それから数日、彼とろくに話す時間が取れないまま高専で過ごす私の前に、一人の男が現れた。
どうやら呪術界のお偉いさんらしいその人は、私に『生贄としてX[イクス]に戻り、敵方を油断させてほしい』のだと言う。
確かに、一度いなくなった生贄が戻れば、少なからずX[イクス]内に気の緩みが生じるだろう。
其処を一気に畳み掛けると言う手筈らしい。
引き受けてくれた暁には、必ずもう一度救出しここに戻ってこられること。
そして、必要であれば、ここを出た後も向こう数年は生活を保障してもらえること。
いくつもの好条件を提示した男は、最後に彼の名前を持ち出した。
* * *
囮作戦への協力を了承してしまってから、更に数日経って1月21日。
どうやら護衛任務も今日で正式に解かれるらしい。
もしかしたら最後かもしれない日。私は、彼は、何を思っているんだろう。