三須原弐那〆 ♦ 2021/01/29(Fri) 13:06[50]
(とめどなく散る涙は花の吹雪に似て。それを受け止める彼のゆびさきが暖かくてまた、枯れるくらいに花弁を散らす。瞬きの隙に垣間見える赤がひどく美しく、少女にとってはそれこそがまるで花のように見えていた。ずっとずっと枯れない花を彼は持つ。そんな幻想を、無邪気に信じていたくなる。行かないで。そんな気持ちで手を握っているなんて、彼に言葉にして伝えることは今はないのだろう。でも、明日が、明後日が、その先があるなら。いつかいつかを願いながら、ひとまず今日共にと願った。彼が笑ったから、少女もまたぐちゃぐちゃの顔のまま笑った。ふへら、と崩れるような笑みであった。)……久百合さんと食べるご飯は、美味しいです。ご飯だけじゃなくて、何だって、嬉しい。(ああ、なんだかひどく安心して。手を握ったままゆっくりと微睡んでいく。彼の言葉が寝物語のように心にとろりと落ちてきて。時折涙の残滓をすすり上げながらゆったりと口を動かしていく。)れすとらん……ひさしぶりに、いきます……むかしは、とうさんと、かあさんと、…ねぇさんが、つれていってくれて……ぷりん、ふるーつとくりーむ、のってますかね、……さくらんぼは、ひさゆりさんに、…あげます、ね……(ようやくきちんと、はっきりと呼べるようになった彼の名前も、夢とうつつの境にほろりとゆるんで。寝言のように紡いだ言葉を目覚めた少女はきっと覚えていない。優しいテンポに促されて久方ぶりにしっかり眠ったら、きっとワンピースはしわくちゃだ。だから、また彼と一緒に選ぼう。今日出かけるための服を。明日生きていく為の食事を。いま腫れて大変なことになっている瞼をあったまったタオルがじんわりとほぐしていく。外したら、前髪の先がしけっていて、少しずつ伸びていることに気が付くのだ。切りそろえる気は起こらなかった。 だってあなたが、長いのもと言ったから。)