到底他人に許すことなどないと思っていた甘ったるい境界を正面から認めてしまえば、いっそ楽になれるのだろうか。なりたいのだろうか。自問自答の答えは、 )