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【4】(かきあつめた花びら抱えて、)

久百合要 ♦ 2021/01/21(Thu) 23:39[37]

(どれだけ忙しかろうと疲れた、とは思わない。最低限の睡眠時間と休憩は摂っている、それに自分にとって必要な経験だとも理解もしているから体が重くもならないし疲労も感じていなかった。──けれども、任務の難易度は確実に上がっている。気負うタイプではないが無意識下で溜まっていたものがあったのだろうか。少し久しぶりに終日任務のない今日、習慣で朝のランニングは熟したものの追加の自主練に励む気にはなれずに一度部屋に戻って着替えてからは久百合にしては珍しくベッドに倒れ込み瞼を下ろして数分。それでも体に染みついたルーティーンとは恐ろしいものでまったく眠気は訪れず体を起こした。)――……はぁ…、(一度がしがしと髪を搔き乱し、それからきちんと結び直す。ひとりになりたかったはずなのに誰かと話がしたくて――いや、嘘。誰でもいいわけじゃなかった。思い浮かぶは今日で護衛任務が終了する少女のこと。ここ数日殆ど顔すら見ていないがはたしてどうしているのか、きちんと直接顔を見て、その声を聞きたくなった。気付いてしまえば躊躇う理由はないから、自室を出てまっすぐに彼女の部屋へ向かった。買い物に行ったあの日と同じくそっとノックをしてから扉越しに声を掛ける。)……弐那?いるかしら。私と散歩しない?

三須原弐那 ♦ 2021/01/22(Fri) 09:48[38]

(どれだけの夜を越えてもベッドに戻ることが出来なかった。浅い眠りと共に朝を迎えると自然と目は冴える。朝日を浴びながら彼から教わったストレッチを軽くこなして、それから顔を洗ったり朝食を食べたりと生きるための手順をたんたんと踏んでいく。本日はカーキのロングパーカーにスキニーを合わせた。裾にレースが入った、可愛らしいつくりだった。)……、(ゆったりと笑んだまま、思い出すのは先日のとある一件のことだ。断る理由は何もなかったので謹んで受けた。生きるために申し出を受けた。なのになんだろうか、このもやもやは。そんなぼんやりした状態だったから、ノックの音に気が付くのに遅れてしまった。)すみません、今出ます。……ひさゆりさん?(数秒の間をおいてから応え、さらに扉の向こうにいるのが彼だということに気が付くのに数秒を有してしまった。あの日と同じようにそっと開け、彼と分かれば開け放つ。三須原弐那がこうして豪快にドアを開けるのは久百合要にだけだ。)私は行けます。……ひさゆりさんは、毎日忙しいと聞きます、お疲れではないですか?(彼の見た目を見てそう言っているわけではない。情報だけを汲み取って気遣ったふうに繕っているだけだ。相変わらず他人の機微にも、自分の機微にも疎く。されど、彼がそうねというなら休んでもらいたい気持ちはあった。いままでとは違い、今日は彼の心を聞くためにドアと廊下の境をまだまたがないでいる。)

久百合要 ♦ 2021/01/23(Sat) 02:50[39]

(もしかして不在かと思えるくらいの扉の向こう側の沈黙だった。訪ねた相手が例えば彼女じゃなければ、寝ているかも等々他の可能性は挙げられたが彼女に至ってはそれはないだろうと根拠のない謎の自信さえなぜだか。だからノックの後に起きた不自然な間に扉の前でわずかに首を傾げたものの、やがて大きく開け放たれた先に立つ彼女にその疑問をぶつけはしなかった。分かりやすく出迎えてくれた彼女と話したいことは他にあるからだ。たった数日ぶりのはずが随分と久しぶりな気がした。)確かにだいぶ忙しかったわ、あいかわらず人使いが荒いのよねこの学校。でもそんなに疲れては──……いえ、少し疲れたのかも。だからこそ弐那に会いに来たのよ。(疲れてない。そう言おうとして自分でかぶりを振った。疲労というかなり久しい感覚を自覚すると改めてどっと肩の上に降りかかってくるようで、浮かべた苦笑いに少しばかり疲労の色が滲む。でも彼女の顔を見たいと思ったのも事実だから素直にそう告げて腰から屈んでみせればさらに顔同士が近づいて――)……弐那こそちゃんと寝られてるの?私よりよっぽど肌荒れてるわよ、隈もできてる。(ぐ、と眉を寄せてじろじろと視線を巡らせ観察する眼差しは厳しく、まったく遠慮がない。彼女に逃げる素振りがなければ持ち上げた右手の指先でそっとその頬を撫でようと。一歩、境を超えようとしていた。)

三須原弐那 ♦ 2021/01/23(Sat) 20:52[40]

めずらしいですね。(分かりやすく目をまん丸にして言っただろう。会いに来てくれたことがではない。彼が疲れているといったことに、尋ねておいて驚いていた。それと自分に会うこと因果関係が見出せなくて疑問を覚えることはあっても、彼に触れられることには特に疑問を覚えずにじっとして。―そう、じっとしていた。過日以降、ネコのように機嫌をよくしていた少女は静かに笑みを湛えて、不思議そうにその赤い瞳を見つめる。)眠れませんが体に問題はありません。生きてるので。(境界線というものは目に入るものばかりではなく、皮膚と皮膚の間のゼロコンマ以下の世界にも確かに存在している。薄い薄い膜に覆われた秘密一つ。秘密にした理由を、少女はまだ知りえない。ただ危害を加えないと信じている掌を受け入れて。自然な調子で続けようか。)ひさゆりさんは、私に会って疲れが取れますか?(確認もそこそこに、綺麗に整えられたベッドを指さそう。)……お散歩も楽しそうですが、お昼寝はどうでしょう。眠るまでお話して、ご飯までお昼寝したら、きっと元気になれます。(――強い主張ではなく、彼の様子を鑑みるような“提案”が、今初めて少女から彼へとなされたかもしれない。どうだろうかと問う瞳は凪いでいた。無論彼が彼の為に申し出を断るのなら受け入れるが。そうでなければ、こう続けるだろう。「これは私の我儘です。」)

久百合要 ♦ 2021/01/25(Mon) 00:02[41]

(あいかわらず内側が読み切れない笑みだと思う。純粋に見れば機嫌が良さそうなのに、何故だかそうとも言い切れないような気がするのだ。その頬を包み、すぐ目の前で見つめ合っている筈なのに分厚い壁がふたりの間に立ち塞がっているような。)眠れないっていうのはもうそれだけで問題なのよ。ただ生きてりゃいいってものじゃないでしょう。(色濃く残る目の下の隈を親指の腹でそっとなぞる。これはたまたま昨日の夜に夜更かしをしたとかそういう類のものではないことくらい分かるからどうにも心配は尽きない。彼女の人生だから好きにすればいい。そうやって彼女と出会ってからは何だか二律背反に悩まされている。)そう思ったから此処に来たのよ。(だから散歩に――、そう続けようとした声は喉奥に引っ込んだまま。)…………お昼寝? 弐那、ちゃんと分かってる?私は男で、貴女は女の子なの。さすがに同じベッドで寝るのは……──いや、分かったわ。一緒にお昼寝しましょう。ただし、弐那もちゃんと寝るのよ。(指差された先に鎮座するベッドを見つめてから半ば呆れた声音で諭そうとしたところで、”我儘”と言われてしまえば彼女の頬に当てていた両腕を膝に当てて一度項垂れてからすぐに身体を起こした。これが彼女がやりたいことだというならば。それにあからさまに寝不足な彼女を少しでも休ませられるというのなら。一度も入ったことのない部屋の中へ足を踏み入れようか。)

三須原弐那 ♦ 2021/01/25(Mon) 20:50[42]

……確かに、健康的ではありません。せっかくひさゆりさんにいろいろ教えてもらったのに。(彼が忙しくなる前は、なにかと彼の真似をしていただろう。筋トレ、ストレッチ、彼が許すなら他のことも。最近はどうにも体がだるくてなかなか出来ていないそれら。背中を見つけてはついて行き、それが当たり前になっていたからか、)……?(性別に関しては今更どうこうと思う段階を越えてしまっているのかもしれない。ただ彼がいると安心するから、その手のひらが好きらから。離れてしまったことを残念に思いながら。提案が受け入れられたら久方ぶりにふへらと、表情を崩すように笑った。嬉しい、言葉にならないほどに。)ひさゆりさんと一緒ならたくさん眠れます。(ひらりと裾を翻して迎え入れる部屋はこざっぱりしている、何の変哲も洒落っ気もない部屋だ。化粧水やヘアケアは机の上にまとめておいてあり、無駄なものは一切ない。作りは男子寮と特に変わらないだろう。おかしなところがあるとすれば、開けっ放しのクローゼットくらいだろうか。中は綺麗に整っている。ただただ、花のように色とりどりの服がずっと見えるようにしていたかった。)ひさゆりさんは背が高いので、少し狭いかもしれませんね。(少し浮かれたみたいな声で手を伸ばし、ベッドまで歩いていこうか。ゆったりとはいかないベッドに二人、言った通り狭いだろう。)……ひさゆりさんは、何をお話しに来てくれたんですか?任務のお土産話ですか?(さえずる様に言葉は続く、彼の名前を呼ぶ。)

久百合要 ♦ 2021/01/26(Tue) 00:28[43]

……ったく、仕方ないわね…。そんな顔でそんなこと言われたら何も言えないじゃないの。(逆に自分が細かいことを気にしすぎているのではという思いさえ湧いてくるが、すぐにそんなことはないと打ち消した。総合的に考えれば断るべきで、了承した後も本当にいいのかとぐるぐる思考は回ったけれど結局共寝を決めたのは彼女が嬉しそうに笑うからだ。無遠慮に部屋の中を見回すことはさすがにマナーとしてしなかったけれど、それでも開けっ放しのクローゼットの中身は二人で買い物したあの日の思い出で埋まっているのを見て思わず口元が綻ぶ。彼女が花咲く色の服を着て駆け寄ってくるのを見るたびに自然と浮かぶ笑みと同じそれだった。)どうあがいてもシングルベッドなんだから、そりゃあそうよ。弐那、奥にいって。落ちないように。(一人用の寝具を見下ろしてから彼女を壁側へ促したのは万が一の落下があった場合の被害は自分であるべきという考えから。彼女を先に寝かせ、その隣に横向きに寝そべれば顔同士の距離は近づく。だから自然と声は密やかに。)私の話をしにきたっていうよりは、弐那の話を聞きに来たの。どう?なにか楽しいことはあった?……って聞こうとしてたんだけどね。その寝不足の顔見たら楽しかったことを聞いてる場合じゃないわ。(そっと、声のトーンは静かな。)……なにが不安なのかしら、弐那は。

三須原弐那 ♦ 2021/01/26(Tue) 11:03[44]

(与えてみれば案外ちゃんとコーディネートをして見せた。色の合わせ方は無意識にきちんと覚えていたのかもしれない。これで合っていますか?と構われたがって聞いたことはあったかもしれない。最初に比べれば人間味は出てきたかもしれないが、やっぱり部分部分はどこかズレたまま。嬉しいことに嬉しいと笑うだけ。彼が笑えばことさらよく笑った。)分かりました。……あたたかいですね、ひさゆりさん。お気遣いありがとうございます。(ころんと横になって笑う。近くなった体温以上に空気とか、雰囲気とか、そういう曖昧な部分のぬくもりを語って、まどろみ笑む。気遣ってもらっているのだとわかるようになった。言葉にするようになった。記憶する中で一番近くにある彼の顔が綺麗で、今更ちょっと照れ臭くなって瞳を閉じた。)私はいつもと変わりません。ここは優しくて、穏やかで、閉じています。一緒に来た女の子たちもいます。……服を選ぶのは、すこしたのしいです。(瞳を閉じたまま、澄んだ声に耳をそばだてる。静かな声に薄ら目を開いて、また閉じた。唇の笑みが静かになる。)……考え事を、少し。(眠れない理由はめずらしく言葉を迷わせて、転げ落ちた。) ひさゆりさん……誰かのために死んでもいいという人は、どんな気持ちで死ぬんでしょう。

久百合要 ♦ 2021/01/27(Wed) 00:24[45]

弐那もあったかいわよ。(生きている。ふたりとも。当たり前のことだけれど、当たり前じゃない。下ろされた瞼の向こう側にあるはずの藍色を思い出しながら、間近にあるそのかんばせを見つめる。思っていたよりも気恥ずかしさは覚えず、それよりもそのあたたかさを感じられることがなんだか嬉しかった。昇級してから与えられた任務は殺伐としていて、どこかささくれ立っていたのかもしれない。故に欲したのは何のてらいもなく傍にいてくれる存在で。話を聞きに来た、もまた意味合いが違うかもしれない。会いたかった、に尽きるのだと彼女の顔を見て、声を聞いて、ようやく理解した。)……そう。じゃあまた、一緒にお買い物行きましょうね。今度はワンピース以外にも色々と見るの。(いつ、なんて約束できない癖に。やがて笑みの消えた口許から零れ落ちた言の葉に僅かに息を呑む。それからゆっくり伸ばした左手の指先で彼女の髪をそっと撫でた。)そうね……自分の分までその人に生きて、幸せになってほしい。自分より優先できるくらいにその人のことが好きで、大切なのね。(両親が死んだあの日、久百合要は守られた。思い出すたびにあるひとつの思いが強くなる。──両親を愛しているからこそ、その二の舞は踏まないと。)私は死んでもいいとは思わないの。だって死んでしまったらもう一緒に食事もできないし、お買い物にも行けないし、話もできない。大切な人がいるなら、その人のために何が何でも生きるべきだわ。

三須原弐那 ♦ 2021/01/27(Wed) 10:50[46]


(眼の裏にちらつく残光はどこか冷たさや鋭さに似る配色で。ぎゅうぎゅうに詰まるベッドの上、体温だけがあたたかいという感覚を持ってきた。)いきたいです。お洋服、また一緒に選んでくれますか。……ねぇ、ひさゆりさん。あいたかったです。(ああ、言葉にするとなんと単純なことか。それすらいま気が付いたと言わんばかりに、まろびでる言葉は拙く淡い、幼子のような響きを持って。愚問を呈する唇と合わせてみるとどこかちぐはぐだ。僅か強張ったからだ。まだ瞳を閉じて答えを待つ。)……やっぱり、大切は守らないと、いけませんよね。(浮かべた笑みは静か。ふへらと崩れるような、時折彼にだけ見せるそれとは違って、歳以上に大人びたもの。―けれども、彼の答えはそれだけではなかった。)……、(薄らと瞳を開く。彼の姿が滲んでどこか遠かった。そこで初めて、自分が泣いていることに気が付いた。)……ひさゆり、さん。(滲んだ彼はぼやけた赤を纏った誰かにしか見えない。不安になって名前を呼んだ。手を伸ばした。そこに生きていることを確かめたくて。)……ひさゆりさん、……生きることを考えると苦しいんです。わたしにはそれしかないのに。生きるべきだという貴方の言葉が優しくて、痛いのは何故ですか。死ぬわけにいかないのに、それだけなのに、なんで……、(涙と一緒に零れ落ちる、己の内の二律背反を理解するには少女はあまりに、つたない。)

久百合要 ♦ 2021/01/27(Wed) 23:49[47]

……私も、会いたかったわ。(ぽつん、と一粒の雫が水瓶に落ちていくように。誰かに届けるためものではなく本当にただ零れ落ちただけのそれだった。すぐ傍から鼓膜を揺らす響きに少しばかり引っ張られたらしい。)──……、弐那。(呼びかけに答えた。伸ばされた手を取り、繋いだ。指先を絡めて、深く。此処にいるから。そう伝えたくて。)──……弐那は、生きなきゃと思いながら、……きっと、死にたいときも……大切な人のところに行きたいときも、あるのね。(そこまで口にして、一度唇を引き結んだ。ここで言葉を間違えたら、彼女がもう戻ってこれなくなる気がしたからだ。でも何か言わなきゃいけない、なぜって彼女が求めているから。嘘はつきたくない、なぜって彼女はきっとそんな薄っぺらいものを求めてはいないはずだから。)……いいじゃない、死にたくなっても。無理やり抑え込めなくてもいい。それ以上に生きたいと思えればいいの。それに、『それしかない』わけないわ。だって私とお買い物行きたいんでしょう、私と会いたかったんでしょう。他にやりたいことはある?些細なことでもいいのよ、例えば今日の夜は何が食べたいとか。(一度口に出したら、そこからは迷わなかった。問いかけの答えは返ってきても返ってこなくてもどっちでもいい。ひとつのことに固執する脆さから抜け出すきっかけになってくれたならそれだけで。)

三須原弐那 ♦ 2021/01/28(Thu) 12:09[48]

(絡んだ温度に、息を点く。冷たい指先に彼の体温がじんわりと溶けて、心まで届いていくようだ。静かに泣くだけだった少女が、ぐしゃりとかんばせを歪めて咽ぶように息をした。)ん、…ごめん、……ごめんなさい……(しゃっくりあげながら彼の言葉にうなずいた。死ぬわけにはいかない。それだけで現世に留められている半生を、くしゃくしゃの心で今になって自覚した。ぎゅうと握ったてのひらの向こう、鼓膜を揺らす彼の声が涙の枷を外していく。その言葉のなんと暖かいことか。横になって頷きながら、一生懸命飲み込んでいく。えづきながら、心臓まで届けていく。)いきたい、です……ひさゆりさんといきたい、……生きたい、わたし、明日も生きていたい……!(子供のようにわんわんと泣き出した理由を、語る気持ちは起こらなかった。同じくらい彼に生きてほしいと思って行動を起こすことは、それこそ我儘だと知ってしまったからだ。わんわんとないて、泣いて、)ひさゆりさんといっしょにたべたい……(ぐずぐずの顔で結局そんなことを言う。何が、というのはいまだにピンとこなかったから、一番に思いついた欲求を告げよう。)お外に食べに行きたいです……広い空を見ながら歩いて行って……久百合さんのオススメを食べたい……(くすんくすんと鼻を鳴らしながら、少しずつうとうと意識をまどろませていく。手はがっちりと握ったままだ。)

久百合要〆 ♦ 2021/01/29(Fri) 01:33[49]

(少女が楽しそうに笑ったとき、あぁ良かったと思った。そして今。表情をぐしゃぐしゃに崩して、幼子のように涙を流す彼女の姿にもまた、あぁ良かったと思うのだ。彼女にはまだこの声が届くのだと。謝らないで、と努めて穏やかな声色でささやく。手を握っていない方の腕も伸ばしてとめどなく濡れていく頬を指先で拭った。すぐにまた涙が伝うから、何度でも。)──……、(痛哭な叫びをただひたすら、まっすぐ受け止めた。引き出した己がせめてできることだと思ったから、泣き続ける彼女の視界は悪いだろうから目は合わずとも、それでも目は逸らさないままずっと見つめていた。生きたいという声が、いたいくらいに奥まで入り込んでくる。)……ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。(溢れる涙を掬い取っていた手を開いてその頬を包む。最初に名前が挙がる存在であることが何だか無性に嬉しく思えた。)それなら今日の夜は外に食べに行きましょうか。ちょっと歩くけど、オススメのレストランがあるのよ。そこはメインも美味しいんだけど、何よりデザートのティラミスが最高なの。……あぁ、でも初めて行くならプリンかしら…どっちも頼んで半分こしましょうか、……ね、弐那。(段々と瞼が落ちていく彼女に殊更ゆっくりと語るは今日の夜のこと。まるで子守唄のように紡ぎながら、頬に触れていた手は彼女の肩へ移動しやさしく叩く。本当ならば今すぐにケアしないと泣き腫らした目は大変なことになってしまうのが目に見えてはいるものの、この状況ではどうしようもない。起きたらまずはホットタオルを作ってあげよう、それから一緒に着ていく服を選んで――そんなことを考えているうちに、久百合もまた眠りに落ちていく。明日も生きていたい。明日も、明後日も、その先も。私も、君も。)

三須原弐那〆 ♦ 2021/01/29(Fri) 13:06[50]

(とめどなく散る涙は花の吹雪に似て。それを受け止める彼のゆびさきが暖かくてまた、枯れるくらいに花弁を散らす。瞬きの隙に垣間見える赤がひどく美しく、少女にとってはそれこそがまるで花のように見えていた。ずっとずっと枯れない花を彼は持つ。そんな幻想を、無邪気に信じていたくなる。行かないで。そんな気持ちで手を握っているなんて、彼に言葉にして伝えることは今はないのだろう。でも、明日が、明後日が、その先があるなら。いつかいつかを願いながら、ひとまず今日共にと願った。彼が笑ったから、少女もまたぐちゃぐちゃの顔のまま笑った。ふへら、と崩れるような笑みであった。)……久百合さんと食べるご飯は、美味しいです。ご飯だけじゃなくて、何だって、嬉しい。(ああ、なんだかひどく安心して。手を握ったままゆっくりと微睡んでいく。彼の言葉が寝物語のように心にとろりと落ちてきて。時折涙の残滓をすすり上げながらゆったりと口を動かしていく。)れすとらん……ひさしぶりに、いきます……むかしは、とうさんと、かあさんと、…ねぇさんが、つれていってくれて……ぷりん、ふるーつとくりーむ、のってますかね、……さくらんぼは、ひさゆりさんに、…あげます、ね……(ようやくきちんと、はっきりと呼べるようになった彼の名前も、夢とうつつの境にほろりとゆるんで。寝言のように紡いだ言葉を目覚めた少女はきっと覚えていない。優しいテンポに促されて久方ぶりにしっかり眠ったら、きっとワンピースはしわくちゃだ。だから、また彼と一緒に選ぼう。今日出かけるための服を。明日生きていく為の食事を。いま腫れて大変なことになっている瞼をあったまったタオルがじんわりとほぐしていく。外したら、前髪の先がしけっていて、少しずつ伸びていることに気が付くのだ。切りそろえる気は起こらなかった。 だってあなたが、長いのもと言ったから。)

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